<<前のページ|次のページ>>
最後のページは<4月29日>  

2014年4月2日(水)晴れ、初夏の気温
おやじ山の春2014(蓬平早春詩)
 昨日、今日とまるで初夏の気温になった。折しも4月に入った昨日から、小屋向かいの山菜山の斜面でウグイスが鳴き始め、下の谷からはオオルリの美声が響き渡ってきていた。月が替わって鳥の鳴き声が途端に賑やかになった。

 今日は午後2時から蓬平集落センターで「猿倉緑の森の会」の打ち合わせがあって、参加させてもらった。来月10日実施の「猿倉岳山開き&スノートレッキング」のスケジュール会議である。

 少し早目におやじ山を下り、蓬平に向けて車を走らせると、白山トンネルを越えた途端に雪の量が一気に増えて驚いてしまった。しかし蓬平の集落に入ると、沿道の養鯉池や雪に覆われた棚田の向こうに斑模様の残雪の山肌が眩しく青空に映えて、思わず車を停めて見惚れてしまった。何とも懐かしい、遠い昔のガキの頃を思い出させるような郷愁を誘う風景なのである。

 会議が終わり、長岡の街でちょっとした買い物を済ませ、西の空を真っ赤に染める夕日を何度も何度も振り返りながら、暮れなずむ山道をおやじ小屋へと向かった。
2014年4月3日(木)晴れ
おやじ山の春2014(初物コゴミ)
 昨夜はトイレで小屋の外に出たら、アッと息を呑むほどの物凄い星空で、しばらくは用を足すのも忘れてしまった。それから明け方になって、何の脈絡もなく友人たちが次々と夢に出て来て、その中の一人でもう10年も会っていない友人が「お前に会うのはこれが最後だ」と俺に別れを告げた時には、悲しくて悲しくて夢の中で号泣してしまった。M・Tさん、今どうしていますか?

 朝起きて、今日もまたアカイタヤの斜面でカタクリの芽出しを確認する。ここ数日来の陽気で日一日と成長が早まって、「カタクリ観賞会」までまだ2週間もあるというのに、来週にも咲いてしまいそうで気が気でない。

 今日はチェーンソーの整備やら囲炉裏の上の火棚を微調整しながら麻縄で本吊りに変えたりしたが、夕方近くに谷川に下りてコゴミとフキノトウを採った。コゴミは今年の初物で、明日は日赤町のSさん宅に溜ったゴミを出しに行くので(Sさんは「ゴミが溜ったらいつでも持ってきて下さいよ」と言って下さって、感謝、感謝である)そのお礼のお土産用である。

 出始めのコゴミはまだ細いひょろひょろコゴミだが、これが顔を出せば山菜シーズンの幕開けである。
2014年4月5日(土)雪(ミゾレとアラレ雪)
おやじ山の春2014(待望?の雪)
 一昨日の夜から降り始めた雨が昨日は冷たい雨となって終日降り続き、今朝のラジオ体操の時間から待望(?)の雪に変わった。寒暖計を見るとマイナス1℃である。これでカタクリの開花が遅れてくれると胸を撫で下ろしたが、例年なら恨めしい寒の戻りをこうして喜んだ年は初めてである。

 それにしても寒くて、せっせとストーブに薪をくべて、火に抱きつくようにして一日を過ごした。こんな日には炊事も億劫で、昨日Sさん宅にゴミ出しに行った帰りにいただいた大量の食料(おにぎり8個!、煮菜、焼き豚、厚揚げとコンニャクとニンジンの煮物、蕗味噌、etc)が本当に有難い。俺は大ゴミとコゴミ(小ゴミ?)しか持って行かなかったのに、身に余るご親切に涙が出てしまう。

 タムシバは今年の初咲き、オクチョウジザクラ満開となる。
 
2014年4月7日(月)晴れのち曇り
おやじ山の春2014(フクロウの巣箱)
 明け方フクロウが大声で鳴いて、それからほんの少し時間が経ってホオノキの大木に掛けたフクロウ巣箱がガタゴトと騒ぐようになった。姿は確認できないが、明らかに営巣して親フクロウがヒナに餌を与えている様子である。おやじ小屋のすぐ脇でフクロウがみよけたとは嬉しい限りである。最後のフクロウの給餌時間は午前4時50分である。

