気候危機の克服-「生命愛の意識」(自然に適応し共存する能力)
2023年は観測史上最も暑い一年だった。海水面の温度も過去最高で状況は危機的といえる。国連のグテーレス事務総長は「地球沸騰化の時代が到来した」と指摘。19世紀の産業革命以降に気温は1.2度上昇し、異常気象や災害により食料や水が不足し、そのためインフレも恒常化し、難民も増えるだろう。そして、ますます経済格差や不安が広がり、移民排斥を訴える右派ポピュリズムが力を増し、民主主義も揺らいでいく。いわゆる複合危機の進行である。
以下は朝日新聞1月7日に掲載された経済社会理論家ジェレミー・リフキン氏と東京大学大学院准教授斉藤幸平氏(経済思想家)の対談の抄録である。(朝日新聞「気候危機と人類の今後」より)
(リフキン) 産業革命を起点とする、効率と生産性を追求する「進歩の時代」は終焉し「レジリエンスの時代」に入った。レジリエンスとは一般には「回復力」という意味だが、回復だけではなく、自然に適応し、共存する能力がレジリエンスで、今後の人類に必要な能力である。人類は地球環境を支配するのをやめ、自然のほうに適応しない限り、存続は危うい。それが「レジリエンスの時代」だ。天然資源を収奪し、その上に豊かさを築いてきたのが「進歩の時代」だったが、そのツケが限界に達している。
私は(リフキン)自然をお手本にして「脱成長」の先のステージを考えたい。自然は生産性ではなく「再生力」、効率ではなく「適応」によって成り立っている。(*「」は筆者)人類がこの自然とともに栄えることができるかどうかだ。人類が地球を壊さずに他の生物と一緒に生きる道を考えたい。
人類は他者に共感できる生物である。他の生き物に対しても発揮される共感力の進化を「生命愛の意識」と呼ぶのだが、これこそが気候危機を乗り切る希望だと思っている。生命愛は、平等のいちばん純粋な表現でもある。
(斉藤幸平) 地球の限界を超えないように暮らすためには、利潤ばかり追求する資本から、社会の共有財産である「コモン」を取り戻すことが重要である。その際、資本も国境を越える時代だからこそ、コモンを民主的に管理すべきである。電気や水、医療、公園などもコモンであり、協同組合とならんで地方自治も重要である。水道を民営化するか住民とともに公営で運営を続けるか、公園の樹木を伐採するか、しないのか。そうしたコモンの共同管理に参加することで、人々の自治能力が向上し、民主主義が鍛えられるのです。
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