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2016年4月5日(火)雨上がりの晴れ
おやじ山の春2016(眩しい春日)
 雨上がりの素晴らしい一日だった。
 フクロウが頻りに啼いて、4時前に起きたが、寒かった。朝6時の気温は2℃、日中の気温も9℃までしか上がらなかった。しかし今日は雨上がりの春の日差しが眩しく輝いて、デジカメを手に小屋を飛び出して「春」をせっせと撮り溜めた。以下は、今日半日のその成果である。
 午後は、中の池掘りをして、3時に仕事を終えた。


早朝の森に雪洞のように咲くタムシバ   オオカメノキ(今年の初咲き)       春の妖精ギフチョウ

  キタコブシの開花(今年の初咲きである)           自然観察林のミズバショウ

      満開のオクチョウジザクラ             作業道脇のオオヤマザクラ

紅色濃いオクチョウジザクラ(珍しい)    春日浴びるタムシバ       ユキツバキ(今年の花色は濃い)
2016年4月4日(月)雨
おやじ山の春2016(靄の中のタムシバ、幽玄の世界)
 午前3時、雨音で目が覚めた。久々(日記を辿って調べたら15日ぶり)の雨である。寝袋に包まったまま枕元のラジオを点けたが、耳は、小屋の外のおやじ山の尾根や斜面を静かに打っている雨足の音をじっと聴き入っていた。 このところの晴天続きで乾いた山が、またしっとりと水分を含んで、季節がどんどん進んで行くようである。
 「ホウホウ・・・」「ホホウ・・・」と、おそらく番(つがい)となった二羽のフクロウが、未明の雨の中で木霊のように啼き交わしている。その秘めやかな響きもまた、春の移ろいに更にドライブをかけているように感じられる。
 
 昨日の枯れ枝を刺した傷の手当てのため、午前中に町に下りて、薬屋で消毒液と大型の絆創膏を買って車のバックミラーを覗きながら処置した。素人手当で、顔の3分の1が絆創膏になって、山に来た人がギョッとして逃げ出すような凄味のあるいい顔付きになった。

 小雨が降り続いていた途中の山路では、白い靄が掛ったほの暗い森の中に、タムシバの白い花が浮き立つように咲いて、山路のコーナーを曲がるたびにハッとさせられた。幽玄の世界とは、まさにこのような景色を言うのではないかと思った。

2016年4月3日(日)曇り
おやじ山の春2016(ケガしてムキになる性格)
 朝起きてすぐ、今日の食材採取に谷川に下り、山菜山に入ろうとひょいと渓を飛んだ拍子に、こめかみに激痛が走った。折れた枯れ枝の先が顔に刺さったようだ。ポタポタと血が流れ落ちる程の傷を作ってしまったが、ショックだったのは、目の前の枯れ枝が目に留まらなかったことだ。以前なら咄嗟に避けられた危険がこんなことではと、「俺も齢をとったか」と一瞬うなだれてしまった。
 ところが気が付いたら、顔面血だらけのままコゴミとフキノトウをムキになって採っていたのだから、自分で驚いてしまった。「虚仮(こけ)の一心」というか「老いの一徹」というか、変に心が歪んできたのかも知れない。

 今日も日中の気温が20℃近くまで上がった。今日から中の池の上にもう一つの池を掘り始めた。そしてカタクリ広場は今日一日で既に5分咲き程になり、17日の「カタクリ観賞会」では殆ど花が終わってしまうタイミングだろうと思う。もう日々の天候にヤキモキしても仕方が無いと腹を括った。
 しかしカタクリ広場に今日もギフチョウが頻りに舞い、お花畑では昨年地植えした雪割草が綺麗に咲いた。そして、おやじ山入口の道端にはイワウチワも花開いて、何とも早い自然の移ろいである。
 
2016年4月2日(土)晴れ
おやじ山の春2016(カタクリの憂鬱)
 昨日に引き続いて、春が一気に押し寄せたような一日だった。日中の気温は昨日よりも上がって18度になった。

 朝おやじ池を覗くと、クロサンショウウオが池面に浮いて4度目の産卵である。クロサンショウウオは水の冷たい産卵好機を逃してしまってはと、さぞヤキモキしていることだろう。

 午前中は、一段目の杉林とその西側にあるコシノカンアオイの小道の雑木を伐り払って整備し、午後は中の池の上の斜面に刈り払い機を入れた。好天で山仕事は大いに捗るのだが、こうも早く春が進むと甚だ憂鬱なことがある。

