2025年5月4日(日)雨~曇り |
おやじ山の春2025(「水穴」のコゴミ採り) |
やはりこの時期になると、昔おやじに教えて貰った山菜の宝庫「水穴」に行きたくなる。山菜場所としては奥山に当たるが、今まで何十回となく通って一度も裏切られたことがない。時期がずれて狙った山菜が期待通りに採れなくても、代りの何かでそこそこ山菜リュックが満たされるのである。そのたびに「おやじのお陰だなあ~」と思う。「今日俺がここに来るのを知っていて、おやじがとっておいてくれたんだ」とも思う。
あいにくの雨だったが、朝5時半におやじ山に行き、風の小屋でコーヒーを沸かして昨日買っておいたおにぎりを食って雨の止むのを待つ。7時に雨があがり、ブナ平コースの登山道から三ノ峠山を越えて「水穴」に入った。ここは広大なコゴミ畑の斜面である。既にコゴミのシーズンは終わり青々とした葉が斜面を広々と覆っていたが、今年は大雪のせいで所々にまだ雪が残っていた。狙いはその辺りで、雪解けあとには萌え出たばかりの瑞々しいコゴミがずらり頭をもたげていた。また「おやじのお陰だなあ~」と感謝しながらせっせと摘んだ。
リュックが重くなって山菜前掛けを外して打ち止めにする。そしてつくづく「水穴」の風景を眺め入る。「今日が最後かも知れないなあ~」とフッと思う。すると目にしている風景が何とも愛おしくて、いつまでも立ち去り難いのである。スマホで何枚も写真を撮って、ようやく「水穴」を後にした。
  
キャンプ場に帰り、2日の夜に長岡入りした娘と友だち、そしてカミさんを伴っておやじ山に戻った。娘と友だちは向かいの山菜山でウド採り、カミさんはその麓でフキを摘んでいた。明日帰る娘と友だちにはたっぷりのコゴミのお土産を持たせてやるつもりである。
   
オオバキスミレ トキワイカリソウ トキワイカリソウ オオタチツボスミレ
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2025年5月5日(月)曇り~晴れ |
おやじ山の春2025(カミさんの山菜採り) |
大型連休が明日で終わりなので、娘と友だちは今朝8時過ぎにキャンプ場を出て帰って行った。市営スキー場の下で娘たちを見送って、カミさんとおやじ山に行く。俺たちも明後日には帰るので、短かった今回の滞在を惜しむ様な気持ちで小屋向かいの山菜山に登った。カミさんは麓のおやじ沢沿いで何やら山菜採りの様子だった。
 
山菜山で最後の春を楽しみ、斜面を下りてカミさんのもとに行く。「何採ってるの?」と聞くと、「はい!」と両手にいっぱいのツル植物を俺に見せる。木の芽(ミツバアケビの芽)のつもりで摘んだようだが、これは山菜ではない別の植物である。本人はゼンマイだと思ったのだろうか、アブラコゴミに似たシダ植物も混じっている。
  
