森のパンセ   山からのこだま便  その110(2020・12・16)
おやじ山通信第3号

 今年、山を下りる前に230日の山暮らしを振り返って書いた文章です。写真はすべて健介さんが撮ってくれたものです。

 越後長岡おやじ山倶楽部

  おやじ山通信 3

 

 

                              20201028

 

 

 皆さん、お元気ですか?おやじ山の関です。神奈川会の皆さんにはすっかりご無沙汰してすみませんでした。 おやじ山通信第3号をお届けします。

 

 今、おやじ山は日一日と秋が深まり、木々の葉も日増しに艷やかさを増しています。私も季節に追われるように数日前から小屋の雪囲いの支度を始めて、いよいよ山を下りる準備です。今年のおやじ山滞在日数を数えて見ると、山入りの日が226日、そして今年の下山予定日が1029日、この間所用で藤沢の自宅と三度行き来した延べ日数17日間を除くと、何と230日のおやじ山暮らしとなります。こんなに長くおやじ山に滞在したのは、もちろん今年が初めてで、コロナ禍のせいで神奈川に帰りづらかつたこともありますが、何と言っても、佐藤さんご夫婦を初め、西山さんや健介さん、山本さん、中澤さん、紀子さんらの地元長岡の素晴らしい仲間たちの青天井のご親切があったからです。

 

二月

 山入りが2月にできたのは、今年の冬が記録的な小雪だったせいですが、入山した直後の27 28日とおやじ山は真っ白に雪化粧を施しました。

三月

 3月に入つても季節は冬のままで、ようやく月末近くの28日になつて、木々の新芽が一斉に芽吹いて季節は春になりました。そして331日には、カタクリ広場は鮮やかなピンク色の絨毯が一面に敷き詰められて、その上をギフチョウが優雅に飛び交うカタクリの満開日となりました。


四月
 しかし4月には、東京、神奈川などの首都圏に続いて全国にも新型コロナの緊急事態宣言が発令されて、今年で7回目となる41112日に予定していたおやじ山花ツアーが中止となりました。


五月

 5月のおやじ山は、生き物たちの躍動の季節となりました。おやじ小屋の前斜面のホオノキに掛けた巣箱からは、今年生まれた子ムササビが頻りに顔をのぞかせ、クルミの大木に掛けたフクロウ巣箱からは、まさに55日の子どもの日に子フクロウの1羽目が巣立ち、その後1週間で3羽が巣立って行きました。更に55日からはおびただしい数のアズマヒキガエルがおやじ山の池や水溜まりに集まって来て、満月を迎えた57日に大産卵となりました。そして負けじと、おやじ池のモリアオガエルも、519日の初産卵を皮切りに612日まで6回の産卵を繰り返しました。

 特筆すべきは、キョロロことアカショウビンがおやじ山に居ついてくれたことです。数年前からおやじ山でキョロロの鳴き声を、わずか年12回程度聞いてはいたのですが、「まさか、おやじ山にアカショウビンが 」と、自分の空耳のせいだと思っていました。

 今年は522日の早朝、おやじ小屋と風の小屋の間の平地に

仮住いのテント泊をしていたのですが、そのテントの真上で

早朝に「キョロロ!」と大声で鳴かれてびっくりして飛び起きました。テントから目と鼻の先のおやじ池のモリアオガエルを狙っていたのでしようか。おやじ山でアカショウビンの鳴き声を耳にしていたのは715日まででしたが、529日には、健介さんと黒崎さんがフクロウ巣箱のクルミの大木に止まっていたアカショウビンの撮影に成功しました。(一旦はアカショウビンの写真を越後長岡おやじ山倶楽部のホームページにアップしたのですが、アカショウビンが居ると知るや野鳥マニアがドッと押し寄せて来る、と黒崎さんから忠告されて、削除しました)

六月

 新潟県の梅雨入りが発表されたの611日です。そして梅雨明け宣言が82日。何と53日間もの長い梅雨でした。新潟気象台は、観測史上最も雨が多い7月、と発表しました。鬱陶しい梅雨期間でしたが、おやじ山では6月下旬から715日頃までたくさんのホタルが飛び交いました。そして79日には恒例のホタル観賞会を開催しました。その日の数はおよそ30頭。幽玄の世界に酔った梅雨の夕べでした。

七月

 おやじ山の春の自慢がカタクリの花なら、夏の誇りは、何と言ってもヤマユリです。夏草の繁みの中で、濃厚な香りを放ちながらひっそりと佇む花姿はまさに妖艶と表現するしかありません。おやじ山の花の移ろいを象徴的に表現すれば、春はカタクリのピンクの優雅。梅雨時はエゾアジサイ、ノハナショウブの紫の気品。そして盛夏はヤマユリの白の妖艶となるのでしょうか。


八月

 おやじ山の夏は梅雨明け2日後の84日から始まりました。ようやくギラギラとした真夏の太陽が降り注ぎ、私の大好きな季節が到来しました。

九月

 9月に入り、風の小屋の建築が急がれて来ました。今年こそは完成させなければと、落成式を103日とタイムリミットを定めたからです。母屋完成前にと、またまたいつもの横道に逸れて、まずは小屋前のテラス造りに何日か費やし(96日完成)、翌日からはいよいよ最後に残った風の小屋後方壁面の仮付けしたトタンを全て外してログ積みの準備をしました。


 すっかり空いた西側の風景を小屋の中から眺めて見ると、なかなかの景色だと改めて気付きました。910日の午後からは激しい雷雨となったのですが、小屋の床にどっかとあぐらをかいてビール片手に若杉の森に突き刺さるような雨を飽かず眺めていました。この日で空気が入れ代わり、おやじ山の夏が終わりました。

 928日には、仲間たちが風の小屋の前庭に新しい薪小屋を作ってくれました。今までの建築ノウハウの積み重ねで、僅か1日で立派な薪小屋が完成です。

十月

 風の小屋の建築は猛烈なラストスパートとなり、ついに落成式前日の102日、積み上げた壁ログの最上部に取り付けた杉の背板に最後の釘をハンマーで打ち付け、風の小屋を完成させました。終わって時計を見ました。午後455分でした。

 振り返れば、風の小屋の建築に着手した日が2017527日でした。この日カミさんと二人で地面にロープを張って、ブロック基礎のラインを石灰で引いたのです。それから完成まで1,225日、何と34ヵ月と7日かかったことになります。


 翌10月3日の落成式は、新型コロナ禍の情勢を考えて長岡在者を中心に11人だけの参加で行いました。佐藤(憲)さん、辻さんからは祝い酒が、忠司さんからは豪華なお花が届き、その前でご住職の日野さんから新築祝いのお経をあげて頂きました。最後におやじ山テーマソング故郷を皆で高らかに合唱したことは言うまでもありません。

 この小屋の完成までには本当に多くの皆さんのご支援と協力を頂き、 その方々にぜひとも参加して頂きたかつたのですが、コロナ情勢下で残念ながら叶いませんでした。事態が落ちついた暁には、どうか風の小屋を見て頂きたいと思っています。

 明日、山を下ります。それでは皆さんご機嫌よう!
                                


1028

越後長岡おやじ山倶楽部

代表 関孝雄