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最後の日記は<1月23日>です。

2010年1月10日(日)晴れ
賽の神(せいのかみ)

 明けましておめでとうございます。「仙人のつぶやき」どうか本年もよろしくお願いいたします。

 一昨日(8日)は、そろそろ人出も少なくなっただろうと恒例の寒川神社に初詣をした。神社の境内でおみくじを引いたら、何と大吉だった♪! 脇でカミさんが、「あんまり良過ぎる運勢を当てるとかえって危ないそうですよ・・・」と水を差すような事を呟く。そうか、気をつけよう。(どうも最近は何をやってもこうで、素直に喜べない。どっちがひねくれてしまったんだろう。)

 そして昨1月9日(土)は地元藤沢のボランティア団体「丸山谷戸援農クラブ」の例会に出席した。
 長期の幽霊会員なのでこんな時ぐらいはと(実は「うない初め」と「せいと」(どんど焼き、越後では賽の神)の神事をやるのでお神酒が出る、と案内のメールに書いてあったので)いそいそと出掛けた。

 午前9時、「援農クラブ」の活動フィールドである丸山谷戸の復元田圃に
メンバーが集合し、先ずは「うない初め」の儀式である。田圃の真ん中に鍬を入れて小山を作り、ごぼう巻きを供えて一同二礼二拍手一礼をして地の神様に豊作と無事をお願いした。

 雪国の人たちには申し訳ないようなぽかぽか陽気の小春日の中で梅林の剪定作業をやってから、いよいよ「せいと」である。「丸山小屋」の脇で焚き火を作り、メンバーが持ち寄った注連縄や松飾をくべて、その熾きで白、赤、青の団子を竹枝に差して焼きながら酒を飲んだ。(いや、健康を祈った)

 「せいと」とは一般的には「左義長」、「どんど焼き」と言われる行事で、郷里の長岡では「賽の神」(さいのかみ、だが越後弁で訛って「せいのかみ」)と呼んで小正月の1月15日の恒例行事だった。
 白く雪の積もった田圃の中に大きな孟宗竹を円錐形に組み立て、その周りに藁の束をくくり付けて盛大に燃やす火祭りである。もちろんその中には正月のお飾りや習字の書き初めなども入れて同時に燃やし、無病息災や頭が良くなるようにと祈りを込めた行事である。
 昔の田舎の村々では毎年必ず行われていた「賽の神」だが、広い雪原に赤々と燃え盛る壮大な炎と、組んだ孟宗竹が「ボ〜ン!!・・・ボ〜ン!!」と爆ぜる大きな音が冬の空に響き渡って、大いに興奮した遠い昔の懐かしい思い出である。

 そして明後日、1月12日からは、私も新春の仕事初めである。三重県の山に10日間入っての森林調査アルバイトで、「どんな森に出会えるだろうか?」と今から楽しみである。

2010年1月23日(土)
三重の山旅

 一昨日、10日間の三重の山々を巡る旅から帰って来た。

 
森林調査の補助員として櫛田川流域の奈良県境近くの山や、遠く熊野灘を望み南伊勢の湾や入江を見下ろす海沿いの山など合計20箇所の植林地を踏破した。厳しいオフロードの山道や林道、肝を冷やした峠越えの狭いくねくね県道などを駆け抜けたスノータイヤ付き4WD車、ニッサンX−TRAILの走行距離は10日間で1,100kmとなった。


 仕事は昨年春に植生調査でご一緒させていただいた顔見知りの若いKさんとペアで、1月12日に約束の松阪駅前で落ち合ってからのスタートだった。

 調査前半は日本列島に寒波襲来で暖かいイメージの三重県で雪に降られるとは正直思わなかった。調査3日目に標高1,000mほどの地点まで案内して下さった地元森林組合の若い職員が、真っ白い雪景色を見ながら「こんな間の悪い時のお仕事で、本当にご苦労様です・・・」といかにも済まなそうな顔つきで引き返して行ったりした。
   

 しかし後半の南伊勢での調査はまるで春の陽気で、山腹から見下ろす入江には眩しい陽ざしがキラキラと輝いて、その青く広がる海面に三重県特産のアオサノリの養殖網が整然と美しく並んでいた。
 仕事も順調に捗ったある日、午前の作業を終えて昼食用のおにぎりをコンビニで買い、五ヶ所湾の中津浜浦という所に行った。その綺麗な小石の浜にKさんと二人で座って昼食を摂ったが、まさに「春の海ひねもすのたりのたりかな」の蕪村の句が口を突いて出て来るようだった。ゴロンと横になってうつらうつらして人の声で起き上がると、いつの間にか小さな夫婦船がすぐ目の前で漁をしていた。まったくのどかな春の海の風景だった。
   

 Kさんの様々な配慮のお蔭で、この10日間で実に貴重な体験ができた。もちろん調査の仕事を通して北国では見る事ができない備長炭の原木「ウバメガシ」の森に出会ったり、ウラジロやコシダの群生地に入って藪漕ぎに難渋してこれらのシダの強靭な性質を思い知ったりもした。
 ラスト20番目の調査地は2000年の歴史をもつ伊勢神宮の森だった。一般の人は入ることができない森に神宮司庁の職員に案内されて調査したが、調査対象のヒノキ林はしっかりと施業が行き届いて林床には常緑樹の低木が育っていた。
 「あと何年経ったらこれらの木を伐り出すのですか?」と立ち会っていた職員に尋ねてみた。「樹齢200年まで育てて伐り出します。あと140年後になりますか」との答である。その遠い未来に思いを馳せるようにして呟き語った職員の横顔を思わずまじまじと見つめてしまった。
   

       

 せっかくここまで来たからと伊勢神宮の外宮、内宮をKさんに案内していただいた。何よりもビックリしたのは内宮の参道に生えている杉の巨木の数々である。目通りの直径は2m程か?まさに堂々と天を突く風格で聳え立つ大杉に圧倒されてしまった。(おやじ山の杉もこんな巨木に育つのだろうか!)
 移動の途中で立ち寄った尾鷲神社の大楠(樹齢千年の夫婦楠、幹周り10mと9m)にも圧倒されたが、これらの巨木に出会えたのも嬉しい体験だった。
   

 Kさんは酒は飲まないがグルメである。移動途中で気になるお店があると車を停めて入ってみたくなるらしい。それにインターネットで予め調べたりして、「食」についてはなかなかのこだわりがある。それで今回の旅ではKさんのお蔭で安くて美味しく珍しい食べ物をいろいろ口にすることができた。

その1、国道166号線沿いの伊勢茶のお店「茶工房かはだ」で食べたぜんざい(絶品のあんと香り高い番茶の組み合わせが絶妙だった)
その2、奥香肌峡から大台町に抜ける途中で立ち寄った「奥伊勢フォレストピア」で飲んだコーヒー(コーヒーの香りもさることながら、コーヒーカップが何とお洒落なことか)
その3、伊勢河崎商人町の「つたや」で食べた伊勢うどん(ニシンうどんを食べたが、ふわふわの伊勢うどんに濃い味に煮付けたニシンが絡んで何とも懐かしい味だった)
その4、伊勢神宮の参道にある「赤福」本店で食べた正真正銘のあかふく(当然だけど五十鈴川を望むお店に入って緋毛氈の上に座って食べると、味もまた格別だった)
   

 とにかく怪我もなく無事に帰還できた。そしてKさんのお蔭で仕事+αの楽しい思い出ができた事に感謝したい。