一気に冷えた。昨夜からの激しい雨が今朝も降り続いている。ラジオは新潟県中越地方の今日の最高気温は7度、そして大雨、強風、洪水、落雷、山沿いでは1〜5pの降雪と報じている。東京地方でも木枯らし一号が吹くらしい。
寝袋に包まったまま横になり、じっと激しく叩きつける雨音とテントを揺らす風の唸りを聞いていた。そして枕元に置いてある読みかけの文庫本のページをまた開く。自宅から持ってきた石川達三の「青春の蹉跌」である。出かける前に読んだ朝日新聞の土曜版で、40年前に新聞記者として佐賀に赴任した執筆者が、「青春の蹉跌」のモデルこそが当時佐賀県天山で起きた女子大生殺人事件だった、と懐かしく振り返った記事だった。この小説には私も深い思い出があった。昭和43年4月から9月まで毎日新聞に連載されたこの小説を、私は関西のある地方都市の下宿で毎日欠かさず読んでいた。当時巷にはピンキーとキラーズの「恋の季節」が大ヒットしていたが、わたしにはシュトルム・ウント・ドランクの実に苦しい時代だった。そしてその何年後かに東京の書店で見つけて買った文庫本を、いまだに捨てずにとっておいた。発行は昭和46年5月25日とある。定価は120円である。
バタバタとうるさい暗いテントの中で活字を読み続けるのも辛いので(それから腹も減ったので)、また和楽美の湯に行くことにした。テントを出て車を走らせていると雨がみぞれに変わった。今年の初雪である。そして変に腰の調子が急に悪くなって運転が辛くなった。実家にUターンして緊急避難である。実家では昨日から家族旅行に出掛けていたが、幸いボンちゃんが留守番をしていた。実家のコタツに横になって久々に新聞に目を通し、テレビを見た。『気象庁は地球温暖化の気温上昇で全国の紅葉が50年前と比べて約16日遅くなっていると発表』、『NHKスペシャル・日中戦争(再放送)』「昭和12年7月7日の盧溝橋事件を発端とした日華事変からに日中戦争までの日本の犠牲者は310万人、中国人犠牲者は1,000万人を超えると言われている」とナレーションが締めくくった。
台所に行って勝手に飯を食べ缶ビールを数本貰って夕方テントに戻った。
|