山菜 -春のめぐみ-
フキノトウ
雪の消えるのを待ちかねたように黒々と水分を含んだ大地から黄緑色の頭を出すので、誰にでもすぐ見つけられてしまう。
これを見逃す手はない。せっかく冬を越して出てきたのに可哀想だなどと思わず、できるだけ苞の開いていない固いものを手で捻り取る。
食べ方
 熱湯で3分茹で(色を重視するなら落し蓋をする)、冷水に3時間晒す。この間2、3回水を取り替えた方が良い。よく水気を絞って生味噌と一緒に叩く。酒かみりんを少し混ぜる。 酒の肴に最適である。
 山でゆっくり遊んでから帰るようなら、現地で塩をすり込んでビニール袋に漬け込み、家に帰ってから真っ黒になったアク汁を水洗いする。これを味噌汁に入れて食べる。その他、定番の天ぷらなど。
 口の中いっぱいに<春>が拡がるはずだ。
 なお今は亡き文豪、開高健は山菜の味覚について次のように書いている。
『物にはおびただしい味、その輝きと翳があるが、もし”気品”ということになれば、それは”ホロ苦さ”ではないだろうか。 山菜のホロにがさには”気品”としかいいようのない一種の清浄がある。この味は心を澄ませてくれるがかたくなにはしない。ひきしめてくれるがたかぶらせはしない。ひとくちごとに血の濁りが消ていきそうに思えてくる。』
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