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2013年10月1日(火)曇り〜晴れ
おやじ山の秋2013(金木犀とキノコシーズン)
 ラジオで、新潟と福島両県から「金木犀が咲きました」の花便りがリスナーから届けられた。「金木犀の香りでキノコシーズンが始まるこって」とは、地元きのこ同好会のSさん達の合言葉である。俺も俄然鼻息が荒くはなったが、如何せん肝心の雨が無い。一雨欲しいこの頃である。

 今日はカミさんと一緒におやじ小屋に出勤し、カミさんはおやじ小屋の清掃、俺はこの春宇佐美のSさんと共に造った下の池に続く遊歩道の草刈りをした。以前伐倒して玉伐りしたまま打ち捨ててあった杉の丸太にスギヒラタケ(地元名は<カタヒラ>)が顔を出していて、早速伊豆のKさんに「きのこ便り」第一報を送った。スギヒラタケは何年か前に中毒が報じられてからすっかり毒きのこ扱いになったが、それまでは長岡の「五十(ごとお)市」でもアマンダレ(ナラタケ)と一緒に売られていた定番の食茸だった。今でもKさん夫婦も俺も喜んで採って食べているが、身体に変調の兆しは全くない。きのこ汁にするといい出汁が出て実に美味いきのこである。
(俺たちは食べ慣れていて免疫ができているせいかも知れないので、真似られるのもどうかと・・・。悪しからず責任は持てません)
2013年10月2日(水)曇り
おやじ山の秋2013(おやじ山のミョウガ)
 午前中、おやじ山の若杉の森の草刈り、そして小屋周りに落ちた杉の枯れ枝を拾い集めて焚きつけ用の柴作りや焚き火で燃やして庭の片付けをした。
 さらにおやじ山にはミョウガ畑が何ヶ所かあって、幸い時期をずらせてミョウガの子が発生する。その一番遅いミョウガ畑で今年最後の収穫をした。おやじ山のミョウガはパンパンに身が張って、その大きさといい、品質、味、香りともに自慢の山の幸である。

 午後、テントに市役所のSさんが訪ねて来られた。それで6日開催の「猿倉天空のブナ林トレッキング&自然観察会」用に作った「天空のブナ林ミニ植物図鑑(秋編)」のオリジナル版を渡して当日参加者に配るためのコピーをお願いした。
2013年10月4日(金)曇り
おやじ山の秋2013(タラの丘の夕焼け)
 久々に降った一昨晩からの雨で谷川の水道が止まったので、今日は受水槽の泥出しをして通水させた。それ以外は特段の山仕事もせずに、のんびりとおやじ山で過ごした。全く静かな山の一日だった。

 夕方近くなってキャンプ場に戻る途中の山道で、背の高い口髯を生やした紳士に出会った。初めて見る人である。手に持ったビニール袋にヌメリスギタケが入っていたのでキノコ採取だと分かって、「今年のヌメリスギタケは出が早いですね(確か通年の発生は10月下旬頃ではなかっただろうか?)」と声をかけてみた。ところがなかなかのキノコ博士で、自然観察林内のキノコの発生場所や発生時期を良く知っていてビックリしてしまった。さらに、今年の富士山麓(富士吉田と言っていた)のキノコには高い量のセシウムが含まれていること。現地で見たヤマイグチやヤマドリタケが異常に大きくて、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故後にも巨大キノコが発生したこと。そして、「この辺のキノコも子ども達には食べさせない方がいいですね」と止めを刺されてしまった。またいつかお会いして素性を訊ねてみたい御仁である。

 そして今日のキャンプ場から見た夕焼けの美しさったらなかった!ずっと昔に観た、「風と共に去りぬ」の映画のシーンのようだった。ヴィヴィアン・リー演じるスカーレット・オハラとジュラルド(トーマス・ミッチェル)の父娘がタラの丘に立って見つめていた、あの荘厳とも言える夕焼け空である。日が沈むまで飽かず見つめていたが、感動して思わず涙ぐむほどの夕焼けだった。
(右の写真をクリックすると拡大写真<スライドショー>に変わります)

