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最後の更新は12月31日

2006年12月26日(火)雨
人里の記(師走その1)

 長い会社生活を終えて1年間が過ぎた。クリスマスが過ぎて間もなく大晦日を迎えようとしている。「早いなあ」という実感である。
 昨日年賀状書き(殆どパソコンでの印刷だが)も終えて、例年より薄い束を持ってポストに投函してきた。現役を退き浪人の身になったので賀状は昨年の3分の2程に枚数を減らした。会社時代の多くの人達には不義理をすることになるが、現役の多忙な方々といつまでも切れずに礼を重ね続けるのはかえって迷惑だろうと思ったからである。
 今月はおやじ山からの記録ではなく、「人里の記」である。
 12月3日(日)、池袋の立教大学で試験を受けた。今回も同じ場所での3回目の試験だったが、ステップアップの資格試験のようなもので、1年半前に初級、そして今年の夏に次の段階と合格したので、欲が出て最上位のクラスに挑戦してみた。午前中6問、午後2問のいづれも論文形式の問題だったが、午後の2問は各1,000字を記述する出題だった。そのうちの1問は暗記したはずのデータが思い出せずエイヤッで書いた数字がひどい勘違いだった。長年の深酒で数字を溜め込む脳の部分(脳全体かも知れない)がグチャグチャに破壊されているのかも知れない。終わってふらふらと疲労した頭で大学のキャンパスによろめき出ると、真っ黄色に色づいたオオイチョウの葉が、冬の午後の弱い陽の光を浴びて群青の空に静かにそよいでいた。結果な来年2月の発表である。
 そして今月は所属のボランティア団体のNPO法人化のための手伝いに何日かを費やした。NPO準備委員として神奈川県庁の担当課との打合せや、会員に承認を得るための臨時総会(12月16日)で進行役を任されたりした。
 24日(日)は今年最後の「森林インストラクター神奈川の集い」の自然観察会に参加した。場所は寺家ふるさと村である。大ベテランのYさん、Nさんの素晴らしい解説を聞きながら小春日和の里山を楽しく歩いた。木々の冬芽をルーペで覗き、Nさんに指摘されて冬鳥を双眼鏡で追った。モズ、カワセミ、メジロ、アオゲラ、カケス、ジョウビダキ、それにヒヨドリ、ムクドリ、ツグミなど・・・
 それからまた今月は、ひょんな事でカマキリに興味を持って調べ始めた。郷里長岡の人が書いた「カマキリは大雪を知っていた」という長いタイトルの本も買って読んでいる。庭に面した網戸に、つい先日までカマキリが住み着いていたせいもあったが(無残にも私が見ている前でヒヨドリがパッと飛んできて咥えて飛び去ってしまった)、今月中旬、郷里から拙宅に来られた方と談笑していた時に、「今年は暖冬だとの予報だけど、カマキリの卵が高いのでひょっとしてまた大雪かも・・・」と言われたので、「ああ、懐かしいなあ。ガキの頃にはよくこんな事言ってたなあ」と思い出したのである。それを気象予報士のMさんに話したらこの書物を紹介してくれたのである。(後日、「森のパンセ」にアップします)
 先月は試験が終わるまではと友達との飲み会を控えていたが、終わってからは気のおけない仲間との忘年会を何度かやった。昔の同級生との楽しい集まりや引退した仲間との飲み会、カミさんがよく買出しに行く近くの農家ご夫婦との忘年会など、実に楽しい酒盛りをした。
 今日は低気圧の接近で終日荒れ模様の天気である。

2006年12月27日(水)晴れ
人里の記(師走その2)

 12月3日の試験が終わってから、ある計画のためのお話を聞くために何人かの人を訪ねた。博物館に行って研究者の方にお会いしたり、市役所に出かけて行政の専門員のお話を伺ったりした。その他、長年この分野に携わってきた教育者の方にもお会いし、貴重なお話やたくさんの資料などをお借りしたり、実際の施設に足を運んで、ここでお仕事をしている専門員の方からいくつかのヒントを貰うこともできた。お会いした全ての方が多忙の中とても親切で、お話された1つ1つが私にとっては新鮮で有難い財産になった。
 昨夜、久々に会社時代の夢を見た。夢の中で私よりうんと若い社員のSが何と監督で出てきて、私が今の老齢(?)で助監督になってサポートする立場なのだ。私は宣伝部などに所属したことはないのだが、Sと二人で女性のモデルを使って会社のPR用の映像を撮っている夢だった。夢に出てきたこのSが凄いのである。カメラで衣の微妙な色の調整をやったり、長靴(きれいなステージなのに何で長靴が出てきたのかがイマイチ不明なのだが・・・おやじ山ではあるまいし)の配置を絶妙に変えたり、それから若いモデルに向かって優しい言葉を掛けて気遣ったりと、全くこちらが嫉妬にもだえるほどのカッコ良さなのだ。しかし夢の中で、私はSのこの感性の鋭さに心服した。予想外のSの人間の幅の広さにすっかり打たれてしまっていた。そして夢の中で、私は今の自分の年齢をしっかり把握していたようだった。
 夢から覚めて、私は嬉しかった。夢の中であってもこうして素直に他人を見られる気持ちになれたことが、今年のささやかな成果であってほしいと思った。

2006年12月31日(日)晴れ
人里の記(師走その3)

 2006年最後の日、大晦日になった。つい先ほど(午前10時ごろ)3年間書き続けてきた高橋書店の「3年当用新日記」の最後のページを書き終えた。大げさに言えば、この3年間苦楽をともにしてきた日記である。嫌なことや楽しいことに出会うたびに、昨年の今日はどうだったかとすぐ上の段の日記を読み返し、2年前は?とさらにその上段の日記を読んだりした。やっぱり「3年間ありがとう!」と日記に向かって言いたくなる。明日からはまたパリパリの同じ3年日記の処女ページを汚していくことになる。
 29日はこの冬一番の寒気が日本列島に入り込んで、今まで変に生ぬるく緩んだような季節をキリッと締めてくれた。この日、日課にしている大庭城址の散歩でようやく初霜柱を踏んだ。28日の夜から29日にかけて新潟県の山沿いで50〜60pの大雪が降ると警報が出ていた。長岡はどうかと先ほど電話を入れてみると、わずか10cmの積雪だと、いささか拍子抜けした答えだった。しかしおやじ山は今頃どうなっているだろう?昔から雪国では「一里一尺」という言葉がある。即ち4キロ離れると30cm雪が深くなるという言い伝えである。おやじ小屋は既に真っ白く雪を被っているのだろうか?
 先日、郷里に住む「カマキリ博士」の酒井與喜夫氏にお手紙を出した。「カマキリは大雪を知っていた」のご著書を大変興味深く、また親しく読ませていただいた旨を若干の感想を添えて書簡にしたためた。見ず知らずの人間からの礼儀知らずの突然の手紙に、さぞご本人はビックリされたことだろう。
 昨日は近所の農家の方からいただいたロウバイの花を厚手の備前焼きの花瓶に活けて玄関に飾った。今日は、これからスーパーに出向いて神棚に祭る鏡餅と榊を買って正月を迎える準備である。