 フクロウは生態系の頂点に立つ猛禽類で、フクロウが棲んでいるということはそれだけ自然が豊かであることの証拠である。そして何よりも、ヘビ大嫌い人間の俺にとっては、ヘビを食ってくれるフクロウは全く心強い俺の用心棒なのである。

 今朝の気温は0℃。(昨日はマイナス1℃だった)顔を洗いに清水を溜めてる酒樽の水場に行くと、何と!樽の脇の地べたに一週間前に亡くしたメガネが転がっていた。ここは最後まで雪が残っていた場所で、洗顔でメガネを外して雪の上に置いたまま忘れてしまい、「どこだ?どこだ?」とずっと探し回っていた。それが雪が解けて目立つようになって見つかったという次第である。亡くしたのはまだ神奈川からSさんたちが来ていた時で、おまけにその後、亡くしたメガネを探すために老眼鏡をホームセンターで3800円も払って買い、これがまた!少し遠くを見ただけで頭がクラクラするメガネで、先日は日赤町のSさんが気の毒がって「ウチには100均メガネがあちこちに置いてあるから」と一蔓頂戴し(これがまた!俺の亡くしたメガネよりハッキリ見えた)、皆さんには随分お騒がせしてしまった。それにしても幸福を呼ぶフクロウのお蔭で、一度に3個のメガネ持ちになってしまった。

 朝飯はモチを七輪で焼いて食って、それから今回初めての谷向こうの山菜山に入った。ここのコゴミは収穫までにはまだ早かったが、美味しそうなフキノトウが雪解けあとから生え出ていて、籠一杯の収穫となった。

 午前中に山を下りて、いつもお世話になっているSさんと、立派なフクロウ巣箱を作ってくれた伊豆のKさんにそれぞれ山の幸のおすそ分けをさせていただいた。

 
2014年4月8日(火)曇り~晴れ
おやじ山の春2014(ギフチョウ初見)
 グラグラ・ドド~ン!と地面が揺れて(何しろ地べたに寝ているので)ビックリしてラジオを点けると、ここから近い山古志が震源地で長岡は震度4の地震だと報じていた。午前5時8分である。そのままじ~と横になってラジオを聴いていると、「NHKラジオあさいちばん」の<今日は何の日>の番組で『上野の国立西洋美術館で海外初のミロのヴィーナス展が公開されました。昭和39年の今日のことです』と言っている。「Oh!La ヴィーナス de ミ~ロ!」と思わず寝袋の中でデタラメなフランス語を叫んでしまった。というのは、在郷もんの俺が昭和39年の春長岡から東京に出て、国分寺の寮に入って最初の休日に出掛けたのが、このミロのヴィーナス展だった。当日は西洋美術館から伸びた長蛇の列が動物園あたりまで延々と続いて、それでも俺は夢と希望で胸がはち切れそうで、半日近く並んでも「これが東京だこってぇ」と屁のカッパだった。

 今日は午前中に下山して、ホームセンターでセメントとレンガの接着剤を買う。そして1日かかって土間の修理と外れた囲炉裏縁のレンガの補修をした。
 行き帰りの山道でギフチョウ2頭、そして小屋の前ではヒラヒラとギフチョウが足元に飛んできた。嬉しい今年のギフチョウの初見である。
2014年4月9日(水)晴れ
おやじ山の春2014(写真集-おやじ山NOWその1)
 長岡在住の森林インストラクターMさんが一生懸命整備している自然観察林の湿生園でミズバショウが咲き、例年は残雪の中で花開くオクチョウジザクラが春日の中で満開となり、早春の麗華タムシバとオオカメノキがほころび、オオバクロモジが可憐な黄花を付けた。そして日本海要素のスミレ、オオタチツボスミレも花開いた。
 今日の陽気に誘われて、小屋向かいの巣箱からふわふわ毛が身を乗り出してムササビと判明。春の女神ギフチョウもカタクリで吸蜜していた。



2014年4月13日(日)晴れ
おやじ山の春2014(舐め癖)
 今朝もゴトンとフクロウの巣箱が音を立てて、最後の給餌時間の4時50分だと分かった。毎朝この時間が2分と違わないのである。昔から「フクロウ時計」とはよく言ったものだと感心してしまう。