2013年10月6日(日)晴れ(夏日となる)
おやじ山の秋2013(天空のブナ林・秋のトレッキング)
 今日は昨日キャンプ入りした森林インストラクター神奈川会の仲間達と一緒に、既に恒例となった猿倉緑の森の会主催「天空のブナ林・秋のトレッキング」イベントに自然観察会のリーダーとして参加した。神奈川から駆けつけてくれたのは、熱海の森リーダーのSさん、出身地が長岡のTさん、そしておやじ山の山仕事で何度も足を運んでくれているNさんの3人である。さらに地元の森林インストラクターUさんにも今日の観察会のリーダーをお願いしてあった。
 
 朝7時に4人でキャンプ場を出発して、受付会場の蓬平集落センターに向った。そして会場で待ち構えていたUさんと合流。主催者の中村代表や太田地区連合町内会長の森山さん、そして長岡市役所のTさんなどと挨拶を交わして開会式会場へ移動した。
 続々と集まってきたトレッキング参加者は46名。中村代表から開会の挨拶に続いて我々森林インストラクター5名の紹介をいただいた。我々出番の自然観察会のフィールドは、猿倉岳山頂の天空のブナ林とその周辺の山道である。それで開会式で紹介いただいたついでに、昨日神奈川会の皆さんと下見した際にサンプル採取した木の実を手でかざしながら「今年は山の木の実が大変豊作です。トレッキングコースにもこんな木の実が見つけられますよ」と、ミツバアケビ、サルナシ、ミヤマガマズミ、サンカクヅル、ツノハシバミの簡単な説明をさせてもらった。

 開会式の会場を出発して約2時間の山歩きで山頂広場に着いた。ここで参加者を5班に分けて各リーダーのもと自然観察会のスタートである。
 そしておよそ1時間、観察会から山頂広場に戻ると、地元蓬平町の皆さんが精魂込めて作って下さった数々の手料理のオンパレードだった。豚汁とカレーライスの他にスイーツ各種、鮎の炭火焼き、それにアイスクリームも各種レパートリーを揃えての豪華なランチタイムだった。

 昼食後のプログラムは、先ず太田小中学校生徒による「森の演奏会」だった。場所は天空のブナ林内の「森林浴の森」である。
 女生徒の吹くリコーダー演奏と、Uさんの「アンコール!」の掛け声に押されて5人の生徒達が最後に歌った「ふるさと」の歌声が、天空のブナ林と参加者の心の中に、清く涼やかに響き渡ったのである。

 そして今日の最後は、Sさんによる「ブナ林の効用と森林生態系」に関する紙芝居の上演である。豊かなブナの森の大地に腰を下ろして、参加者の誰もがSさんの素晴らしい話しに頷き、森の大切さを改めて深く認識したフィナーレだった。
2013年10月7日(月)晴れ
おやじ山の秋2013(婆さんセット?と越後風アケビチャンプル)
 Tさん達のお蔭で天空のブナ林でのイベントも無事済んで、今日はゆったりとした気持ちで神奈川の客人達とおやじ山に入った。
 午前中は、皆で手分けしておやじ小屋周りに散らばっている杉枝や枯れっ葉を豪快な焚き火で片付け、一段落した後には小屋前のデッキで「森の俳句会」を開いた。おやじ小屋でこんなインテリジェンスのある催しは初めてで、「天水」の俳号を持つSさんの発案である。
 <Sさんの句>
 百年の森に棲みなす樵あり  天水

 百年の杉秋空に突きささる   天水

 <Tさんの句>
 ブンブンと蜂もよろこぶおやじ小屋  ますみ

 Nさんはまさに呻吟の末、本人の納得(成っと句?)に至らず、俺の句は「字余り」「季重ね」と駄作の連発で、とても発表できる代物ではなかった。カミさんも1句物した筈だが、さて、どんな句だったか?(今更訊けないし・・・)

