山のパンセ(その14)

おやじ山の花の移ろいー立夏の頃

 今日は510日。立夏も過ぎてそろそろおやじ山の春が終わりに近づく季節である。この時期のおやじ山の花の移ろいを書いておこうと思う。
 先ず今の山で目立つ白い花は、ウワミズザクラとマルバアオダモである。いずれも遠くから見ると綿毛のようなふさふさとした感じの美しい集合花である。そして明るく開けた斜面にはミヤマガマズミの可愛いらしい玉花が盛りである。ナナカマドはどの樹も今年はびっしりと白い花をたくさんつけている。さぞかし秋には豪華な実生りになるだろう。目立たないがミヤマザクラも幾分暗い森の中でひっそりと白い花を咲かせている。
3月下旬から4月上旬の春一番の白い花、タムシバやオオカメノキ(ムシカリ)の輝くような白に代わって、この時期は落ち着いた白が新緑の中に佇んでいるといった風情である。今はタムシバもオオカメノキも花の時期を終えて、春の陽を一杯に浴びながら大きな葉をのびのびと展開している。さらに白い花では、ホオノキの花が枝の先にラグビーボール形の蕾を見せ始めた。
 赤やピンク系の花では、ヤマツツジが満開である。そして麓から山麓にかけて徐々にタニウツギが賑やかに駆け上ってきた。この花が咲くとワラビの盛期である。それからヤマザクラの白い花が散り葉桜となったこの時期、代わってオオヤマザクラ(ベニヤマザクラ)が奥山で満開である。浅緑の樹海の中にこのオオヤマザクラの明るいピンクがぽっかり浮かぶ姿を見ると、つくづく大自然の中に身を置いている己の幸せを感じてしまう。麓ではちょうど遅咲きの八重桜が道端に花びらを撒き散らして絢爛の一時を閉じた時期である。
 紫系統ではユキグニミツバツツジがしぼみ始めて、杉の大木に巻きついたフジが霞んだような紫色を見せ始めた。未だ花の盛期には
1週間程かかるかもしれない。
 おやじ山の春は次第に緑が濃くなって、いよいよ夏へと向かう端境の時期である。
(2007年5月10日 記)
  
      ウワミズザクラ               ウワミズザクラ(花穂)              
  
       マルバアオダモ               ミヤマガマズミ
 
      ミヤマザクラ                     ナナカマド

  
        ホオノキ                   ヤマツツジ                   
  
       タニウツギ                  オオヤマザクラ
 
     オオヤマザクラ                小川に散る八重桜の花びら
 
  散り始めたユキグニミツバツツジ                フジ