長年俺と一緒に山菜採りをしてきて既にベテランになったカミさんだが、今はまた子どもに戻ったようである。両手いっぱいに摘んだカミさんの収穫物を見ながら、涙ぐむ様な気持ちがわき上がって仕方がなかった。哀しみか、愛おしさか、その両方か・・・分からない。
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2025年5月6日(火)曇り時々雨 |
おやじ山の春2025(サシバが戻ってきた) |
娘たちが帰ったので、今日からはキャンプ場を撤収しておやじ山泊りにした。
それで風の小屋に布団を運び込んでいると、何と!猛禽類のサシバが向かいの山菜山の斜面を飛んで来て中腹のクルミの木に止った。見ているとコゴミの茂みに突っ込むや何かの餌を咥えて黄土沢の方へ戻って行く。おやじ沢と黄土沢の合流部には大杉が生えていて、どうやらこの杉の木に巣を作ったようだ。嬉しかった。
サシバがおやじ山で営巣していたのは2007年と2008年の春である。この時は新潟県中越地震で壊れたおやじ小屋の大改修をやっていて、連日ガンガン・ドンドンと大金槌を振るっていたにも拘わらず、すぐ側の若杉の森の一番太い杉に巣を作ってヒナを育てていた。何と17年ぶりの帰還である。
サシバは渡りをする日本のタカの中で最も人気がある。日本にいるのは繁殖期で冬は東南アジアに渡って行く。しかし年々その数が減ってきて、環境省のレッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類に認定されている。
長岡の東山で見かけるのは3月下旬から4月上旬頃で、先ず雄が「ピックィ~ッ!ピックィ~ッ!」(人によっては「キッス・ミィー!」と聞こえるらしい)と啼きながら飛んで来る。そして雌とペアになって営巣し、4月下旬から5月上旬に2~4個(だいたい3個)の卵を産む。ヒナが孵化するのは1ヶ月後の5月下旬から6月上旬である。そして更 に1ヶ月後の6月下旬から7月上旬に子サシバの巣立ちを迎える。東南アジアに帰って行くのは9月中旬から10月中旬頃。一度「水穴」の上空で北から南下してきたサシバの群れが東山のサシバを吸収しながら高々と旋回している姿を見たが、思わず我が子の旅立ちを見送る様な気になって、「さようなら~!無事に帰ってね~!」と叫んでしまった。
サシバがおやじ山に戻って来てくれたのは、おやじ山の生態系が豊かだということである。昨年からは市営スキー場で毎年開催されてきた「米百俵フェスティバル」が中止されたせいもある。嬉しい限りである。 |
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2025年5月7日(水)曇り~晴れ |
おやじ山の春2025(下山の日) |
下山の日である。短いおやじ山滞在だったが、明日からまた藤沢市のシルバー人材センターの仕事がある。
朝から布団の片付けや家に持ち帰る物をまとめたりして、11時半、何度も何度もおやじ山と小屋を振り返りながらおやじ山を出た。健介さんとSさん宅に寄ってお借りした物を返したりお別れのご挨拶をしたりして、それからやっぱり託念寺にも寄っておやじとお袋の墓にお参りし長岡を離れた。
関越道の越後湯沢インターで下りて国道17号線を走り、芝原峠~三国峠を越えて猿ヶ京温泉に到着。今日は少し贅沢して猿ヶ京ホテルの日帰り温泉に浸かる。いつもは町営の「満天星の湯」800円だが、猿ヶ京ホテルは若干高くて入浴料は1,100円である。しかしこのホテルの内風呂や露天風呂は全く贅沢としか言いようがない心地よさである。連休明けとあってか、風呂の客も俺の他一人しかいなかった。
ホテルを出て赤谷湖の畔で休む。夕暮れ時の静かな湖の上に、紐で連なった鯉のぼりがいかにも淋しげな様子で泳いでいた。夜10時半、帰宅する。
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2025年5月10日(土)雨 |
おやじ山の春2025(感謝状のお礼) |
山から帰って翌日からは早速シルバー人材センターの仕事に就いた。そして今日は土曜日、しかも雨で仕事は休みである。山から帰ってからずっとバタバタしていたが、ようやく少しのんびりした気分で朝の時間を過ごす。部屋から見える四十雀の巣箱では、この雨の中でも番(つがい)の親鳥が入れ替わり立ち替わりで巣箱に餌を運んでいる。そろそろヒナの巣立ち気配である。
今日はずっと気になっていた太田小中学校児童生徒・卒業生一同から貰った感謝状のお礼の手紙(写真入り)をパソコンで作って小池校長先生宛にメールで送った。お礼が遅くなったお詫びと、この手紙を子どもたちに紹介して欲しい旨の依頼である。これで校長先生との約束が果たせたと一安心する。(後日校長先生から、印刷して学校の掲示板に張り出したこと。卒業生のために学校のホームページにアップしたことの連絡があった。嬉しい限りである。)
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2025年5月14日(水)晴れ |
おやじ山の春2025(四十雀の巣立ち) |
今朝も自宅の居室から見える四十雀の巣箱で、親鳥が忙しく出入りしていた。それで午前中のシルバー人材の仕事を終えてから、この春採ったゼンマイの2度干しで庭に出ていると、四十雀の親鳥が巣箱のすぐ近くの枝に止まって頻りに啼いている。すると1羽目のヒナが巣箱から顔を出して巣立ちの恰好である。急いでスマホを取り出してシャッターチャンスをうかがう。「あ!飛んだ!」パチリ!上手く撮れない。続いて2羽目が顔を出す。パチリ!「ウ~ン・・・」という感じで、5羽ほどが飛び立った。その間40分ほどだっただろうか。親鳥もいなくなり、すっかり空になった様子の巣箱を見つめながら少し淋しい感じがした。
  