 そしておやじ山からキャンプに戻ると、天水氏が「さあ皆で、『ばあさんせっと』で一杯やりましょうよ」と折畳み椅子を持って高台に降りて行った。すぐテント下にあるこの高台は、俺が朝晩ここに出て、コップ片手に眼下に拡がる田圃の風景や西山に沈む夕日を眺める自慢の場所である。Sさん達もすっかりこの高台が気に入って、キャンプ場入りしてからは朝な夕なここで寛いでいた。
「エッ!婆さんセットで・・・」と二人のお孫さんがいるTさんが不満げに反応すると、「違う、違う。『婆さんセット』じゃなくて『バー・サンセット』。日が沈む酒場、いい命名でしょう」と大笑いになった。

 さらに、今回Sさんが名付けた野外料理がある。『越後風アケビチャンプル』。この秋大量に実ったミツバアケビの皮で作ったゴウヤチャンプル風の逸品である。昨晩はNさんが、Tさん持参の高座豚の味噌漬けを小さく切り和えて作り、今夜は料理人交代でSさんが好みの豆板醤を入れて腕を振るった。

 料理も弾け、笑い声も弾けた全く愉快な夕餉だった。
(「おやじ山風料理レシピ」に詳しく作り方をアップしました。ご覧下さい)
2013年10月8日(火)晴れ
おやじ山の秋2013(森造りの夢)
 今日もSさん達と一緒におやじ小屋に出勤し、午前中はSさん、Tさんで下の池の湿地帯の草刈りをしてもらった。この場所は2、3年前からようやく手を入れた所で、カツラとトチノキの幼木を何本か植えておいた。ところがその後の施業をサボっていて、今やタイリンヤマハッカ(カメバヒキオコシの日本海要素)などの夏草に覆われてヘビでも出そうな藪になっていた。

 一方Nさんと俺は山のあちこちに転がっている丸太をチェーンソーで玉伐りして冬に備えての薪作りをする積もりだった。ところが肝腎のチェーンソーが始動しない。愛機ハスクバーナも1号機のマキタも揃って機嫌が悪くなってしまった。午前中一杯、Nさんとチェーンソー修理に時間を費やしてしまった。

 午後は、Nさんが直してくれたチェーンソーを使って遊歩道の小川の橋架けをした。玉伐った丸太を「ヨイショ!ヨイショ!」と4人で遊歩道に運び込んでの重労働である。お蔭様で随分立派な丸太橋が2つ完成した。

 実はおやじ山の森造りで、小屋から下の西斜面は長い年月手付かずのままだった。若杉の森やコナラの森、ヤマユリ広場などの施業で手一杯だったからである。それがようやく一段落して(まだまだ不充分極まりないけど)、3年程前から下の湿地帯に池を掘ったり、百年杉の枝打ちを行って森に光を入れたり、今年の春はSさんと一緒に小川に沿って遊歩道造りをしたりした。少しでも手を入れてみると森は正直なもので、見る見る変化の兆しが出てくる。暗い森の中のせせらぎが、明るい陽射しを浴びて美しく輝き、今まで目にしなかった草花が顔を出してくる。その手ごたえで新たな森造りの構想がどんどん膨らむのである。

 今日のSさんとTさんの草刈りで藪の湿地帯が一気に更地に変わった。更に来春には刈り取った潅木の根扱ぎをして整備し、再来年には今育てているミズバショウの苗を植えよう。そして数年後には、この湿地帯が一面のミズバショウの園になるはずである。そしてここに通じる小川の遊歩道沿いには、ニリンソウやキクザキイチゲの群落を作り、小川の淀みにはカキツバタやノハナショウブを植えても良い。そして斜面に生えてるエゾアジサイやユキツバキも無闇に伐らずに残しておこう。小川にサワガニが棲み、夏には蛍が乱舞するそんな森に仕立て上げたい。全く際限もなく夢が広がるのである。

 心地よい疲労を抱えてキャンプ場に戻ると、地元のSさんがどっさり差し入れを持って訪ねて来ていた。朝日山久保田千寿の一升瓶!大きな愛情おむすび10個!地元で有名な肉屋さん特製のメンチカツとコロッケ!そして奥さん手作りのカブ漬け!と、思わず涙が零れてしまった。

