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最後のページは<3月31日>  3月17日日記から<おやじ山の春2014>をアップしました。

2014年3月3日(月)曇り
3月の歌から
 3月に入って、もう今日はひな祭りである。朝起きて5年日記の最下段の欄に文字を書き入れてから、「さて、前は何があったかな?」と昨年、一昨年、そして更に前の年へと過去の日記を追っていくのが慣わしになってしまった。
 4年前(2010年3月1日)
の日記には、『今日の22時竹芝桟橋。10日間の利島椿調査に向かう』の後に、こんな走り書きがあった。

 初蝶へ手を伸べし兵狙撃さる (川辺 了)
 
「西部戦線異状なし」のシーン。初蝶は兵の故郷への思いか?
 
うつし世の闇深ければきこえけり寺山修司のマッチ擦る音 (岡田正子)
 どうかわが祖国が平和でいい国になりますように・・・(寺山の<マッチ擦る つかのま海に 霧ふかし 身捨つるほどの 祖国はありや>を踏まえて
 
吾が魂も不屈なるべし蕗の薹 (野尻徹治)

 そして今日の朝日俳壇には、こんな句が
載っていた。
 今にして父の生きざま冬の鯉 (狩野睦子)

 「そろそろおやじ山へ」と気持ちが急いてきた。3月の手帳を開いてにらめっこする。

2014年3月9日(日)晴れ
牛?も踊った国会デモ
 「0309原発ゼロ大統一行動」に参加して、久々に国会前で声を張り上げてきた。直前になってたまたま知った集会だったが、3年目の3・11が近づくにつれて、新聞もテレビも一斉に大震災や原発事故に関する報道がかまびすしくなって、「俺もこうしちゃいられない」と俄かに発奮したのである。先日の新聞に載っていたシカゴ大学ノーマ・フィールド教授の、「(見えない希望の中で)体を使って模索する行為自体が希望だ」との言葉に触発されたせいもある。

 会場の日比谷野外音楽堂に着くと、入り口の扉が閉じていて周りは溢れた人たちでいっぱいだった。消防法で定員以上は中に入れないのだという。国会デモまでまだだいぶ時間があるので、公園内で行われているイベントを見に行った。テントが並ぶバザー会場で、何やらブカブカと大音響が響いていた。途中の池の畔では一人老婦人が絵筆をふるっていたが、こんな騒がしい公園の中で、ポツンとそこだけが静寂に包まれているようだった。

 仮設舞台で「ジンタらムータ」というバンドが演奏していた。「闘う音楽」と称して演奏途中に「ゲンパツ・ハンタイ!」などのシュプレヒコールが入ったりするのだが、演奏は上手かった。バンマスが吹くクラリネットを中心に、サックス奏者が二人、スーザフォン、ドラム、エレキギター、ボンゴと、万事激しい演奏で観客を盛り上げるのである。確か、グレゴリオ聖歌の「怒りの日」という曲だと説明があった演奏などは、最初は聖歌らしくスーザフォンが渋く厳かに奏でたものの、たちどころに「ブンブン、ジャカジャカ」と闘う音楽の本領を発揮して、観客を熱狂させてしまった。気が付くと「原発反対!」のプラッカードを首に下げて手作りの牛か?豚か?の仮面を被ったオッサンも舞台の脇で踊りだす始末である。

 デモ行進は首相官邸コースと国会議事堂コースに分かれたが、俺は議事堂コースに加わった。闘う音楽の若いリーダーが言った、「皆が集まれば微力だけれども無力ではない」を信じて・・・。

(3月10日の朝刊には、この日の集会には3万2千人が集まった、と報じられた)
2014年3月15日(土)晴れ
おやじ山に出発します
 今日の藤沢は、ポカポカとした春の陽気だった。昨日からおやじ山に入る準備を始め、今日も書き出したメモを一つひとつ確認しながら準備に忙しかった。

 昨日、長岡では一番お世話になっているSさんと、市営スキー場のK場長さんにも電話を入れて、明日出発する旨とこれからの天気の具合や山の積雪量などを訊いてみた。そしたら雪の量は昨年の半分以下、今年はおやじ山の春が随分早く来そうな感じだった。

