鉛色の冬空が明けて、おやじ山の残雪が春の陽ざしに輝きはじめると、クロモジの冬芽が 雪解けを待たずにふくらみ始めて、まるで遅い春を焦れているようである。 材には芳香成分があって和菓子用の高級爪楊枝などに利用されるが、雪道をで登って来て 一息ついた時に、この枝を折って口に咥え鋭気を養うのである。
高級爪楊枝に利用するオオバクロモジの芳香はリナロールなどの精油成分を含むためで、東北地方ではこの木を「トリコシバ」と呼んで生でも燃える焚き付けとして利用していた。