ブナ  ぶな  (ブナ科)


この素晴らしいブナの木は「三ノ峠山」の頂上付近に生えている。私の次兄は畏敬を込めて、
この木を「千本ぶな」と命名した。
一本の木が根元から株立ちになって、この一株だけでこんもりとした林のようである。
長岡の市街から三ノ峠山に目を凝らすと、この「千本ぶな」が見える。
春先、山菜を採りながら尾根まで上り、この木を仰いで「また来ましたよ!」と挨拶するのである。


さらに一言
木偏に無しと書いてブナと読む。これは材が柔らかく腐りやすいので、建築材などには役に立たないとされてきたからである。
しかし環境問題がクローズアップされてきた昨今、さまざまな効用を発揮するブナの森こそ未来に残しておきたい財産だと思う。
ブナの実は5年から7年周期で大豊作になる。2011年はこの千本ブナをはじめ萱峠のブナ林にも大量の花が咲いた。2005年が大豊作のブナ実年だったが、6年ぶりの実生り年である。
この大豊作は動物が食べきれないほど種子を生産し、残った種子で自分の子孫を継承、拡大していくというブナの生存戦略のためである。
ブナの太い幹には苔や地衣類が着きやすい。幹の表面が適度に湿っており、かつ滑らかなのでピタッと着くのである。
コケや地衣とは藻とカビの共生体であり、藻はカビによって脱水や病原微生物の攻撃から守ってもらい、カビは藻から栄養をもらっている。
藻もカビも単独ではとても弱い存在なのに、共生体のコケ・地衣となると、とにかく強い生物となる。
イギリスの生物学者ライアル・ワトソンは「コケこそあらゆる生物の中で先生みたいな生物で、南極の氷の上でも炎熱の岩の上でも生きられるとにかく一番強い生物である」と述べている。