 そして今夜は明日神奈川に帰るTさん達の最後の夜である。皆で「バー・サンセット」に出て喉を潤し、それからキッチンテントに入って夜遅くまで歓談が続いた。
 
2013年10月9日(水)晴れ、夕方より風強し
おやじ山の秋2013(朋あり遠方に去り、また遠方より来る、 また楽しからずや)
 今日はTさん達が神奈川に帰る日である。それでTさん達の秋恒例の木の実採りに、八方台の「いこいの森」に皆で出掛けることにした。

 全く今年は、ここ10数年来初めての木の実の大豊作である。立派に実った真っ赤なガマズミを手で毟り取ると、それだけで手から零れ落ちる程の収穫だった。「今年はもうこれでいいわ!」とTさんは大きなレジ袋一杯の成果で道を歩きながらも、またたわわに実ったガマズミに出会うと、「もうこれでお仕舞いね」の繰り返しである。Nさんにとっては今回が初めてのいこいの森だったが、「こりゃ凄いわ〜」とガマズミと山の芋のムカゴ採りに精を出していた。


 そして正午過ぎ、関越道の越路インター近くで3人の乗った車に手を振って別れた。あっと言う間のTさん達の5日間の滞在だった。

 そんな淋しさも束の間、今度は伊豆からKさん夫婦が長岡入りした。そして今夜は長岡の街でカミさんと一緒の夕食会の御呼ばれである。生憎、また本土接近の台風の影響で夕方から強い風が吹き出した。テントの強敵は大雨より風である。留守中にテントを吹き飛ばされてはと、(数年前、重い荷物を入れていたドームテントがすっかり飛ばされた経験があった)張り綱を点検したりと、ようやくKさん達の待つ席に駆けつけた。
 今日一日の様を「論語」風に記すれば、さしずめ次ぎのようになるのではなかろうか。

   朋あり遠方に去り、また遠方より来る、 また楽しからずや
 
2013年10月10日(木)晴れ
おやじ山の秋2013(Kさん夫婦の来山)
 昨晩からの雨が朝には上がって晴れ間が出た。例年なら雨降りを恨めしく思うのだが、今年は10月に入っても真夏日が続いて、テントを打つ久しぶりの雨音に嬉しくなってしまった。そして今日は伊豆のKさん夫婦がおやじ山にきのこ採りに来る日である。お二人ともふるさとは越後で、地元のきのこには目がないのである。

 例年なら体育の日の今頃が(俺が田舎から東京に出た昭和39年の10月10日東京オリンピック開会式の記念すべき祝日が、毎年日付が変わるとは・・・全く、嘆かわしい!)キノコシーズン真っ盛りなのだが、今年はどうした訳かひどい不作年である。何度かKさんからのメールで「きのこ、出た?」と問い合わせが入っても、「ダメ。毒キノコ1本見当たりません・・・」とうな垂れて返事をするしかなかった。それが普通の人なら毒で見向きもしないカタヒラ(スギヒラタケの地方名)の一報で、満を持したかのように飛んで来たという訳である。

 朝、8時過ぎにはニコニコとKさん夫婦がキャンプ場に着き、早速おやじ小屋までの山道沿いのきのこ探しである。さすが目が肥えてる二人だけあって、俺も気付かなかったハツタケやキンロク(ニンギョウタケ)、そしておやじ山ではアマンダレ(ナラタケ)とカタヒラを採って、こんな悪条件のもとでそこそこの収穫となった。

 キャンプ場に引き上げ、カミさんが予め用意したきのこ汁パーティーとなったが、来年こそは本命のアミタケやウラベニホテイシメジがどっさり採れる山に、また戻ってもらいたいものである。
 13時、Kさん夫婦とキャンプ場の駐車場で別れ、急ぎテント場の高台に登って、栖吉の県道を伊豆へとひた走る車に向って両手を振り続けた。
2013年10月11日(金)曇り〜雨
おやじ山の秋2013(猿倉岳)
 午前2時過ぎだったろうか?用足しでテントを出ると、満天の星空だった。そのままテントに戻るのがもったいなくて、南東の空に瞬くオリオンの三ツ星や冬の大三角形のシリウスやプロキオンなどに目を留めていると、頭の上で流れ星が走った。「あれッ!」と今度は首を折ってあんぐり上空を眺めていると、また流れ星である。お願いの儀は山ほどあるので「今度こそ流れ星に願い事を!」と夜空に目を凝らして構えているうちに、すっかり首筋を痛めてしまった。