 毎週日曜日、朝5時過ぎのNHKラジオで日本野鳥の会の人が鳥の解説をしている。そして今朝の鳥は「クロツグミ」だった。ラジオから流れるクロツグミの朗らかな鳴き声に耳を傾けていると、何と!向かいの山菜山から本物のクロツグミが鳴き始めた。まさに森のエンターテナーで、この鳥は他の野鳥の鳴き声を真似たりして、決して同じ旋律を繰り返して鳴くことがない。だから、例えばホトトギスのように「トッキョキョカキョク、特許許可局」などと「聞きなし」を考えることは困難である。もちろん、ラジオよりはおやじ山のクロツグミの方が数段上のエンターテナーだった。

 朝マグカップに入れたコーヒーを飲みながら焚き火をした。ここ数日乾燥注意報が出ていたので、朝凪の今のうちにと随分注意しながらの焚き火だった。そしてコーヒーを啜りながらつくづく反省したのは、掻き回したスプーンをペロッと舐める癖である。山小屋の水場は小屋の外なので、ちょっとした汚れをいちいち洗うのは面倒で、スプーンなどは舐めてお終いである。これが習慣になって身に付くと、いつ何処でペロッと出て他人様の顰蹙を買うか分からない。

 今日は山を下りて、ホームセンターで一輪車の車輪を買って(安い!780円だった)からSさん宅に寄り、お昼の出前ラーメンをご馳走になったり発砲スチロールの箱一杯の差し入れ品を頂戴したりしたが(いつものことながら有難くて涙が出てしまう)、ハッと気付いてラーメンの割り箸は決して舐めなかった。そしてS家を辞してから「千花」に寄ってコーヒーを頼み、店の無線RANを使わせてもらって今週末実施の「カタクリ観賞会」参加の皆さんへ写真添付の歓迎メッセージを送ったりしたが、ここでもハッと気付いてスプーンは舐めなかった?と思う。仙人も地が出ると直ぐただの人に成り下がるから、せめて舐める癖だけはゆめゆめ注意したい。

 
2014年4月14日(月)晴れ
おやじ山の春2014(水道開通)
 明け方、ゴトンゴトンとフクロウの巣箱が随分うるさかった。おやじ山にはテンが棲んでいて子育て時期には他の野生動物を襲ったりするが、まさかフクロウのヒナを襲ったのではないかと心配になる。

 朝起きてすぐ、今日も風の出ないうちに小屋周りに落ちた枯れ枝をせっせと集めて、焚き火で処理をする。乾燥注意報が出ている中で、煙がフクロウ巣箱の方にもなびかず真っ直ぐに立ち上ってくれて嬉しい。

 そして今日は谷川から水を引く水道ホースの敷設工事をした。
 小屋から150mほど離れた谷川の上流に取水バケツが置いてあり、ここからゴムホースで小屋横の受水バケツまで水を引いて、ガチャポンプで汲んだり、おやじ池に流したりしている。そして秋の小屋閉めの時にはゴムホースも片付けて、雪崩れ雪が消えた時期に再び敷設していた。これも数年前に、ガチャポンプの据え付けからゴムホースの提供まで全てSさんがやって下さって、お蔭でおやじ小屋の水回りが格段に良くなった。

 先ずは先日Sさん宅で車に積んだ予備のゴムホースを一輪車で小屋まで運び上げ、それから取水バケツの谷川とおやじ小屋までの山の斜面を何回もこけつ転(まろ)びつ往復してゴムホースを繋ぎ、夕方近くにようやく完了した。嬉しくて思わず「バンザ~イ!」と一人で両手を挙げて開通祝いをした。

 それにしても、今日こけつ転びつした斜面には立派なゼンマイが出ていた。いよいよ本格的な山菜シーズンの到来である。

(左写真)

出始めのゼンマイと木の枝に止まるサシバ、そして可憐な花を枝一杯につけたオオバクロモジ。
2014年4月15日(火)晴れ
おやじ山の春2014(ドラム缶風呂に入る)
 今日は待望のドラム缶風呂に入った。昨日水道が開通したお蔭で、直接谷川の清流をドラム缶風呂に入れることができた。枯れた杉っ葉と薪をどんどんくべて、入るのが待ち遠しくて随分前から素っ裸になって何度も手を入れてはお湯加減を確かめたりしていた。

