日本のチベット2(高知県大豊町八畝) |
目の前の風景にただ呆然として立ち尽くしていた。山の斜面にへばりついた村の姿に息を呑み、 目をすぼめて家々の姿をなぞっては、溜息をついた。そしてこの風景を目にすれば、生涯この土地 を一度も離れず、ひっそり逞しく生きている人びとが少なからずいる筈だと理解できる。「土着」とい う言葉が頭をよぎり、そのまさに地べたの土とともに己が命をつないで行くことが、実に確かで尊厳 な営みであることが、この風景を見て実感できたのである。 人間の生き様もまた、山野に生える巨木と同じようなものではないかと思った。浮薄に動き回らず 一所(ひとどころ)でじっと風雪に耐えながら生きてこそ、その人品骨柄に確かな風格が備わるので はないだろうかと。 |