 手で首を揉みながらテントに入って横になると、「リュリュリュリュリュリュリュリュリュ」と頭で数えられない速さで虫が鳴いている。エンマコオロギなら「コロコロ」と鳴くので、これはエゾエンマコオロギかも知れない。何回続けて鳴くのか何度も鳴き声をカウントしているうちに、目が冴えてしまった。
 それで今度は枕元のラジオを点けると、フランスの国民的歌手、エディット・ピアフが歌う「愛の賛歌」が流れて来た。彼女の生涯の大恋愛の相手マルセル・セルダンに捧げられたピアフの代表曲である。情熱的な曲ながら彼女の低く哀切を帯びた歌声が、深夜の流れ星と虫の鳴き声とですっかり抵抗力を失った胸の中に沁みてくること沁みてくること・・・。

 ウトウトしているうちにテントが風で大きく揺れ出した。午前5時である。そのうち「ドン!」と何かがテントにぶつかって慌てて外に出ると、強風で折れたコナラの枝でテントの入口が破れていた。しかし大事に至らずに良かった。午前8時、風止む。

 そして今日は、カミさんと猿倉岳に行った。去る6日の「トレッキング&自然観察会」で目印に樹木に結んだピンクテープを取り外すためである。頂上付近の林道は今朝方の強風で枯れ枝や葉っぱが散乱していたが、鈴生りのアケビやビックリする大きさのサルナシ、そして靄に煙る幻想的なブナの美林、さらには日本の原風景とも言える眼下に望む種苧原(たなすはら)の村落など、素晴らしい猿倉岳の自然を堪能した一日だった。
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2013年10月12日(土)猛烈な雨
おやじ山の秋2013(「山の本」)
 今日はまるで今までの仕返しのような猛烈な雨が一日中降り続いた。それで地元の森林インストラクターMさん、Uさんと今日予定していた来週実施の「三ノ峠山自然観察会」の下見は中止し、二人を我がキッチンテントに招いてお茶を飲んでもらった。あれこれと四方山話しに耽ったが、子どもの頃、ワンズ(蝉の幼虫)の穴に棒を差し込みヤカンの水を注ぎ込んで釣り上げて遊んだことなど、童心に帰っての懐かしい思い出話しに花が咲いた。

 午後からは気温も下がって、ドームテントに引き上げて寝袋に潜り込んだ。そして先日神奈川から来たTさんに頂いた「山の本」のページを捲った。この本は白山書房が出している季刊誌で、山好きの会員達の同人誌のようでもあり、読者からの投稿文も多いので隠れた名山(地方の低い山が多い)の紹介誌のようでもある。メーカーの広告などは無くて値段はちょっと高めだが(本体1333円+税)、味わい深いいい本である。

 夜一段と冷えて、ようやく秋の気配となる。
2013年10月13日(日)午前雨、午後から晴れ
おやじ山の秋2013(秋の到来)
 午前中は氷雨の降る中、傘を差しておやじ小屋に出勤した。小屋のドア脇に吊るした寒暖計を見ると、午前11時の気温が11℃だった。

 昼キャンプ場に戻ると、長岡きのこ同好会のSさん夫婦と奥さんの妹さんが差し入れのご馳走を持ってテントに遊びに来ていた。今日はすぐ下の市営スキー場のロッジで長岡市主催の「きのこ鑑定会」が実施されていた。皆で見学に行ったが、こんな不作年でも持ち寄れば随分集まるものである。