 実は、ドラム缶風呂のすぐ脇のコナラの木にはシジュウカラが巣箱があって巣作りの真っ最中だった。そのシジュウカラが巣材を咥えてウキウキと山菜山の方から飛んで来たが、もうもうと立ち上る煙にビックリして飛び去ってしまった。シジュウカラさんゴメン!
 遠くの三ノ峠山への登山コース(赤道コース)で3人の登山客の姿が見えた。冬からまだ木々の葉が展開していないこの時期まで幽かに見通しがきくのだが、その3人が煙を見つけて立ち止まってこちらを見ていた。(まさか双眼鏡で俺の裸を・・・)

 そして再びお湯に手を入れると、絶好の湯加減である。いそいそと茶碗と朝日山の一升瓶をドラム缶風呂の縁に置いて、ゆっくりと湯の中に身を浸した。
あああ~~~~~」

 
2014年4月16日(水)晴れ
おやじ山の春2014(フクロウ親子とムササビ)
 今朝は初めてフクロウの親鳥の姿を見た。時間はいつも通りの4時50分、想像以上に大きな鳥で驚いてしまった。そして巣箱の中のヒナはピーピーピーピーと可愛く鳴いて、嬉しくて仕方がない。
 さらに午前8時40分には、親鳥が若杉の森で「ホホホホホ・・・・」と低く小声で鳴くと、巣箱のヒナが「ヒーヒー」と応えるのである。親鳥が「俺は近くにいるから心配するなよ」と我が子にサインしているようなのである。

 そして小屋の正面のホオノキに掛けた巣箱でも、ムササビ君の尻尾(?)がだらりと穴から伸びていた。何しろシジュウカラ用に作った巣箱に入ったので、窮屈で仕方がないのかも知れない。

 今日もアカイタヤのカタクリ斜面を見て回ったが、多分観賞会当日は絶好調である!そして向かいの山菜山に入ると、フキノトウは既に終盤だがコゴミは最盛期で、遠来の客人たちにこれでおもてなしが出来そうである。

 日中は山を下りて街に買い出しに行ったが、自然観察林のエゾヤマザクラ(紅山桜)が美しく咲き始めて、こんな日に誰も訪れていないのがもったいないような気持だった。悠久山にも立ち寄ってみたが、お山のソメイヨシノが絢爛と咲き誇っていた。
 
2014年4月17日(木)朝小雨~曇り、寒い一日
おやじ山の春2014(カモシカの来訪!)
 今朝、カモシカとばったり出会った!それも小屋から5、60m先のおやじ山の入り口でである。

 今朝もぴったり午前4時50分、大きな羽を広げたフクロウが巣箱に入って、(多分、ヒナに餌を与えて)直ぐまた飛び出て行ったが、その威風堂々の雄姿に惚れ惚れとし、それから俺も何やらフクロウの気分で胸を反らせて山菜山に踏み込み、明後日に遠く神奈川から来て下さる「カタクリ観賞会」の参加者のためにコゴミを収穫した。

 山菜を採り終って一旦小屋に戻り、「やれやれ」とちょっと朝の散歩をする気分でおやじ山の入口の坂を上ると、目の前に灰白色の大型獣がいた!大きな大人のカモシカで、僅か7、8m先の山道の真ん中にビクともせずに立ちはだかっていた。ヘビなら「ギャ~ッ!」と大声を上げて逃げ出すところだが、熊だろうとカモシカだろうと不思議に俺は平気である。お互いにじっと睨み合いを続けること1分(いや30秒?・・・もっと短かったかも?)。「そうだ、カメラだ!」とハッと気づいて踵を返して小屋に戻り急いでデジカメを手に戻ってみると、残念!カモシカの姿が消えていた。午前6時50分である。それからあちこち歩き回って「カモシカや~い!」(心の中で)と探してみたが、見つかるものではない。

 そして午前10時頃だが、焚き火の煙がブナ平の方向にたなびいた時、向かいの山菜山の斜面を東から西へと駈け抜けるカモシカの姿を再び見た。

 昨年だったか、市営スキー場の前場長のWさんから、「この辺りでカモシカを見た、という人がいましたが、関さんは見たことがありますか?」と尋ねられて、「山菜採りのAさんが風谷山で鉢合せになったと言ってましたが・・・」と回答したが、まさか自分の山で出会うとは思わなかった。喜んでいいような、良くないような不思議な気分である。
2014年4月18日(金)曇り
おやじ山の春2014(第65回全国植樹祭の招待状)
 今日もフクロウの給餌時間に起きて、麓のキャンプ場が明日オープンするテント設営の準備やら、明日迎える神奈川からの客人たちの受け入れ準備で忙しく動き回った。

