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おやじ山の春2023
2023年4月1日(土)晴れ
おやじ山の春2023(山菜山でフキノトウ収穫)
 早朝のまだ風が凪いでいる時間帯に枯れ杉枝や枯葉を集めて2回目の焚き火で焼却処分する。午前11時、風が出て来て中止。この時期は山火事が一番怖いのである。
 午前、カタクリ調査地の見回り。昨日最後に雪溶けしたポール半径1m内にはまだ芽出しは無かったが、その間際では既に可愛い幼芽が出ていた。コドラート内の芽出しは一気に50~100株程度となる。その他のカタクリ広場は、ご覧の通りである。
(下の写真6枚目より)

(写真左から)コドラート全体 前日(3月31日)雪溶け地点 調査地最小伸長(2cm) 平均伸長(3~4cm)

調査地最高伸長(5cm) カタクリ広場の盛んな芽出し 一番穴はほぼ満開

 昼、山菜山に入ってフキノトウの収穫。谷筋の残雪もはかなくなった。そして午後はフクロウの巣箱作り。
2023年4月2日(日)晴れ
おやじ山の春2023(タムシバの花)
 早朝、伊豆のKさんに送るため山菜山でフキノトウとコゴミの採取。そして午前中に突然訪ねて来たNさんに山を案内した後、一緒に山を下りて麓で見送り、そのまま石地海岸の雪割草の湯に行った。久しぶりにきらきらと光る春の日本海を見て与謝蕪村の俳句を思い出したりした。
 山に戻ったのは夕方の5時過ぎだったが、陽も長くなり山径で出会ったヤマガラを写真におさめたりタムシバの花に見とれたりした。タムシバの少しツイストした白練りの花は、俺が一番好きな花だ。特にまだ春が明けきらぬ頃のくすんだ森の風景の中でタムシバが咲くと、そこだけがポッと明るくなって見えるのである。

2023年4月3日(月)晴れ、朝の気温2℃
おやじ山の春2023(フクロウ啼く)
 明け方4時45分から50分まで、しばらく耳にしなかったフクロウが何度も啼いた。抱卵していた卵が孵化してヒナが生まれたのかもしれない。
 午前8時過ぎにカタクリ調査地の巡回。最後の雪解け跡からも芽出しが始まっていた。コドラート内の株数はおおよそ150株と推定する。即ち雪溶けから3日後にカタクリの芽出しが始まったことになる。

 
コドラート内の雪が完全に溶けてから3日後の様子。株数はおよそ150株

そして今日もギフチョウが頻りに舞った。おやじ山の入口の地蔵さん広場もカタクリが満開となった。
 今日は一日、風の小屋とおやじ小屋の片付けや掃除に明け暮れた。

ギフチョウの吸蜜 おやじ山入口の地蔵広場(カタクリ満開) 山菜山のコゴミとフキノトウ(手前)
 
2023年4月4日(火)晴れ
おやじ山の春2023(雪の水穴に入る)
 三ノ峠山頂上を越えて更に奥山に入った所に、おやじによく連れられて行った「水穴」という場所がある。奥山の厳しい所だがまさに山菜の宝庫で、広大なコゴミ畑の大斜面である。今日はそこの様子を見るための今年の初入山である。

 朝6時前に小屋を出て東の藪尾根を登り、ブナ平から三ノ峠山に通じている登山道に出る。山菜採りの本格シーズン前の山行で、まだ身体が慣れてないせいか心臓がバクバクして息が苦しい。二ノ峠直下の急坂を張ってあるロープを頼って喘ぎながら登りきると緩やかな登りの尾根道となる。しばらく行くと次兄が千本ブナと名付けた場所がある。どっしりとした親株の根元から何本もの太い幹が株立ちしているブナの巨木で、この一株だけで小さなブナ林を形成しているかに見える。ここに設えられたベンチで一服してから三ノ峠山の頂上を越え、それからは積雪が急に増えた下り坂の雪原を歩いて水穴の入口に着いた。
 水穴の斜面は一面の雪に覆われていた。しかし雪崩れたような途中の急坂を滑落しないように慎重にトラバースして水穴の源流部まで行くと、そこだけはすっかり雪溶けが進んで、鮮黄色のフキノトウと瑞々しいコゴミの群落があった。初物にしては予想外の収穫だった。
 もう山菜採りはこれで充分で、雪の斜面に大の字に寝転んで春の日差しを顔面に受ける。向かいの鋸山の稜線から昇ってきた眩しい太陽の光を、広大な雪原で独り占めできる幸せをしみじみと感じるのである。30分はこうして寝転んでいただろうか。午前10時小屋に戻る。

