2020年2月2日(日)晴れ |
蕪村の句 |
月天心 貧しき町を 通りけり(蕪村)
この句は知らなかったが(もともと俺に俳句の知識などない)、ある雑誌に連載している伊集院静氏の文章で知った。氏はこの蕪村の俳句を紹介したあと、次のように書いていた。
『(前略) 人間は希望、愛のように感じられるものを持たないと生きて行けない生きものである。希望、愛にはさまざまなかたちがあるが、月の光が人間に何かを与えることもあるはずである。この句の発句の意図はわからないが、彷徨を続け、晩年ようやく創作の人となれた蕪村の句には人々に平等にいつくしみを与える自然の素晴らしさを感じてしまう。』(※下線は筆者)
伊集院氏は、蕪村の句から、「自然は、富める者、貧しい者を分け隔てることなく誰にもいつくしみを与える。その自然が持つ平等性の素晴らしさ」を感得してこのように書いたのだと思う。
正直言って、俺は自然に対して今までこういう認識を持ったことは無かった。ただ自然に対峙して、5感で感じ取った自然の美しさや心地良さ、楽しさを利己的に享受し、それをまた他の人たちにも伝えてきたに過ぎない。しかし一歩引いて、何とも説明し難かった自然の持つ優しさや包容力を、「自然の平等性」と言い表したら、成るほど合点がいくような気がする。
今、世の中に様々な対立と格差が広がっている。そんな中で、おやじ山の自然と風の小屋の存在意義を、改めて心に刻み込んだ次第である。
(出典:SIGNATURE 2018年11月号) |
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