次兄と一緒に角田山に登った。いい山だとは噂に聞いていたが、こんな素晴らしい山がすぐ近くにあったとは、と認識を新たにした。角田山は新潟市の南、巻町にあり、日本海の沿岸にそびえる独立峰である。こう書くと山形の鳥海山の秀麗なイメージを思い描くかもしれないが、標高わずか481mのいわば里山のようなファミリーな山である。
この山が今、関東や関西からの登山ツアー客で大賑わいなのである。目的は春の使者、雪割草(オオミスミソウ)やカタクリ、キクザキイチゲの群落を見ることである。この日も好天気に恵まれて、481mの頂上はまるでお花見の公園のような賑わいだった。
登山口はあちこちにあるが、灯台コースから上った。角田浜の海水浴場の波打ち際から登るので、まさに標高0mからのスタートである。
階段のついた海岸の岩場を登り始めてすぐ美しい鳥の鳴き声に迎えられる。岩のてっぺんでさえずっているブルーの羽根と茶色の胸毛のイソヒヨドリである。カシワの群落地を右手に見ながら尾根を登ると休憩に好都合な鞍部に着く。ここに大きなヤマナシの木があって、5月頃の花の時期にはさぞかし見事だろうと思われた。
「いい山ですねえ、地元の方ですか?」と夫婦で来ている登山客に声をかけられた。茨城からやってきたそうでご主人から「わたしはこういう者です」と「山岳遊歩人・中高年安全登山指導員」と書いてある名刺を渡された。ホームページのURLも書いてある。実に気さくな人である。
登るにつれてカタクリが多くなる。しかしまだ蕾が多く、あと1週間もたてばそれは素晴らしいお花畑になると思われた。
椿が咲いている。今の時期花をつけているからにはヤブツバキである。雪国越後の野生種では珍しいのではないだろうか?花弁もユキツバキより厚いが、正式には中間種のユキバタツバキという種類かもしれない。常緑の蔦、キズタも紫黒色の実をびっしりとつけていた。
頂上の芝生の上で昼食をとり、少し下るとすごいパノラマ展望台に出た。新潟平野が一望である。この日は生憎の春霞で靄っていたが、平野の向こうに飯豊山をはじめとする新潟と福島国境の名峰がずらりと望まれるのだという。次回の楽しみである。
帰りのルートは素晴らしいカタクリの群落を見ながらの下山である。右手の眼下に浜に並ぶ切妻屋根の家々を見ながら麓に着いた。
帰りは湯の腰温泉で一風呂浴びた。鄙びたいい温泉である。近くの食堂でラーメンを食べて今日の山行の打ち上げをした。
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