 今日も昼の休憩時にカタクリ広場を見回ってみると、既に最初に雪が融けた一画では、カタクリが満開になってギフチョウもひらひら舞っていた。これが実に困るのである。というのは、今年も「おやじ山カタクリ観賞会」(今年で第3回目になる)を4月17日の日曜日に予定しており、遥々神奈川県から森林インストラクター仲間14人がおやじ山に来ることになっていた。過去2年はドンピシャリのカタクリ満開日(昨年は4月19日、一昨年は4月20日)に開催できたが、この分だと、今年はとうに盛りが過ぎた頃の開催となってしまう。それで、俺も池のクロサンショウウオ同様、今年の春の進み具合に日々ヤキモキと暮らしているのである。

2016年4月1日(金)晴れ
おやじ山の春2016(プロローグ -山笑う季節始まる- )
 3月が終わり、4月に入った途端、おやじ山に春が来た。まるで季節が正確に暦を読んだような、突然の春の到来である。日中の気温は15℃まで上がった。

 4時半に起きて小屋向かいの山菜山を見ると、つい昨日までモノトーンでくすんでいた山肌に、今朝は萌黄色の膜が紗のようにかかっている。冬の眠りから覚めた大地の、躍動の証である。
 早速谷川を越えて斜面に取り付きフキノトウを採り、今年の初物のコゴミも摘んだ。

 午前中に嬉しい山の幸をSさんや伊豆のKさんに届けるために山を下りた。途中の山路では、この道中で一番の吹き溜まり箇所の雪も随分儚くなって、周りが渋色に冬枯れた森の中に、ポツンと咲き出したユキツバキの緋色や、今が盛りのオクチョウジザクラのピンク、冬芽が弾けたタムシバの白、開葉したばかりのオオカメノキの緑と彩りが添えられ、他のスミレに先駆けて咲くアオイスミレも愛らしく花開いていた。さらに道端ではアカタテハが翅を休め、ギフチョウも足元に纏わり付くように飛んでいた。
 まさに今日の日が、山笑う季節の始まりである。

おやじ山の春2016

以下の「4月28日日記」は、一次帰宅した4月29日にアップしたものです。

2016年4月28日(木)雨
おやじ山の春2016(一時帰宅前日)
 午前4時起床。いつものように寝袋に入ったまま半身を起こして壁に寄り掛かり、日記をつける。
 今日で今回のおやじ小屋暮らしが48日目になった。暖冬小雪の今年の冬だったが、おやじ山に入った3月中旬には、まだ雪が50㎝ほどあって、夜は気温が零下10℃まで下がった日もあった。それでも俺が一番好きなおやじ山の季節は、この冬から春へと季節が移り変わる早春の時期で、小屋向かいの山菜山の斜面が一面真っ白に雪で覆われた姿からはだら雪となり、日に日にモザイク模様の大地が冬の名残雪を制して拡がり、更に黒々とした大地がある日ハッと目覚めたかのようにほんのりと薄緑色に染まり、そして一雨、一陽ごとに萌黄が濃くなり、今や目に染みるほどの鮮やかな新緑に彩られている。

 しかし今年の早春は例年になく足早に通り過ぎてしまった。おやじ山を一面ピンク色に染めるカタクリの群落は、いつもの年より2週間も早く、4月6日には満開を迎えた。そしておやじ小屋の前斜面に立つカスミザクラの大木も、4月17日には豪華に花開いて遠来からの客人をもてなしてくれたものの、毎年大型連休に、この桜の花見を楽しみにしている麓の人達をガッカリさせるかも知れない。

 長岡人が「山野菜」と親しんでいる山菜は、雪融け直後のフキノトウから、4月初旬には早コゴミの盛期となり、4月中旬のゼンマイ、そして今はウドとウルイが盛期を迎えている。そして例年なら大型連休後に採り頃となるワラビが早くも顔を出して、おっとり構えていた山菜狂を慌てさせている。

 午前5時、久々の雨音が小屋の屋根を打ち始めた。珍しく5日間も続いた好天の後の静かな春雨である。この雨に木々の葉が洗われ一層新緑を鮮やかにさせて、まさにおやじ山は「山笑う季節」そのままの山姿になるであろう。

 この雨が止んだら、一旦山を下りるつもりである。春の山仕事は何とか一段落した。この春の足早の季節に追われながらも、一日一日精一杯働き、躰を動かした。それで、自分は満足だと思っている。
(おわり)