 そして今日、長岡市役所から電話があって「6月1日に長岡で開催される全国植樹祭に関さんが招待されましたのでご連絡します。招待状をお預かりしていますが、ご自宅にお送りしますか?どうしましょう?」との連絡である。嬉しかった!長岡に随分関わりを持ったとはいえ、県外者の俺をハレの舞台に招待していただいたことにつくづく感謝である。丁寧にお礼を申し上げて受け取りに行くことにした。

 夜、日赤町のSさんから電話が入った。「明日と明後日の天気は大丈夫そうですよ。明日は曇りから晴れ、明後日は晴れの予報で、心配ないですよ」とのことである。もちろんSさんは明日神奈川から客人が来ることをご存じで、まるで我が事のようにあれこれと心配してくれていたのである。携帯電話を握って頭を下げながら手を合わせる気持ちだった。
2014年4月19日(土)晴れ、薄曇り
おやじ山の春2014(おやじ山カタクリ観賞会第1日目)
 朝起きて小屋の外に出ると、ようやく明らみ始めた西の空に居待月(いまちづき:満月から3日後の月)が白く残っていた。晴れの予感で嬉しい。何しろ今日は、Nさんのご両親を含め遥々神奈川から総勢11人の森林インストラクター仲間の皆さんがおやじ山に来てくれるのである。

 向かいの山菜山に入って、明日の昼食のおにぎりを頼んだ地元のO君へのお土産のコゴミを採り、おひたしにするカタクリも採取してキャンプ場に下りた。今日からキャンプ場がオープンして炊事場が使えるようになって有難い。
 そして早速明日の料理の仕込みに入った。先ずは12人分のきのこ汁の準備、それから今朝採取したカタクリやコゴミを茹でて午前11時には下準備完了である。

 午後1時半に新潟県内に実家があるというNAさん夫婦の車がキャンプ場に到着。続いてNさん運転のマイクロバスも駐車場に着いて皆さんがニコニコとテント場に上がって来た。そして今回初来訪のNAさんご夫婦やSさん、Kさんらにテント場から望まれる景色を指差しながら説明してから、全員でおやじ山に向かった。

 おやじ小屋に着いて皆さんを一面ピンクの花園となったカタクリ広場に案内すると、誰もが「わ~!」と感嘆の声を上げた。「足の踏み場もないです。何処を歩いたらいいの?」と戸惑いながらも、満開のカタクリ群落の中に屈み込んでは頻りにカメラのシャッターを押していた。

 今週の前半は初夏のようなポカポカ陽気が続いて、カタクリの花が咲き切ってしまうのではないかとヒヤヒヤし通しだったが、一昨日、昨日と今度は気温がぐっと下がり、今日と明日はドンピシャリのカタクリ観賞日となった。全く幸運と言わざるを得ない。

 おやじ山を下りて今夜の我々の宿、長岡グランドホテルに着いたのは午後4時半だった。そしてたまたま長岡アオーレの開設2周年記念で賑わっている会場を見ながらアオーレシアターに入り、全員で大迫力の3D画面「長岡大花火」を楽しんだ。

 そして午後6時半、ホテルから目と鼻の先にある元祖へぎそばの店「小嶋屋殿町店」で宴会が始まった。久々に娑婆に出た気分で仲間の皆さんと楽しく酒を酌み交わしながら、こうして神奈川から遥々おやじ山まで参じて下さったことに心から感謝する思いだった。
 

 
2014年4月20日(日)晴れ
おやじ山の春2014(おやじ山カタクリ観賞会第2日目)
 ホテルの部屋で目を覚ましてカーテンを開けると、眩い朝の光である。カタクリ観賞には絶好の日和となった。
 確か昨夜のNさんの提案で、皆さんは早朝から悠久山の桜を観に行ったはずである。俺は、昨晩宴会が終わってからSさんが観に行ってきたという福島江の川縁の桜を、朝の散歩がてらに観に行った。中学校時代に、授業うわの空でいつも教室の窓から眺めていた懐かしい桜だった。

