越後長岡おやじ山倶楽部
おやじ山通信 第4号
2021年11月14日
11月11日の午後、山から下りました。9日に長岡入りした佐藤憲隆さん、辻さん、久保さんの旧知の仲間三人と一緒の下山で、この日の午前中から全く休み無しに働いて貰い、ようやく午後1時過ぎに「おやじ小屋」「風の小屋」の雪囲いを済ませました。
そしていつものように小屋に向かって別れの挨拶をし、おやじ山の出口(入口)の坂の上に立って再びおやじ山を振り返り、大声で「ありがとうございましたぁ~!」とお辞儀をして山を下りました。
伊豆と神奈川から来て呉れた三人の仲間の滞在中は生憎の雨模様でしたが、その雨がぐずぐずと停滞していた生半可な秋の季節を一気に深めてくれました。11日の午後に山を下ったその道すがらの風景は、しっとりと湿り気を含んで幽愁を帯び、まさにこの時期通りの晩秋と呼ぶにふさわしい風景でした。
<おやじ山の早春>
今年最初の山入りは2月25日でした。3月12日までおやじ山で過ごしましたが、入山当初のおやじ山は1.5~2メートルの積雪、おやじ小屋の回りでも1メートルほどの雪が残っていました。 この時の山入りは、積雪期の間にキノコのホダ木用のコナラを伐り倒すのが主な目的で、長岡の仲間の皆さんが集まってくれて、3本のコナラの伐倒と玉伐りでホダ木を30本ほど作りました。
<おやじ山の春>
2度目の山入りは4月6日でした。関東から新潟県に入り国道17号線を走り出した時の風景はまだ早春の感じでしたが、長岡の街に入るとソメイヨシノはちょうど満開で、おやじ山の麓の東山ファミリーランドに着いて小屋に向かう途中の山道では、オオヤマザクラ、タムシバ、キタコブシは満開、トキワイカリソウ、オオイワカガミもほころび始
めて花々の大歓迎を受けてのおやじ山入りでした。
おやじ池ではクロサンショウウオが盛んに産卵したくさんの卵嚢が池に浮いていました。そしてカタクリ広場では、4月12日に満開を迎えて、まさに大地がピンクに染まり、翌13日にはおやじ小屋の前の斜面で、カスミザクラの大木が満開となって、その豪華絢爛な花姿は、毎年見慣れているとはいえ息を呑むばかりでした。
4月17日には神奈川からの5人の森林インストラクターの仲間がおやじ山に来てくれました。「おやじ山花ツアー」として8年前から続けている恒例行事ですが、今年はコロナ禍で人数を限っての開催でした。お目当てのカタクリは既に終わり近くでしたが、ショウジョウバカマ、イカリソウ、マキノスミレやナガハシスミレなどなど、さすが森林インストラクターの面々だけあって、雨の中熱心に観察していました。
5月はおやじ山が一番賑わう季節です。オオルリ、キビタキ、クロツグミ、サンコウチョウとおやじ山を訪れた野鳥たちが自慢の喉を競い合い、おやじ小屋の前に掛けられたムササビ巣箱からは、今年生まれた子ムササビが頻りに顔を覗かせて「世間」を知りたがり、5月18日には最後の子フクロウがクルミの大木に掛けた巣箱から巣立っていきました。
おやじ池でモリアオガエルが産卵を始めるのもこの頃からです。
そして今年は、おやじ山自慢のトケンランが5月25日に満開日を迎えました。年々株数が増えて、既に数百株の花園になりました。塩沢にある「野の花館」の外山康雄画伯がおやじ山のトケンランを絵に描いて下さり、その絵が来年の「2022年外山康雄野の花だよりカレンダー」の5月を飾りました。
6月に入り、風の小屋のフロントテラスにデッキを作りました。雨の日でもここに座って食事をしたり談笑したりとできるようになりました。そして11日には、西山さんからこのデッキとぴったりマッチした「仙人椅子」のビッグプレゼントがありました。
(6月13日にコロナのワクチン接種を藤沢市で受けるために一旦山を下りて自宅に向かいました。そしてお盆前には再び戻ってくるはずでしたが・・・)
<おやじ山の秋>
3回目のおやじ山入りは9月24日でした。本来ならば神奈川で2回のワクチン接種を終えて山に帰って来る予定でしたが、東京オリンピックを境に首都圏で新型コロナの感染爆発が起こり、緊急事態宣言解除のギリギリのタイミングまで山に戻れませんでした。
この秋に過ごした49日間のおやじ山暮らしを振り返ると、やはり忘れられない様々な出来事がありました。
昨年来の新型コロナに翻弄されて、おやじ山を慕って毎年訪ねて来てくれていた古くからの友人達のご無沙汰が続いていました。そしてようやく、今年3回目の滞在中に、遠来の友人達を迎える事が出来たのです。
10月9日には首都圏に住む高校時代の同級生5人と地元同級生3人がおやじ山を訪ねてくれて、風の小屋に初めて集って1年経った「新築の風の小屋」の落成を皆で祝ってくれました。
そして、11月9日に長岡入りした佐藤憲隆さんと、翌10日にご実家のある信濃大町から娘さんの介添えで来られた太田さん。このお二人の来訪ほど嬉しかったことはありません。佐藤さんは3年ぶり、太田さんは、多分5年ぶり位になるかもしれません。お二人とも現在も闘病中であり、「夢にまで見たおやじ山に何としても行きたい」と病をおしての来山でした。おやじ山主としてまさに冥利に尽きる慶事でした。
おやじ山の今年の秋は、例年に比べて随分暖かでした。そのせいか入山当初から10月中旬まで夏の名残がだらだらと続き、10月17日からの雨で本格的な秋を迎えました。翌18日にはおやじ山の気温は4℃まで下がって、風の小屋のストーブの炎がようやく季節に馴染みだしました。
気候の変調はキノコの発生にも影響したようで、今年はキノコが大不作でした。長岡の山では普通に生えるアミタケ、アマンダレ(ナラタケ)、シメジ類の発生はおろか、様々な毒キノコも殆ど目にすることがありませんでした。
その中で「アッ!と驚く」出来事は、風の小屋から目と鼻の先に「舞茸」の立派な大
株が発生したことです。入山初日の9月24日に小屋の窓を開けて発見して、26日には仲間達が集まって収穫し、皆で大いに舞い踊りました。さらにこの舞茸菌を繁殖させておやじ山を「マイタケ山」にすべく、9月30日には近くのミズナラの立木を伐り倒して玉伐りし、舞茸が生えていた周囲にずらりと寝かせて数年後の一攫千金を狙いました、が・・・・?
そして我が倶楽部の本題山施業は、今年度から新たな段階に入りました。おやじ山に隣接する長岡市の山林(東山ファミリーランドの自然観察林&保安林)約1.5ヘクタールを今後3年間当倶楽部で整備することになりました。
今回の施業では、10月14日の定例作業日に、西山さんが鮎の塩焼きや「おもいのほか」(食用菊)のおひたし、佐藤さんからは栗ご飯の提供があり、今年度最後の作業日となった11月4日には、西山さん提供の「きのこ汁」を皆で食べて打上げとしました。
以上が2021年のおやじ山の概況です。皆さん、ありがとうございました。
おやじ山主 関 孝雄
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