昨夜も一晩中雨が降り続いた。
今日は遠くからの気のおけない友人達がおやじ山に来てくれるので、5時過ぎにテントを出て迎える準備をする。まさに論語にある「有朋自遠方来 不亦楽」の心境である。
早朝に24時間営業のスーパーに買い出しに行ったが、途中でパラパラと霰が降り始め、そのうちフロントガラスの前が見えなくなる程の大粒の雹がバラバラと車に当たって、屋根が凹むかと思った。
こんな嵐の日は自慢の薪ストーブで歓待しようと、友人達が来る前に小屋に行ってストーブに火を点けてキャンプ場に戻った。しかし帰りの山道はビショビショの水溜りや流れになっていて、客人達はさぞ閉口するだろうと大いに気が揉めた。 テントに着くと既に友人達が到着していて賑やかな笑い声である。きのこ狩りデビューのT君も雨具でしっかりと身支度を調え臨戦態勢で待ち構えていた。
8時半過ぎ、いよいよきのこ狩りに出掛けようとみんなが車に乗り込んだ時に、ここ東山ファミリーランドの職員として勤めている同級生のガンちゃんが黄色い雨合羽を着て出勤してきた。「あ、Yさんだ!」とFさんがドアを開けて声を掛け、ガンちゃんも車の中を覗き込んで久々に顔を合わせた同級生達に会ってビックリして笑っていた。この秋でガンちゃんは定年退職になるが、いつもニコニコ顔のガンちゃんには本当にお世話になった。
見晴らし広場でジカボウ、山道の松林の中でキンロクをいくらか採りながらおやじ小屋へ向った。11月に入ってやはり秋の色が一気に深まった山の景色である。
そしてストーブで暖まった小屋に入り込んで、T君からのプレゼントのアンテークランプに火を灯した。T君は「このランプ、納まる所に収まったなあ」と言ってくれたけど、本当にオレンジ色の美しい炎はおやじ小屋にピッタリだった。
地元に住んでいる同級生のA君がそろそろキャンプ場にやって来る時間が近づいて小屋を後にした。寄せ木細工で作ったプロ顔負けの爪楊枝入れをお土産に持って来てくれたKさんのご主人は、下山途中で高級爪楊枝の材になるオオバクロモジの木を伐りとっていたが、このようにどんどん山の材を利用することで、昔通りの美しい里山が生き返るのではないかと思った。
今や毒きのこ扱いでも屁とも思わないKさん達がカタヒラ(正式名:スギヒラタケ)を採っている間に、一足先に下山した。
下の広場では「長岡きのこ同好会」の人達が鑑定会と豚汁パーテーを開いていた。(何とカミさんやMさんも一緒に混じって豚汁を啜っている)Sさんご夫婦に「是非お友達の皆さんもここに来て一緒にどうぞ」と誘われたが、既にテントでキノコ汁が出来上がっているとカミさんが言うのでご好意を断ってテントに戻った。
A君も雨の中を歩いて来て合流しキッチンテントで楽しいキノコ汁パーテーが始まった。Kさんは「あさひ日本酒塾」OBのA君と俺に向って「二人とも朝日酒造に操を立てなくていいの?」と冗談を言いながら六日町の銘酒「鶴齢」(かくれい)をみやげに持って来てくれた。「おいおい、二人で朝日山を裏切って、隠れい(鶴齢)て飲もうぜ」とA君が上手い事を言うので、直ぐに同調してこれから車を運転して帰るKさんのご主人やT君を尻目に昼の茶碗酒を楽しんだ。
新幹線で帰るFさんを車で送ってT君も帰り、Kさんご夫婦も市内で降ろすA君を乗せて帰って行った。カミさんと一緒に駐車場で手を振ってKさんの車を見送り、それが見えなくなると高台に登って、今度はバス通りを走り去る車に向かって大きく両手を振った。
「帰ったね・・・」
「ああ、楽しかった・・・」とカミさんも小さく呟いた。
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