 今日はカミさんも俺の山行きの準備をいくらか手伝ってくれて、まあ、有難いって言えば有難いのだが、物置の奥に仕舞い忘れたような色んな物をガサゴソ掻き集めて渡してくれた。もうとっくに賞味期限が切れたような、何年も前のお中元の売れ残りセールの缶詰や瓶詰だったり、「まだ山は寒いから持って行ったら」と、資源ゴミで出す予定だったボロ布みたいなのを渡されたりと、お蔭で車の中がガラクタだらけの荷物になった。

 しかしやっぱり、これからおやじ山暮らしが始められると思うと胸が弾む。しばらくはこの「日記」も休みますが、帰ったらまた、山での出来事を皆さんにご報告いたします。

おやじ山の春2014

2014年3月17日(月)晴れ
おやじ山の春2014(山入りの日)
 昨日の朝藤沢の自宅を車で出発して、昨晩は長岡市内に住むSさん宅に泊めていただいた。
 そして今朝8時に、奥さんから3食分のおにぎりやら鱈の煮付け、蕗味噌、缶詰、インスタントコーヒー、お茶、ミカン、日本酒、ビールと、まるで一人住まいの息子を実家から送り出す時に持たせるような品々をどっさりといただいておやじ山に向かった。

 今冬は積雪量が少なく、既に長岡市内はすっかり雪が解けているが、東山に近づくと田圃はまだ白い雪原である。
 長岡市営スキー場のロッジの事務所でK場長さんに挨拶して、9時に大型リュックを背負っておやじ小屋に向かった。ポカポカと温かい春の日差しを浴びて、最高の山入りの日となった。
 尾根の積雪は30cm、山の斜面では1m程の積雪量だろうか。途中の山道ではイカルが朗らかに囀り、慌てて飛び出してきたホンドリスが、少し立ち止まって俺を出迎えてくれた。

 11時、おやじ小屋に「ただいま~!」と大声で挨拶して到着。そして再び下山して2度目の荷揚げをした。
 
 午後4時半には小屋に入って、七輪の炭火に手をかざし、ラジオの大相撲中継を聴きながらの一人晩餐会になった。Sさんからのご馳走に何度も心の中で手を合わせながら舌鼓を打った。 
 そして午後6時には寝袋に入って横になったが、クタクタに体が疲れている筈なのに、まるでガキの頃の運動会前夜の気分で、何度も枕元の酒瓶に手が伸びてしまった。
 
2014年3月18日(火)曇り、昼から温かい雨
おやじ山の春2014(満月とフクロウ)
 昨夜はフクロウが頻りに鳴いた。小屋の直ぐ脇の木の上で「ゴロスケホッホ!💛」と一羽が鳴くと、少し離れた谷川の方から「💛ゴロスケホッホ!」ともう一羽が呼応して鳴くのである。シ~ンと静まり返った山の中で、野太く響き渡るフクロウの鳴き声は、俺の身体の中にも沁み渡って来るようだった。
 時計を見ると夜中の1時だった。寝袋から這い出て小屋の外に出ると、煌々とした満月である。冬枯れの木立がその月明かりに照らされて、白い雪の山肌に黒々と影を落としていた。木立の間からは遠く長岡の街の灯が瞬いていた。今の時期にしか見られないおやじ小屋からの街の眺めである。

 7時に起きて小屋の雪囲いを外し、屋根に登ってストーブの煙突を付ける。それからラジオが「昼前から雨」と報じていたので、朝飯抜きでスキー場の職員駐車場に停めてある車まで下りて、雨に追われるようにして3度目の荷揚げをした。

 今日は囲炉裏に薪をくべて暖をとった。ラジオは四国と関東地方で春一番が吹いたと報じている。あと一月後の4月19日、20日と神奈川の森林インストラクター仲間を呼んでの「おやじ山カタクリ鑑賞会」を企画しているが、果たしてタイミング良くカタクリが見頃となるか今から日々の天候が気になって仕方がない。
 夜8時過ぎ、今夜もフクロウが鳴き始めた。




(右写真:おやじ池のクロサンショウウオ1回目の産卵)
2014年3月19日(水)曇り、気温下がる
おやじ山の春2014(巣箱の中の正体は?)
 朝起きて囲炉裏に火を焚き、小屋の外に出た。アオゲラの甲高い鳴き声と木の幹を忙しく突つくキツツキのドラミングの音。キリリと冷え込んだ朝の山の空気に中で、これらの音が実に透明な響きとなって耳に届くのである。

