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2013年5月6日(月)午前晴れ〜午後から風強く寒し
おやじ山の春2013(息子へ繋ぐもの)
 まさに千客万来のゴールデンウィークだった。5月1日にUさんの同僚のT先生がおやじ山に来て下さり、5月3日には息子と孫の承太郎がカミさんと一緒におやじ山入りした。翌4日には娘が友人のSさんTさんと一緒にキャンプ場に到着し、引き続いて辻堂のSさん夫婦が愛犬のブラッキー、テリーの兄弟犬と共にテント場に着いた。
 4日の午前中には早速地元のSさん夫婦が差し入れの日本酒を提げてキャンプ場にやってきて、さらに心尽くしの手料理をどっさり置いていった。いつもいつも心に沁みて思うのだが、越後人の、とりわけ地元長岡の人達の青天井のご親切には涙が出るほど感謝感激している。
 
 本当に楽しかった時間も束の間、昨日(5日)の昼にはキャンプ場下の駐車場でSさん夫婦と二匹の愛犬に手を振って別れ、程なく娘ら3人が乗った車をも見送った。
 そして今日の11時50分、長岡駅の新幹線ホームで息子と孫の二人を見送った。列車に乗り込んでも直ぐ席には着かず、発車までデッキに立ち続けている二人に、「またいつでもおやじ山に来なさい。元気でやるんだよ」とニコニコと声を掛けたが、やっぱり寂しさが込み上げてきて仕方がなかった。

 昨日の子どもの日には、朝早く息子を起こして初めて山菜宝庫の「水穴」に連れて行った。おやじ小屋から北尾根に取り付き、三ノ峠山の頂上を越えて萱峠登山道を進み、途中の藪尾根を掻き分けながら入る難所である。日頃都会での仕事に追われ、山歩きなどしたこと無かった息子にとっては、苦しい山行だったに違いない。
 広大な斜面には質の良いコゴミが一面に生えて、息子は夢中になって山菜取りに興じていた。そして一段落してから水穴の斜面に二人で座り、並んで真正面に見える鋸山を望みながら俺のおやじとお袋の思い出話を息子に話して聞かせた。
 それは遠い遠い昔、俺がまだガキの頃、おやじとお袋にここまで連れて来られ山菜採りをした懐かしい思い出である。それは貧しかった我家の食料の足しにする山菜採りだったが、本当に楽しかった!そして限りなく嬉しかったのである。
 「タカオ〜!こっちに一杯生えてるよ〜! タカオ〜!大丈夫か〜! タカオ〜・・・タカオ〜・・・」 水穴の斜面にいまだに木霊する両親の声を聞きながら、当時の俺と同じに山菜採りに興じた息子に語りかけたのである。
 息子は鋸山をじっと見つめながら黙って話を聞いていたが、俺が話し終わってから、「ボクもおじいちゃん、おばあちゃんと一緒にここに来たかったなあ」とポツリと呟いた。息子が生まれるずっと前に既にお袋は死に、生前のおやじの元にも、現役時代の仕事の忙しさにかまけて息子を連れて行ってやれなかった。

 午後4時を少し回って、息子からの携帯電話が鳴った。「今、家に着いたよ。山菜採り、凄く楽しかった。お父さんありがとう・・・」
 嬉しかった。

2013年5月8日(水)曇り〜快晴
おやじ山の春2013(カミさんの付添い)
 今日はカミさんの付添いで黄土と水穴に出掛けた。孫や客人達の世話でしばらくはまともな山菜採りができなかったカミさんの、まあ鬱憤晴らしの付き合いである。

 先ずは二人で黄土に入る。例年の今頃ならゼンマイ、ウドと盛りの時期だが、山菜斜面は一面のカタクリで、まだ早春の気配である。カミさんは不満気な表情だったが、俺はいつもの丘の上まで登って長岡の町並みを眺めて楽しんでいた。


 それから三ノ峠を越えて水穴に向った。ウグイスの鳴き声が響き渡る谷の向うには残雪の南蛮山、その裾野に拡がる山肌の何と多様な緑色だろうか! 赤緑、黄緑、茶緑、それから淡緑、薄緑、蒼緑と自然が織り成す壮大なパッチワークである。その中にヤマザクラ(カスミザクラかオオヤマザクラか)のピンクとアカイタヤの朱色がアクセントをつけて素晴らしい景色だった。
 

 水穴に入ってカミさんはコゴミ採り、俺は斜面に腰を下ろして鋸山見物である。そして帰路、ブナ平へ下る尾根からは水を張った水田が越後平野に拡がり、春の陽射しにキラキラと輝いていた。
 
