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2012年1月1日(日)晴れ
「ソウモクコクドシッカイジョウブツ」
明けましておめでとうございます。

おやじ小屋主の年頭の所感にかえて、今日、元日の朝日新聞に掲載された哲学者 梅原猛の言葉を引用させていただき、皆様へのご挨拶といたします。

「日本は国土の3分の2が森で、神社には必ず森を残した。そして日本には、動物はもちろん植物も鉱物もみな仏だという『草木国土悉皆成仏(そうもくこくどしっかいじょうぶつ)』の思想がある。」

「一方、西洋文明にとって森は未開の象徴であり、古代メソポタミアの叙事詩『ギルガメッシュ』で、王様が最初にしたことが森の神フンババを殺したように、西洋には人間は自然を征服できるという思想がある。そういう文明、哲学は変わらなくてはならない。」

そして梅原は次ぎのように結んでいる。

「自然の恩恵を受け、感謝して生きる。そういう文明によって新しい日本をつくるべきです」

今年も「おやじ小屋から」を、どうぞよろしくお願いいたします。

2012年1月3日(火)曇り
箱根駅伝
 正月の2日、3日は、毎年のことだが二日酔でダメージを受けた体を何とか鼓舞して国道1号バイパスの沿道に立ち、選手に向って「がんばれ〜!」と叫ぶことにしている。箱根大学駅伝の往路の3区、復路の8区が我家から車で少し走ったところのコースで、ここで応援することが数年来の正月行事になってしまった。

 するとあら不思議、大声で「がんばれ〜!」を繰り返すうちに、当初の虹色の息から次第にアルコール分が抜け出て、最後尾(第20位)の選手が走り過ぎる頃には、「ガンバレ〜♪」と清らかな処女の吐息となって、重い偏頭痛もスキッと治ってしまうのである。

 そして駅伝2日目の今日も沿道に立って小旗を振ったが、選手達が歯を食いしばって力走する姿を目の当たりにすると、やはり感動する。「よ〜し!俺も、やるぞ〜!!」と何やらポッポと興奮して、最後尾を走る白バイのお巡りさんにまで小旗を振って「がんばれ〜!」と叫んでしまった。

 それにしても、選手達は速い!カメラのシャッターを押しても後ろ足だけが写ったり・・・それで試行錯誤しながらようやく撮った何枚かである。
2012年1月9日(月)晴れ
森の食文化研究会
 昨年の7月2、3日と八ヶ岳のOさんの山荘で、おやじ山に来てくれた森林インストラクターの皆さんが集まって「ガマズミ品評会」なるものを開催した。

 つまりは、各々がおやじ山で採取したガマズミの実で仕込んだ果実酒を持ち寄っての味比べ、というのであるが、TさんとKさんは美しくピンク色に染まった本格ガマズミ酒を持参したものの、Sさんなどは自宅で頻繁に試飲を繰り返しているうちに在庫を呑み干し、代わりにレモン酒を出品、Nさん、Uさんは素晴らしい越後の銘酒を抱えて来たり、そして何よりも、Oさんの山荘には長年溜めに溜め込んだありとあらゆる八ヶ岳産果実酒がずらり並んでいて、これらのビン類をテーブルに林立させただけで既に悪酔いしそうだった。

 そして当初の厳かなテイスティングの舞台が、瞬く間にチャンポン酒をグイグイ浴びるような盛大な宴会へと移行して、その極め付きが「森の食文化研究会」の発足だった。発起人のSさんによれば「生命の原点である食を森の視点でとらえるという素晴らしいコンセプト」なのだという。そして本会の名誉会長が、何とこの俺で、会報も出すことが決まった。みんなアルコールでオクターブが上がって「行け行けドンドン!」の有様だったから、全てが満場一致の即決である。(今の政治家にも見習ってもらいたい)

 その会報第1号がUさんの手で昨年9月に発刊されて、2号の当番が自分である。ぐずぐずしているうちに年末を迎え、会員諸氏にお助けの原稿急募をかけて、今日やっと第2号が完成してメールで送ることができた。バンザーイ!

 もちろん、自分も原稿を書いたが、記事にするために昨年の日記を捲って1年間の森暮らしの日数を調べてみた。おやじ山での暮らしが137日間、森林調査で全国の山を歩き回った日数が64日間、合わせて200日ほどを森の中で過ごしたことになる。

 そして明日(1月10日)からまた森林調査の仕事で出張する。九州2県を回ってから山口に渡る17日間の山旅である。またどんな森に会えるか、実に楽しみである。
2012年1月30日(月)晴れ
佐賀・福岡・山口の山旅(プロローグ)
 3日前(27日)に山口から自宅に戻った。佐賀・福岡・山口と3県を歩き回って森を調査する17日間の山旅だった。寒波襲来で終盤の何日かは雪に見舞われたが、九州2県はHさんと、山口ではKさんと、いずれも気心の知れたお二人とペアーを組んで楽しく仕事をすることができた。

 そして今回の旅でも、様々な風景や人との出会いがあった。
 佐賀では古伊万里焼きの窯元が軒を連ねる郷に足を踏み入れ、福岡の森では穴に落ちたタヌキを助けたり、そして何よりも、昔3年間住んでいた福岡の団地を33年ぶりに訪ねることができ、そこで知合った古い友人達とも感動的な再会を果たすことが出来た。

 最後の山口県は、昨年の調査に続いて2度目だったが、山間地の美しい石垣の風景に魅了され、「おはん」の作家、宇野千代の故郷岩国や、昨年の大震災時のテレビコマーシャル<こだまでしょうか>で大きな反響を呼んだ童謡詩人金子みすゞのふるさと、長門の国仙崎の町にも立ち寄ることができた。

 この森林調査の仕事は、険しい山道を一日に1万3千歩も歩き通したことがある厳しい肉体労働だが、やはり仕事をやり終えた後の達成感は何ものにも替え難い。そして見知らぬ土地を、点から点の直線ではなく、面でくまなく動き回ることに妙味があると思っている。そこには驚くような出会いや発見があり、喜びと感動があるからである。

 そんな様々を、旅先でのメモを頼りに、「日記」に少しずつ綴っていきたいと思う。

「森のパンセ−その52」<文化を繋ぐ風景>をアップしました。日記と合わせご覧下さい。