 そして昼からは冷たい雨も上がって、キリリと爽やかな秋晴れになった。長く続いた夏の気候が今日の正午でクルリと入れ替わって、ようやく本格的な秋の到来である。夕方には真っ赤に燃えた夕日が西の空を染めて、見事な秋本番の夕暮れとなった。
2013年10月14日(月)晴れ
おやじ山の秋2013(白玉の歯にしみとほる秋の夜の・・・)
 キリリ締まった爽やかな朝である。午前6時の気温、11℃。まさに秋冷の候となった。

 昨日宅配便でアケビを送ったTさんからメールが届いて、「早速、越後風アケビチャンプル、アケビの皮の天ぷら、ピクルスの3種の料理を作りました」と報告が来た。そして「天ぷらはアケビのほろ苦さが無くなり物足りなく、ピクルスはイマイチ。やっぱり越後風アケビチャンプルが一番」との評価である。さらに「今度は<アケビの肉詰め蒸し>に挑戦します」とあった。どんな料理になるのか、報告が楽しみである。
 
 今日は爽やかな秋空のもとをゆっくり歩いておやじ小屋に向った。そして道々、「今晩も冷えるだろうから七輪をキッチンテントの中に入れて、俺も今日はアツアツのアケビチャンプルを作って、酒はやっぱり熱燗で・・・」などと、およそ仙人とは程遠い妄想を抱きながらの出勤だった。

 そして夕方山から下りて、待望の(?)夕飯時になった。日頃は面倒くさくて一升瓶片手の晩酌だが、秋冷の今夜は出勤時の妄想を実現すべく、テントに入れた七輪にヤカンをかけて熱燗で呑んだ。そしたら、実に美味いのである。「やっぱり秋の夜は熱燗に限るなあ〜」とついついピッチが上がって、すっかり酔っ払ってしまった。
 ふらふらとテントの外に出ると、満天の星である。その余りの美しさに感動を抑えきれず、思わず夜空に向って「ウワァァァ〜〜ッ!」と吠えてしまった。「月に吠える」ではなくて、「星に吠えた」のである。
 それにしても若山牧水がしみじみと詠んだ、

  白玉の歯にしみとほる秋の夜の 酒は静かに飲むべかりけり

とは程遠い騒ぎようで、自分自身でも呆れてしまった。熱燗がいけないのである。
2013年10月15日(火)曇り、台風26号接近
おやじ山の秋2013(「知床旅情」とクマ)
 明日は恒例となった昔の長岡高校時代の同級生達が東京や神奈川から長岡入りしてミニ同窓会。そして明後日は皆んなできのこ狩りの予定である。ところが今年のキノコは大不作で、地元のベテランきのこ師連中でさえガックリ肩を落として山から下りてくる有り様だった。
 それで、いくらかでも遠方から遥々やってきた友人達にお土産を持たせてやろうと、カミさんと一緒に猿倉岳に出掛けた。目当ては先日見つけたサルナシとアケビの実である。

 先日の猿倉岳からまだ4日しか経っていなかったが、やはり実物は足が早くて、道路際のアケビなどは殆どがパックリと口を開けて既に旬を過ぎた感じだった。それで止むなく藪をかき分けて奥に入ってアケビを探していると、谷の方から「フ〜ッ!」と荒い鼻息が聞こえてきた。獣が威嚇しているサインである。思わずカミさんと顔を見合わせて、「・・・クマ?・・・かも知れないね」と言うが早いか、カミさんは一目散に道路まで飛び出して行った。我が家は「死なばもろとも」とは程遠いのである。さらに道路上で獣の糞の塊を見つけてギョッとしたが、これはタヌキの溜糞と判断して胸をなで下ろした。

 それからは道々大声を出しながら歩いたが、さすがに意味不明の言語を連続して怒鳴り続けてたら草臥れてしまった。それで昔カラオケで十八番だった森繁久彌の「知床旅情」を歌った。

 ♪知床〜の岬に〜 ハマナス〜の咲くころ〜
   想〜い出〜しておくれ〜俺たち〜のことを〜♪

 と、いくらか気分良くして歌っていたら、カミさんが言ったものである。「そんな歌唄ったら、クマが懐かしがって出て来るんじゃないの?」「バカ!ヒグマだったらいざしらず、こっちにいるのはツキノワグマでしょ!」