2013年5月9日(木)晴れ、夏日となる
おやじ山の春2013(水道敷設完了)
 今日は懸案だった下の谷川からおやじ小屋まで水を引く水道敷設の工事をした。昨年秋に山を下りる時に雪対策で水道ホースを一旦取り外し、この春に再び取り付ける段取りだった。それが谷川上流の取水口付近の雪崩れ雪がなかなか解けず、工事が延び延びになっていた。取水口から小屋脇に設置したガチャポンプまでのホース全長は約150メートル。3、4mほどの短いゴムホースを銅管で繋ぎながら谷川沿いに伸ばし、途中から山桜の斜面を這い登らせて小屋まで引く工事である。

 この作業が一筋縄では行かなかった。大量の雪解け水で深く抉られた谷川の上流部で水道管を渡したり、山桜の斜面を這わせたゴムホースの繋ぎ目から水圧に負けて水が噴出したりして、何回この斜面を上り下りしたことだろう。折りしも今日は真夏日となって全身汗ビッショリになった。
 そしてようやく受水槽代わりの漬物樽に冷たい谷川水が流れ込んだ時には、思わず「バンザ〜イ!」と叫んでしまった。

 昨年よりは雪解けが早かった割りに、今年は春の到来が遅かった。おやじ小屋に向かう山道ではオクチョウジザクラやタムシバの花がいつまでも咲き続け、ようやく今日の気温でカスミザクラが散って、向かいの山菜山のゼンマイが最盛期を迎えた。そしてウワミズザクラの枝先にアンニンゴの蕾が目立つようになった。ユキグニミツバツツジも咲き出して、春も快走の季節となった。

2013年5月11日(土)曇り〜雨
おやじ山の春2013(猿倉岳天空のブナ林山開き)
 今日は蓬平町の「猿倉緑の森の会」が主催する「猿倉岳天空のブナ林山開き」のトレッキングイベントがあった。そしてこの日に合わせて既におやじ山の常連である森林インストラクター神奈川会のTさん、Nさん、Kさんの3人が植物観察会のリーダーとして応援に駆けつけてくれた。

 朝7時にNさんの車がキャンプ場に着き、夜通しの運転の疲れも見せずに3人とも「おはようございま〜す!」とすこぶる元気な様子でテント場に上がって来た。そしててきぱきとテント設営と荷物運びを済ませて、早速皆で今日の集合場所の蓬平集落センターに向った。

 集落センター前の駐車場は既に今日の参加者で一杯である。その中で「緑の森の会」の中村代表が忙しく立ち回っていたが、駆けつけて挨拶するとニコニコと応じて下さった。参加者の中には市役所のM係長や三ノ峠の山小屋を建てた友遊会のT代表の日焼け顔も見え、さらに今日のトレッキングには蓬平町のM町内会長ご夫婦も加わっている。

 総勢40名ほどの参加者が麓の温泉旅館のマイクロバス2台に分乗して林道の途中まで登り、山頂への取り付き道の広場に全員集合して開会式である。中村代表が開会挨拶に続いて俺達4名の森林インストラクターを「強力な助っ人」と賛辞を込めて紹介して下さり、有り難かった。

 残雪を踏みしめながらののんびり登山で、その都度周りの人たちに雪解け直後の早春の花々や樹木を指差して説明したが、TさんもKさんも「参加者たちよりもインストラクターの私たちの方が興奮よね〜」と頻りにカメラのシャッターを切っていた。
 事実、カタクリのピンク色の絨毯、純白の残雪と目の醒めるようなブナの新緑のコントラスト、萌え出たばかりのアカイタヤの新葉、そして天空のブナ林の展望台から望んだ越後三山や守門、浅草岳の雪山の雄姿、更には米山や刈羽黒姫山も美しい山容を見せて、まさに感動の連続だった。



 再びマイクロバスで集落センターに戻ると、会館の大広間にはズラリ素晴らしい昼食が用意されていた。山盛りの山菜天ぷら、絶品の手打ち蕎麦とトン汁、そしてごま塩をまぶしたおにぎりの美味さといったら・・・!もう二度と口にできないと思えるほどの最高の味だった。
 
 頂戴した「温泉券」を手に、老舗旅館の福引屋の温泉に入った。露天風呂に身体を沈めていると、今まで持ち堪えていた曇り空が雨に変わった。この時間まで我慢してくれた天気に感謝して、4人雨のキャンプ場に戻った。そして夜は、ここでも雨の音を聴きながらの山菜パーティが続いた。