 「おッ!」と目を凝らした。小屋の直ぐ前に生えるホオノキに掛けた巣箱の中で、何かが動いた。この巣箱の穴は、シジュウカラ用にと径28mmで作ったはずだが、いつの間にか誰かが自分の体に合わせて穴を広げてしまった。どんな生き物が棲みついたか、実に楽しみである。

 今日は一日山回りをした。
 先ずは1ケ月後に控えた「カタクリ鑑賞会」の会場(?)の下見。アカイタヤの大木が生える斜面で約1mのたっぷりの積雪量を確認してホッと胸を撫で下ろした。ここがおやじ山自慢のカタクリ群落の自生地である。
 それから谷川の縁を歩いてフキノトウを発見。小屋脇のシイタケのホダ木には何本かキノコが出ていて、ミズナラの伐り株でカンタケも見つけたし、これで食料調達はできると一安心である。

 18時40分、19時26分・・・(この後は酔っ払いの酷いメモで、自分の字なのに判読不明)フクロウ鳴く。(殊勝にも今日からフクロウと巣箱の観察記録をとることにした)
2014年3月21日(金)春分の日、ミゾレ
おやじ山の春2014(炭火のご馳走)
 昨日来の冷たい雨が今日はミゾレに変わった。気温は1℃である。
 昨日は丸一日、小屋の中でポタポタと屋根を打つ雨の音を聞いて過ごした。何と長い一日だっただろうか。今日も外に出掛けるような天気ではないが、春彼岸の中日である。それで意を決して下山することにした。

 9時に小屋を出てミゾレの降る山道をどふり、どふり(どふる:どぶるとも言うが、「柔らかい雪に足を取られる」意の長岡の方言)の下山だった。雪解けが進み雪が緩んだせいだが、これで随分体力を消耗してしまった。

 山を下りてから先ずスーパーに寄って花を買い、おやじとお袋が眠る托念寺の墓に参った。それから悠久山にある「お山の家」の風呂に入って身体を温め、少し身綺麗になって長岡グランドホテルに行った。来月実施の「おやじ山カタクリ鑑賞会」に神奈川から来てくれる参加者の宿泊の打ち合わせである。
 そしてホームセンターで木炭6キロ、スーパーで食料、酒、体を温めるためのウィスキー、それから温め過ぎの身体を冷ますためのビール(発泡酒だけど)などを買い込んで、またミゾレ降る山道を歩いて暗くなった小屋に戻った。あ~くたびれた~!

 いつもより随分遅い時間の夕飯になったが、久々に少しリッチな気分の食事になった。何よりもケチっていた炭をガンガン熾しただけで豪華な気分になれるから炭火も立派なご馳走なのである。
2014年3月22日(土)霰雪
おやじ山の春2014(おばあさん仮説)
 昨夜は久しぶりに温かく眠った。NHKのラジオ深夜便を点けたまま眠っていたが、朝4時からの番組「明日への言葉」で目を覚ました。京都大学大学院准教授で長く霊長類の研究を続けてきた明和政子氏がゲストで、寝袋に包まったままじっと聞き入ってしまった。題は「ヒトらしい共感力を育む」だったと思うが、その話の中で<おばあさん仮説>という実に面白い内容があった。

 つまり、人間のおばあさんには、子育てにかかわる大事な役目がある、という仮説である。
 ヒトに近い霊長類をはじめ、人間以外の動物のメスは子どもが産めなくなると死んでしまう。ところが人間だけは子どもを産めなくなっても(つまり閉経後も)長く生きている。そこがおばあさん仮説の重要なところで、それは「自分の娘が子育てをするときに助けてあげる」ためなのではないか。あるいは本来はおばあさんの役目だが、おばあさんに相当する家族の仲間が皆で娘の子どもを育ててゆく、というのが動物の中で人間だけが持つ本来の子育ての形式だったのではないか、というのである。(ところが現代の日本の子育ては、ヒトを生物として捉えた時とても不自然で、本来のヒトらしい共感力を育む環境を取り戻す必要がある、と氏は主張する)

