春の山     ウワミズザクラ  上溝桜  (バラ科)

ワラビのシーズンになると、うきうきとおやじ小屋へ向かう山道の脇で何本ものウワミズザクラが
円筒状の白い花穂を風に揺らせて出迎えてくれる。この時期にはヤマナラシの柳絮の綿も盛んに舞い
飛んで、押さえ切れない木々の躍動が目に見えるようである。

越後では花の咲く前の蕾や果実は「アンニンゴ(杏仁子)」と呼ばれ、蕾の花穂や、花が終わった直
後の実も軸ごと塩漬けにされて絶好の酒のつまみになる。また焼酎に漬けてアンニンゴ酒になったり
もする。

登山家で山のガイドもやっている次兄は、「この木の枝は真っ直ぐで強くステッキに最適だ」と言っ
ている。









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さらに一言「上溝桜」の由来は、昔亀甲占いのためにこの材の表面に溝を彫ったことからだという。これが訛って「ウワミズザクラ」である。
見慣れた桜とは程遠い形状だが、目を近付けて1つ1つの小花を見ればれっきとした「サクラ」である。
樹皮もいわゆる「サクラ肌」で幹に横長の皮目がある。しかしヤマザクラ類の太く長い皮目に比べ、本種は細く短い。
長岡では「ナタヅカ(鉈柄)」の方言がある。