| 2025年12月11日(木)曇り~晴れ |
| 紆余曲折を経て至り着ついた人 |
<Seize the moment>という英語のフレーズは、イチローがマリナーズ球団殿堂入りセレモニーで語った言葉で、以来マリナーズの標語的な存在だという。「チャンスをつかめ!」「一瞬一瞬を大切に生きろ!」という意味で、日本の諺なら「機を見るに敏」、「ボーッと生きてんじゃない!」のチコちゃん言葉にあたるかも知れない。
しかしつらつら自分の人生を振り返ると、これとは正反対、とまでは言わないが何か違う生き方をしてきたなと思う。目の前のチャンスに飛び付くことが「こすい」(ずるい)というか「卑怯」というか、俺にとっては後ろめたい感情があった。貧乏所帯でいつもお袋からなじられていたクソ真面目で不器用な人生を貫いたおやじの性格を受け継いだのかも知れない。それから多分、若い頃の愛読書、アンドレ・ジッドの「狭き門」<汝力を尽くして狭き門より入れ>に感化されたせいもある。
朝日新聞一面の哲学者鷲田清一氏の連載「折々のことば」は、毎日楽しみに読んでいる。その12月9日の朝刊には漫画家さくらももこ氏の随筆集『おんぶにだっこ』からの紹介があった。
『知識は役に立つが、あくまで道具にすぎない。それを使いこなすのが知恵だ。それは「面倒臭くても辛くても、物事に向き合わなければ得られない」もの。紆余曲折を経てそこへと至り着いた人は美しい。逆に知識だけ増やし、小手先ばかり器用な人は、自分には「汚い大人」に見える。』
Seize the moment(機を見るに敏)でなくていい。不器用であってもいい。「紆余曲折を経てそこへと至り着いた人は美しい」に賛成である。
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