 午前7時半、悠久山から皆さんが帰り、ホテルのレストランで揃って朝食を摂った。そして部屋に戻って間もなく、O君から「おにぎり出来たよ」と電話が入った。酒店を営んでいるO君が、今日は店の休業日にも拘わらず自ら12人分のおにぎりを握ってくれたのである。

 O君からおにぎりを受け取って、全員9時にホテルを出た。そしてキャンプ場に着いて車を下り、ここからは自然観察林の谷川沿いの道をゆっくり歩きながらおやじ小屋に向かった。
 途中、オオルリの鳴き声に直ちに双眼鏡で探し当て、Kさんなどはしっかりと写真まで撮ってしまう技術はさすが森林インストラクターである。

 それにしても、皆さんの歩行はチョー遅かった。牛歩などとそんな生易しい言葉では表せないほどののんびりさなのである。道端の植物を見ては皆でああだこうだと論議し、ルーペでまじまじ覗き込み、手持ちの図鑑を開いては確認し、さらにしゃがみ込んで何枚も写真を写してと、この調子ではおやじ小屋到着が真夜中になりそうな気配だった。しかしこうして雪国の植物に興味を示してくれるのは有難く、しつこく探求する姿はまさに森林インストラクターの鏡なんだけど、何しろ本命のおやじ山のカタクリに会う時間が・・・・。

 それでも無事(?)小屋に着いて、今日はおやじ山のあちこちを案内してから、再びカタクリ広場に行った。明るい日差しが入って、今日も見事なピンクの花園だった。Nさんが「ここ何年かおやじ山のカタクリを観に来てたけど、今回は最高じゃないですか!」と興奮気味に話していたけど、本当にそうかも知れないと嬉しかった。

 11時半におやじ小屋を去ってキャンプ場に向かったが、途中の山道で昨日は見られなかったギフチョウに出会った。今回参加のN女史が、「ギフチョウだけは何としても・・・」と熱望していた蝶である。(残念ながら所期の目的は達成できなかったけど)

 キャンプ場に着いて昼食の野外パーティが始まった。おやじ山で採ったコゴミ、フキノトウ、タラノメ、コシアブラ、ハリギリ、更にイワガラミ、ユキツバキ、カキドオシなどを天ぷらに揚げ、アツアツのきのこ汁が出来上がり、コゴミとカタクリのお浸しが並び、さらにTさん手作りの長岡名物エゴを詰めたタッパが開かれて、日本酒とビールで乾杯である。

 帰る時間が近づき皆さんを高台に誘った。テント場の縁にある俺の大好きな場所で、眼下に広がる長岡の街と越後平野の田圃の風景を眺めてもらった。巻に実家があるというNAさんが、「私の実家の周りでも、今頃の時期には田圃に水が入って、一面まるで湖のようになりますよ」と言った。

 午後1時半、キャンプ場下の駐車場からNさんの車が小さくクラクションを鳴らして出発し、続いてNAさん夫婦の車が出て行った。そして2台の車を見送ってから急いで高台に上がり、田圃の中の道を走り去る2台の車に向かってタオルを大きく振り続けた。
2014年4月23日(水)晴れ
おやじ山の春2014(早春から春へ)
 「カタクリ観賞会」が終わった翌21日は、朝から雨になった。そして昨22日には雨が上がり、今日は快晴の青空である。つい先日までピンクの花びらを思いっきりイナバウワー(反らすの意)させて自慢げに咲いていたカタクリは、今やスプリングエフェメラル(春のはかない命)の花姿となり、冬枯れの木立の中で純白の麗花を誇っていたタムシバやオオカメノキの花が山道に散っていた。何というおやじ山の花たちだろうか!
(右の写真にマウスのポインターを置くと拡大写真になります) 

 そして21日の雨を境に、一気に森の緑が萌え立った。クロモジの葉が見る見る伸び、オオカメノキの丸葉が大きく展開し、おやじ小屋の前のカスミザクラがピンク色の蕾をつけて淡く色付きはじめた。さら今日は、朝の早いうちからギフチョウが良く舞った。まさにおやじ山が早春から山笑う春へと切り替わったのである。
(下のサムネイル写真にマウスのポインターを置くと拡大写真になります)