おやじ山では、子フクロウが巣立つ頃である。毎年5月15日前後とほぼ決まっている。今年は無事に巣立ってくれるだろうかと気がもめて仕方がない。それから、間もなく外山康雄画伯の一周忌を迎えるが、奥様や娘さんが野の花館の運営をしっかり引き継がれているとお聞きしている。ならば今年もおやじ山のトケンランを野の花館にお届けしなければと思っている。
夜になってカミさんに、金曜日の仕事が終わってから俺一人でおやじ山に行ってくると告げる。 |
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2025年5月16日(金)曇り |
おやじ山の春2025(再び山へ) |
午前中の仕事を終えて、午後1時半に自宅を出発する。圏央道~関越道と車でひた走って夜7時におやじ山の麓、東山ファミリーランドに着いた。日が長くなったとはいえ山の日暮れは早く、暗くなった山径をおやじ山に向かう。途中の西山コーナーで一休み。灯の瞬く長岡の街をしみじみと望む。「ああ~おやじ山に来たなあ~」と。7時半、風の小屋に入る。
やはり山は肌寒く囲炉裏に炭を熾して暖をとりながら酒を呑む。スマホのメールを開くと健介さんが昼おやじ山に来たようで、子フクロウが今日巣箱から顔を出していたようだ。(おやじ山はインターネット環境が悪くて、写真の表示はなかなかできない)例年通りに無事巣立ちの日を迎えたようでホッとする。仕事、長距離運転、歩荷と疲れているのにグズグズと酒を呑んで、寝たのは真夜中(?)頃である。 |
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2025年5月17日(土)曇り~雨 |
おやじ山の春2025(子フクロウの巣立ち) |
朝起きて早速山回りをする。昨日の健介さんからのメールで、子フクロウを見たというので巣箱の掛けてあるクルミの木を見ると、居ました!少し近づくと可愛い顔をぐるり回したり伸ばしたりして世間を確認し、俺の姿も興味津々の様子で見ている。健介さん報告の子フクロウか二羽目の子フクロウかは分からない。親鳥は?といつも待機しているすぐ近くの杉の木を見ると、やっぱり居ました! 俺が山に前から滞在していれば、親フクロウも「いつもの山主だ」と慣れて安心するのだが、見知らぬ人間には警戒してヒナを巣立たせない。それであまりクルミの木には近づかないで眺めていた。
おやじ池を覗くとモリアオガエルが2個目の産卵中だった。雌に何匹かの雄が覆い被さってエゾユズリハに白い卵塊を作っていた。これからのアカショウビンの飛来も楽しみである。
  
今日の天気予報はこれから雨で、朝の早いうちに小屋に置いてある道具を車に運んだり、家から持ってきた道具を小屋に運んだりと山道を往復し、風の小屋前の斜面の草刈りなどをした。
予報通り雨が降り出した。デッキの仙人椅子に坐って温かいコーヒーを啜りながら向かいの山菜山を見る。春の初めに山菜採りで這いずり回った斜面も、いまやすっかり青草に覆われて雨に打たれている。その時間の流れを感じながら、山菜山の風景をいつまでも眺め続けていた。
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2025年5月18日(日)朝曇り~午後雨 |
おやじ山の春2025(最後の山菜採り) |
居ても立ってもいられずに「水穴」と「黄土」に行くことにした。何故かこれが最後の山菜採りになるかも知れないと切羽詰まった気持ちだった。
5時に風の小屋を出てブナ平コースの登山道に入り、二ノ峠尾根の取っつきで息を整える。眼下の越後平野は水が張られた田圃がパッチワームのように広がって、その奥に弥彦と角田山が肩を並べて青く佇んでいた。
次兄が「千本ブナ」と名付けた尾根筋のブナに「おはよう!」と声を掛けて三ノ峠山の頂上に着く。5時40分、出がけには体調の不安があったが、幸いいつものペースである。そして6時、水穴に入りワラビ採りを開始する。
ここでのワラビを採り終えてもおいそれとは去りがたく、しばらくは水穴の風景を眺め続けていた。腰を上げて萱峠の登山道に戻り「黄土」を目指す。途中の山径ではピンクのタニウツギの花と今や絢爛と咲き誇っているミズキに惹かれて足を止める。これらは山菜シーズンの終盤を告げる花たちである。
  
「水穴」の広大な斜面 タニウツギとミズキの花 三ノ峠尾根から長岡の街を望む
黄土では最後の山菜場を愛おしむような気持ちでのんびりとワラビを摘んだ。広いコゴミ畑の斜面にポツポツを出ているワラビを摘みながら遙か昔におやじと一緒に休んだ場所まで登り、同じように腰を下ろした。そして長岡の街と「黄土」をやはり長い時間眺め続けていた。
午前10時、風の小屋に戻る。大いに疲れたが、今日は満足である。
 
「黄土」の風景 今日の収穫 |
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2025年5月19日(月)晴れ |
おやじ山の春2025(エピローグ-野の花館再び) |
下山の日である。朝起きておやじ池を覗くと、モリアオガエルが3度目の産卵をしていた。
風の小屋とおやじ小屋を片付けてから、今日野の花館にお届けするトケンランを丁寧に掘り採った。まだ蕾で開花まで1週間ほどだが、今日帰宅しなければならないのでやむを得ない。それからおやじ池の周りを草刈りして12時半に下山した。
  
モリアオガエルの卵塊 風の小屋を閉める 今日も親フクロウが巣箱近くに
高速道路には乗らずに国道17号線を走り、途中車を停めては残雪の山の風景を写真におさめたりした。
野の花館に着くと館内におられた奥様が小走りに寄ってきて「こうして何とかやっております」と丁寧に頭を下げられた。「まだちょっと早いですが、これから藤沢に帰るので持ってきました」とトケンランの鉢をお渡しする。これで今回山に来た宿題が果たせたとホッとした気持ちで野の花館を後にした。
 
越後湯沢から芝原峠の坂を登り国境のトンネルを越えて猿ヶ京温泉まで走り、いつもの「満天星の湯」で身体を休めてから、午後10時に自宅に着いた。
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