 何やらぐったり草臥れて猿倉岳を下り、午後は悠久山にある老人福祉センターの風呂に入ったあと、久々に街に出て散髪した。
 午後5時、予報通り雨になる。
 
2013年10月16日(水)雨、中越地方に大雨洪水警報
おやじ山の秋2013(台風通過とミニ同窓会)
 台風26号の影響で昨晩から猛烈な雨になった。午前5時ころから風も激しくなって、テントを這い出て張り綱のペグを打ち直す。それから万が一に備えてテントの中の衣類を車に積み込んだ。いつでも避難できる体制である。

 新潟県中越地方に大雨洪水警報も発令されて、午前中いっぱいは車の中で過ごした。正午になると途端に雨風も弱まって気温が急に冷えてきた。台風が北に遠ざかった証拠である。
 それで午後はキャンプ場の炊事場に立って、明日同級生達を迎えてのきのこ汁パーティーの下準備をした。

 そして午後6時半、市内のO君の家に同級生10人が集まった。毎年、春の山菜時期と秋のきのこシーズンに、こうして地元を離れた同級生達と長岡在住の同じ仲間が集ってミニ同窓会(きのこ狩り前夜祭)を開く習わしになっていた。そして台風一過の夜、気がおけない仲間達といつも通り大いに盛り上がったのである。

 午後10時半、カミさんに連れられてテントに戻った。というが、キャンプ場の階段を猫みたいに誰かに襟首を掴まれながら引っ張り上げられた記憶だけは朧にあるのだが・・・。
 
2013年10月17日(木)午前小雨〜午後晴れ
おやじ山の秋2013(同級生たちのきのこ狩り)
 例年なら午前8時には鼻息荒くキャンプ場に乗り込んでくる5人の同級生たちも、今年はゆっくりとしたお出ましである。昨晩のミニ同窓会で大方のエネルギーを消耗してしまったか、「キノコ出てない」の一言で戦闘意欲が失せてしまったか、又はその両方か、である。

 それでもI君を除いた4人はそれなりのきのこ狩りスタイルに身を包んで、小雨しょぼ降る中を見晴らし広場からおやじ小屋までの山道を歩きながら、キョロキョロと道脇の藪に目を凝らしているのである。幸い(と言っていいか、「不幸にも」と言った方が適切か)採り残しの小さなキンロク(ニンギョウタケ)の株が2つほど見つかって(FさんとI君が見つけた)、その成果の貧しさに涙ぐむ思いだった。

 おやじ小屋に着いてからはストーブの火を囲みながらの楽しいひと時だった。狭い小屋の中で遥か昔の(もう半世紀にもなる!)高校時代の美男と美女(あ!今もだけど)6人が、こうして今、肩触れ合いながらの談笑の時を過ごすなどとは想像だにしなかったことである。

 11時過ぎに山から下りてキャンプ場に戻り、今日も地元の同級生A君、O君、W君が駆けつけてくれて、恒例のきのこ汁パーティーが始まった。昨日水にさらしておいた塩蔵キノコをたっぷり入れて、地元の里芋や丸ナス、それに油揚げと豚肉で旨みとコクを出す自慢のおやじ山料理である。その他カミさんが作ってくれたゼンマイと車麩、タケノコの煮付けや長岡菊「おもいのほか」ののおひたしなどの郷土料理、ワラビと糸瓜の漬物、むかご飯と、皆んな大喜びで食べてくれた。

 午後1時半、すっかり晴れ上がった空のもと、友人たちが東京組と長岡組の車にそれぞれ分乗してキャンプ場下の駐車場を離れて行った。

 夕方、長岡きのこ同好会のSさんが、炊きたての大きなおにぎりとフキ味噌や漬物などの差し入れ品を持ってテントを訪ねて来てくれた。友達が去って哀情ひとしおの時に、こうして身に余るご親切を受けて心が温かく満たされるのである。「俺はシアワセ者だ〜ッ!」