 明和准教授はチンパンジーと人間との心の働きを比較して「比較認知発達科学」という学問分野を開拓したが、それに基づいた魅力的な考え方である。

 外に出るとアラレ雪が白く積もっていた。朝飯は昨日スーパーで買ったアルミ鍋に具も一緒に入った温めるだけの鍋焼きうどんで、こんな朝にはもってこいである。
 今日も一日小屋の中で過ごす。
2014年3月24日(月)晴れ、汗ばむ暖かさ
おやじ山の春(生き物たちの躍動)
 一週間ぶりの快晴である。ここ数日間小屋の中でも0℃近い日が続いてぐずぐずと朝寝坊を決め込んでいたが、今日は嬉しくて6時に飛び起きた。

 外に出てホオノキの巣箱に目をやると、何やらふわふわとした毛の生き物が俺の方を見ていた。爽やかな今朝の朝日で巣箱の中でじっとしては居られなかった様子と見える。

 そしておやじ池を覗くと、クロサンショウウオの2回目の産卵が始まっていた。池の中に浮かんだ杉の小枝に掴まって、10匹ほどのクロサンショウウオが団子になっての狂乱ぶりだが、毎年毎年何度も観察しているうちに薄気味悪さも無くなって、今では「ほほ~う・・・」と微笑みながらの観戦である。

 暦の上では啓蟄はとうに過ぎたが、ふわふわ毛の生き物もクロサンショウウオも春の躍動の始まりで、さながら春彼岸が明けた今日がおやじ山の啓蟄である。
 
 そして俺も、昨日、一昨日とじっと狭い小屋の中に蟄居していたのですっかり身体がなまってしまった。それで俺もクロサンショウウオを真似て猛然と躍動を開始した。

 先ず、向かいの山菜山に向かって大声で「おはよう~!」と声を掛けて、湿った寝袋やシュラフカバーをロープに干す。
 それからトイレの修復。さらに午前中は、今週末に神奈川からやってくる森林インストラクター仲間のテント場作りをやった。今日の日差しと暖かさで小屋周りの雪解けが一気に進みそうで、週末頃にはビショビショになる気配だった。それで今のうちに雪上テントのための雪集めをしておこうと考えたのである。
 せっせとシャベルで雪山を築いて解けないようにとブルーシートで覆ったが、週末まで持つかどうか何とも心もとない感じではあった。

 昼飯を食った後は、スキー場に停めてある車まで行って、小屋で必要なもの(といってもパンツや下着、靴下、タオル、電池、一升瓶といった、まあどうってことない?ものばかりだけど)をリュックに詰めて運び上げた。何しろ2日間の蟄居が祟ってすぐ息が上がり、山道の途中で何度も休みながらの荷揚げだった。

 夕方6時、日赤町のSさんから電話が入った。「どうしていなさるね?お元気にしてますか?」
 嬉しかった!

 今日は、荷揚げ途中の山道で、ルリシジミとルリタテハの今年の初蝶を見た。そして夜には満天の星空となって、南西の空には冬の星座オリオンが瞬いていた。

 
2014年3月25日(火)晴れ、長岡の気温17℃
おやじ山の春2014(今日の風景)
 ラジオが「東京、横浜で桜が開花した」と報じている。そして今日は全国的に最高気温だそうで、長岡地方の気温も17℃まで上がったそうである。

 トイレにドアーを付けて修復完了。小屋前の谷川に下りて春を楽しんだ一日だった。カタクリはいまだ蕾だが、南斜面のキクザキイチゲが咲いた。以下今日の風景である。




2014年3月28日(金)晴れ
おやじ山の春2014(早春花の初咲き)
 昨日、一昨日と冬に逆戻りしたような天気で、気温は5℃まで下がった。そして今日は一転、市内の気温が17℃と再び春の陽気になった。
 
 10時に山を下り街に出て、明日からの準備やいろいろ溜っていた懸案事を済ませて、帰りに久しぶりに「千花」に寄った。マスターのHさんがニコニコと出迎えてくれて、差し出された特上のコーヒーを啜りながらの談笑のひと時だった。

