2006年8月1日(火)曇、晴れ |
おやじ山の夏(ヒグラシの鳴き声) |
大好きな8月になった。今日は長岡の街が戦災にあった日、そして今日から3日間、長岡祭りが行われる。
朝4時20分、テントの真上で鳴くヒグラシの「・・!ィクィクィクィク・・・・・・」の声で目が覚めた。「カナカナカナカナ・・・」とは聞こえないなあ、と思いながら又寝入ってしまった。
5時20分になって起きる。もうヒグラシの鳴き声は聞こえず、代わりにアブラゼミの「ジ〜ッ」というけだるい鳴き声だけが響いていた。ヒグラシは日暮れだけに鳴く蝉だと思っている人もいるが、その人は早起きをしない人である。明け方、日の出前の短い時間帯に、私の観察ではおおよそ20分間けたたましく鳴く。その声は夕方の染み入るような鳴き方とは違って、何か喧(かまびす)しく切羽詰ったような鳴き方である。
そして夕方のヒグラシの声は実に良かった。弥彦の見えるテント脇の高台に椅子を出して一人で缶ビールを飲んで長岡祭りを祝っていると、すぐ傍の木でヒグラシが高く「カナカナカナ・・・」と鳴き、この声が止むと今度は奥の方の木から小さく「・・・カナカナカナ・・・」とそよぐような声が響き渡って来る。この声が止んで直ぐに、今度は右の木から「カナカナカナ・・・」、これが止んで左の木が「カナカナカナ・・・」と、まるでカナカナのオーケストラである。遠くの奥の森からは鈴を振ったようなヒグラシの鳴き声が響いて来てオーケストラのベース音のようでもあった。
西の空が茜色になり、そして墨染め色に変わるとピタリとヒグラシのオーケストラは演奏を終えた。
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2006年8月2日(水)晴れ |
おやじ山の夏(北アルプスヘ) |
4時20分、いつものようにヒグラシの鳴き声で目を覚ます。 いよいよ次兄と北アルプス朝日岳〜雪倉岳〜白馬岳縦走登山の日である。梅雨明けが遅れて予定より8日も遅れてしまった。起きて炊事場に顔を洗いに行き、戻って東の空に明るさが増した頃、ヒグラシの鳴き声が止んだ。時計を見ると4時40分、わずか20分のヒグラシの朝の狂騒である。
15時過ぎに新潟から来た次兄を実家で迎えて、次兄の車に乗って19時に蓮華温泉の駐車場に到着。煌々とした半月が雪倉岳の上に出る。北の空に大熊座とカシオペアと北極星。天空に天の川の物凄い流れが二列、覆い被さるように走っていた。車の中で寝る。
<<北アルプス登山記>>を後日「森のパンセ」に掲載します。
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2006年8月3日(木)晴れ |
おやじ山の夏(朝日岳へ) |
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2006年8月4日(金)晴れ |
おやじ山の夏(雪倉岳から白馬へ) |
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2006年8月5日(土)晴れ |
おやじ山の夏(白馬大池から蓮華温泉) |
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2006年8月6日(日)晴れ |
おやじ山の夏(寂しい花火) |
広島原爆投下の日である。実家のテレビで午前8時から始まった平和記念式典の中継を観る。8時15分、「黙祷!」という音声で一瞬どちらに向かって頭を垂れたらいいのか戸惑ったが、仕方なくテレビ画面に向かって目を閉じた。「今、被爆者の平均年齢は73.9歳になった。この余命少なくなった実際の被爆体験者達が、これからどう原爆の悲惨さと平和の尊さを語り継いでいくか、模索が続いている」とアナウンサーの声。「ああ、ここでもか・・・」と思う。「模索が続いている」ということは、今まで被爆の語り部達が長く語り継いできたことが今だしっかりと受け止められ蓄積されていない、ということなのであろう。日本の政治やビジネス、そして日々の生活の中にまで構造改革だ変革(イノベーション)だ発想の転換だと、まるで昔の体験や知恵や技術が悪玉のように葬り去られていく傾向がある。そのことで現代の日本が実に浮薄で中身のない国になったように思えてならない。
こどもたちは未来の技術を学ぶと同時に、過去の知恵や忘れ去られようとしているものや無くなりつつあるもの、そして美しかった自然のことやトンボや蝶を捕まえてその名前や生態の神秘さなどを知り、そして「なぜだろう?」と考えるフィールドと時間を持つべきなのだ。今未来の地球に残すべきものは更なる進歩だとは、とても私には思えないのだが・・・
午後、再びおやじ山のテントに戻る。遅めの夕食を済ませ高台に折り畳み椅子を出して涼んでいると、遠く新潟方面の一つの町から赤い花火が上がっていた。町の神社の例祭なのだろうか?赤一色だけの慎ましやかな打ち上げ花火だったが、遠く音の届かない花火は何と寂しいものかと思った。
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2006年8月7日(月)晴れ |
おやじ山の夏(越後駒ヶ岳に登る) |
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2006年8月8日(火) |
おやじ山の夏(越後駒ヶ岳 雪渓逍遥) |
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2006年8月11日(金)晴れ |
おやじ山の夏(小屋修理第1日目、ドラム缶風呂) |
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2006年8月12日(土)晴れ |
おやじ山の夏(小屋修理2日目、小屋の吊り上げ) |
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2006年8月13日(日)晴れ |
おやじ小屋の夏(小屋修理3日目、第一期工事終了) |
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2006年8月15日(火)晴れ |
おやじ山の夏(コスモス広場の朝) |
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2006年8月17日(木)晴れ、気温38.4度 |
おやじ山の夏(流れ星とシューマン) |
夜中に目を覚ましトイレに外に出る。満天の星である。東山の峰のすぐ上に三日月の濃い翳を残した右弦の月が明るく光っていた。星空を見ながら用を足していると、珍しく流れ星がサッと流れて慌てて出した物をしまった。「いい夜だなあ〜」とこのままテントに潜り込むのが惜しくて、いつもの高台に椅子を出して座った。長岡の街の灯が澄んだ闇の中にキラキラと瞬いている。流れ星がまた一つ流れた。
テントに戻る。今日一日はおやじ山で過ごし、いよいよ明日にはテントを畳んで帰る予定である。夜が名残惜しく、ラジオをつけ酒の残りを飲み始めた。ラジオ深夜便のロマンチックコンサートでシューマンのピアノ曲が咽ぶような音色を奏でている。シューマンの曲が終わり、午前3時の時報でまた横になった。
5時起床、コスモス広場でジョギング。午前、おやじ小屋広場の草刈りと小屋の中の整備。午後、杉の枯れ葉や材の切れ端の焚き火。
この日の気温、38.4度。長岡での最高気温を観測する。夕方小雨がパラつく。そして遠雷・・・
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2006年8月18日(金)曇 |
おやじ山の夏(ツクツクボウシ鳴く) |
明け方のヒグラシが鳴き止んで、今度は「ジィ〜」とアブラゼミの声。5時に起きる。今日は撤収する日なので寝袋を畳んでいると、「ホーィッツクツク!ホーィッツクツク!・・・」とツクツクボウシが一匹鳴き始めた。この夏初めて聞くツクツクボウシの声である。この声を聞くと、もう秋である。「ああ、おやじ山の夏は終わったなあ」としみじみ思う。
朝食後にデポ品を持っておやじ小屋に行った。昨日の焚き火が燃えきれずにまだ煙っていた。バケツに水を汲んで丹念にかけ、しばらく修理途中の小屋を眺めてから山道を下った。
<9月の日記>に続く
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