 昨日は伊豆からKさん夫婦がおやじ山に来てくれた。前日の雨を含んで、柔らかく伸びたコゴミを採り、出始めの木の芽(ミツバアケビの新芽)やコシアブラも摘んで、ご夫婦と一緒に楽しい山菜採りの時間を過ごした。

 今朝は、おやじ山の貴重種トケンラン(絶滅危惧種)の周囲や、N女史が発見してくれた白雪ナガハシスミレの株周りを整備した。そして嬉しいことに、中の池縁でニリンソウの株を見つけた。いずれも大事に守りたい花たちである。
    (白雪ナガハシスミレ)           (コシアブラの新芽)

 
2014年4月25日(金)晴れ
おやじ山の春2014(初ゼンマイ採り)
 午前5時、山菜山に入ってこの春初めてのゼンマイ採りをした。時々山の斜面から振り返っておやじ小屋を望むと、杉木立に囲まれた小屋の周りは色とりどりの新緑が織りなし、その中でカスミザクラが絢爛と咲き誇って眩いばかりである。

 ゼンマイは採って直ぐ小屋の前で簡易かまどに薪をくべて大鍋で茹でたが、少し茹で過ぎてしまった。気合を入れ過ぎたか初物だけに慎重になり過ぎたか、まだ勘が掴めてないようだ。

 そして今日は、今年初めて地元のゼンマイ採りがおやじ山に入って来た。早速お茶をご馳走してこの春の山菜談義にしばし耽った。
2014年4月26日(土)晴れ、夏日となる
おやじ山の春2014(カワニナとマムシ)
 おやじ山のカスミザクラが満開となった。まさに春爛漫の一日だった。
 今朝も山菜山に入って2度目のゼンマイ採りをする。質の良いゼンマイが採れて嬉しい。まだまだ小さいがウドもようやく出始めた。

 午前中は、ゼンマイを干しながら杉林の柴刈りをした。好天に恵まれてゼンマイ揉みに忙しく、杉林と小屋前に広げたゼンマイの間を行ったり来たりと大変だった。
 そうこうしている時に2人連れの中年女性が山に入って来た。干してあるゼンマイを目にして「立派なゼンマイだねかてぇ」と驚いていたが、本人たちは手にビニール袋は下げているものの、山菜採りよりはハイキングに来てここに寄り道した感じである。お茶を差し出したら、お返しに飴とお菓子を貰ってしまった。

 そして今日は、嬉しい発見と怖いものを見てしまった。カワニナとマムシである。下の谷川ではホタルが出るのでカワニナがいることは分かっていたが、おやじ池から流れ出る小川でカワニナを見つけた。夏にはここからもホタルが舞うかも知れないと思うと、何とも楽しみである。

 そして夕方、キャンプ場に戻ろうと作業道路を下っていると、道路脇の溝の所にマムシがいた。「わ~ッ!!」と大声を出してしまい、同時に周囲を見回して他人に今の声を聞かれてないか確認し、一応ホッとしてから勇気を振り絞ってデジカメを構えた。右の写真は俺の渾身の一枚である。

 
2014年4月29日(火)晴れ、昭和の日
おやじ山の春2014(一時帰還)
 春の大型連休が始まった。今日は山を下りて一旦自宅に帰ることにした。連休後半からは息子と孫のジョウタロウ、それにカミさんもおやじ山に来るので、車を戻す必要があった。3月の山入りから約1ヶ月半が過ぎた。さすが狭い小屋の中やテント暮らしを続けながらの山仕事で、身体に疲労が溜っていた。直ぐまたトンボ返りの帰還にはなるが、1、2日畳の上で体を休めたかった。

 朝7時、日赤町のSさんにゼンマイ(まだ生乾きだったけど)を届けてからキャンプ場に戻ると、偶然信州からOさんが到着した。俺と入れ替わるようにして数日のキャンプ生活だという。午前9時、Oさんに後を託してキャンプ場を発った。

 関越道を途中の月夜野インターで下り、猿ヶ京温泉の「満天星の湯」に入る。そしてここでゆっくりと露天風呂に浸かってから、一路藤沢へと向かった。

<「5月日記」(おやじ山の春2014)へ続く>(執筆中)