 それにしても、最初に入山した時からまだ10日程しか経っていないのに、行き帰りの山道の雪解けの速さには驚かされてしまう。そして雪解け直後の大地からは早春の花々が競うようにして花開き、その日々の自然のダイナミズムがビビッドに体全体で感じ取れるのである。山に入るとは、山の自然と同化して季節とともに過ごすことであり、おやじ山で暮らすことは、懐かしい過去の思い出と同化して暮らすことに他ならない。

 今日はおやじ小屋の周りで、カタクリ、キクザキイチゲ、ショウジョウバカマの初咲きを見た。自然が春を知らせる季節のマイルストーンである。

2014年3月29日(土)晴れ、夏日となる
おやじ小屋の春2014(バー・サンセットの仲間たち)
 昨晩から今朝にかけてフクロウが頻りに鳴いた。「💛💛ゴロスケホッホ!💛💛ゴロスケホッホ!」「💛💛ゴロスケホッホ!💛💛ゴロスケホッホ!」とこっちとあっちで何度も鳴き交わして、フクロウペアも恋の真っ只中に入った模様である。

 今日は神奈川から「バー・サンセット」の面々(森林インストラクター神奈川会のSさん、Nさん、Kさんの3人)が来訪するので、俺も嬉しくて「💛💛ゴロスケホッホ!」と一声を発して午前3時に飛び起きてしまった。今回は同じメンバーで長岡出身のTさんが来られなくなって残念だが、来月の「カタクリ鑑賞会」にはTさんも参加できると連絡があった。

 
 そして今朝もアカイタヤの斜面を見回ってカタクリ群生地の様子を確認してから、谷川に下りてフキノトウを採取した。客人たちに野趣あふれる俺の仙人食「フキノトウの混ぜご飯」をふるまって驚かせてやろうとの魂胆である。アカイタヤの斜面では殆ど雪は消えて既にカタクリの芽出しが始まっていたが、果たして鑑賞会当日が花の見頃時期となるのか、全く気が休まらない毎日である。

 10時半にNさん運転の車がスキー場に到着して、「やあやあ」の挨拶を交わしておやじ小屋に向かった。今日は夏日の気候で、途中の見晴し広場で各々の大型リュックを肩から下ろして、早速ビール片手に長岡の街並みを望みながら昼食を摂った。

 おやじ小屋に着いて先ずはテント設営(やっぱり雪上テントは無理だった)。そして早速Sさん、Kさんは杉林に入って枝打ち、Nさんは冬の間に落ちた厖大な量の枯れ枝の片付けをしてくれた。

 そしていよいよおやじ山が夕日に染まる頃、「バー・サンセット」の開店である。外にテーブルを出して「カンパ~イ!」から始まり、山菜山の白い雪肌に映る夕焼け色をホリゾントに、俺は十八番の「知床旅情」まで大声で唸ってしまった。

2014年3月31日(月)晴れ
おやじ山の春2014(♪山の三月)
 あっという間の3日間で、昨日はクロサンショウウオの3度目の産卵を確認した後、Kさんが長岡駅から新幹線で帰り、今日はもうSさん、Nさんが帰路につく日である。

 そして昨日も今日も、3人の仲間たちは山を下るギリギリの時間まで杉林の枝打ちやチェーンソーを使っての間伐、小屋のストーブの据え付け、囲炉裏の上の火棚の取り付け、ドラム缶風呂の設置と、全く大助かりの仕事をこなしてくれた。

 そして午後1時過ぎ、3人で山を下った。今日のポカポカ陽気に、厳冬期にはあれほど猛々しく積もっていた山道の雪も今やすっかり儚くなって、今日中にも解けて無くなりそうである。
 思えば、今日で3月も終わりである。山道を下りながら、何やら郷愁を込めて去りゆく山の三月を見送る気分である。

♪どこかで春が 生まれてる
 どこかで水が 流れ出す

 どこかで雲雀(ひばり)が 鳴いている
 どこかで芽の出る 音がする

 山の三月 そよ風吹いて
 どこかで春が 生まれてる♪


 3人で川崎町の小嶋屋に入って名物へぎそばで昼食を摂った。そして表に出て二人と握手を交わし、小嶋屋の駐車場でSさん、Nさんを見送った。



 <引き続き「4月日記」(おやじ山の春2014)へと続く>