山のパンセ(その19)

おやじ山の秋・2007

<その3−錦秋ー>

 今年の秋は43日間おやじ山で過ごした。「43日間もどうして山に居るんですか?」と質問されると困ってしまう。例えば、会社を定年でリタイアした人が自宅にずっといて「あなた何でそこに居るんですか?」と尋ねられたら「えッ?ここが俺の家だから・・・」ともぞもぞしながらもこう答えざるをえないだろう。そこで今回は冒頭の質問に対する気の利いた答えを考えてみた。「おやじ山で秋を待っていました!」な〜んちゃって・・・
 と言うほどに今年は秋の来るのが遅かった。10月に入ったというのに山は猛々しいほどの緑で、幾分秋らしく感じはじめたのは10月の14、5日頃からである。それまで温かかった気温も朝晩にはようやく例年並みに冷え込み、空にはウロコ雲が見えるようになった。そしてこの頃から色づき始めた木々の葉は24、25両日のこの秋一番の冷え込みで(9度まで下がった)一気に紅葉・黄葉のもみじ競走となった。
 10月25日の日記メモにはこう書いた。「ようやく一部の木々の紅葉(黄葉)が進む。ヤマウルシの鮮やかな朱色とヤマノイモの黄色が緑の森の中で一際目立っている。紅葉した木:ヤマザクラ(殆ど落葉)、ヤマウルシ、ナツハゼ、 黄葉した木:カツラ、ウワミズザクラ、ヤマノイモ、 一部紅葉した木:ミヤマガマズミ、オオカメノキ、ヤマモミジ、サラサドウダン 一部黄葉した木:マルバマサク、コシアブラ」
 10月も末になると山は急に静かになった。なかなかやって来なかった秋にいつものもみじ狩りを断念した家族や不作のキノコに見切りをつけたキノコ名人達も多かったかも知れない。そして11月に入って、パタリと人の姿が消えた山は一気に色づき出した。満を持したようにハウチワカエデの紅が燃え出し、クロモジの葉が黄に染まり、アオハダの木が真っ黄色に輝き出した。そしてウリハダカエデの赤や黄色の何と艶やかなことか! おやじ小屋への山道を毎日通いながら、「俺は何ともったいない贅沢をしてるんだろう」と全く独り占めの錦秋につくづく思ったものである。(2007年11月20日 記)

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