 水穴で採った初物のコゴミとフキノトウを宅配便で自宅に送るために山を下りた。つい先日まで単調なモノトーンの風景だった途中の山径では、ウリハダカエデの新葉が寒さでかじかんでいた幼い手の平を広げ始め、純白のキタコブシの花が森を明るく照らしていた。
 そして「お山」の参道では、名物の桜がちょうど見頃だった。

 まだ雪のついた「水穴」に入る  少し雪崩れた雪斜面をトラバースする

 
水が湧き出ている水穴源流部  広大な雪斜面を独り占めして大の字に寝る(正面の山は鋸山)

「水穴」からの帰り、「萱峠ハイキングコース」からの風景(白い山は右米山と左刈羽黒姫山)

 手前のウリハダカエデと奥のキタコブシ  「お山」の参道の桜
2023年4月5日(水)晴れ
おやじ山の春2023(福島江ノ桜)
 朝K子さんが来て一緒にカタクリのコドラート内の観察をする。先月31日の完全雪溶けから5日目で全ての株が葉身12㎝ほどの双葉となった。コドラート内の2株に花の蕾がついた。
   
 

 その後、Kさん、Hさんも山に来て、昼食後皆で谷川沿いまで下りてコゴミとフキノトウを採取する。
 午後6時からNさんご夫婦のお誘いでボランティアサポートのIさんも交えて長岡の街で会議(?兼飲み会)をする約束で、3時半に皆と一緒に山を下りる。ちょうど福島江の桜が満開で見事だった。この川縁に俺の母校「長岡市立東中学校」があった。その校歌には ♪川辺の桜 陽に映えて~♪とあったが、今母校の東中は別の場所に引っ越してしまった。でも校歌は昔のままなのだろうか?


 Nさんは農業・養鯉業・JAの役員・地元のボランティア団体代表などのほか、冬期シーズンには猟師に変身して獣を追いかけてる人で、「最近めっきりノウサギがいなくなったてい」と嘆いていた。おやじ山でも雪山で見るノウサギの足跡が殆ど確認できなくなっていたので、これはおやじ山だけの問題ではないと分かった。やはり地球温暖化の影響で自然生態系が狂ってきているのではないだろうか?
2023年4月6日(木)
おやじ山の春2023(栃尾・刈谷田川、カタクリ雪溶け6日で開花)
 昨晩は御神酒が入ったため市内某所の公共施設の駐車場に停めた車の中で寝たが、朝起きたらフロントガラスに「閉館後の駐車は禁止」の張り紙がしてあった。スミマセンでした。
 悠久山のコンビニでおにぎりを買って朝食。参道の桜が満開となって朝日に眩しく輝いていた。
 そのまま山には帰らず栃尾の「おいらこの湯」に浸かって疲れをとってから刈谷田川沿いをドライブする。途中「静御前の墓」があって「こんな所に!」とビックリする。ダムサイトまで行ってみたが、川沿いののどかな風景に癒やされた感じだった。

「お山」の参道桜  2枚目「刈谷田川」 3枚目「静御前の墓」 4枚目「栃尾の風景1」

栃尾の風景2:藤紫と深紫(こきむらさき)の美しいキクザキイチゲの群落に出会った
 山に戻ってコドラート内のカタクリ調査をする。雪溶け6日目で3株の開花を確認。ポールを立てた最深積雪場所の株にも蕾が付いていた。カタクリ広場全体ではほぼ満開状態で、今年も見事な花園となった。


 コドラート内雪溶け6日目(3株の初開花とたくさんの蕾がついた)

 この日のカタクリ広場(ほぼ満開となった)
2023年4月7日(金)小雨
おやじ山の春2023(カスミザクラ満開)
 コドラート内雪溶け7日目の様子である。たくさんの株に蕾が付いたが、小雨模様の中10株ほどが咲いた。

 
コドラート内雪溶け7日目の様子
 今年の雪で残念ながらおやじ小屋の直ぐ下の斜面にあったカスミザクラの大木が根こそぎ倒れたが、風の小屋の東斜面のカスミザクラが満開となった。早春の山を飾ったタムシバやキタコブシの花は1週間ほど前に見頃が終わって、今の時期はユキツバキが咲き誇り(今年のユキツバキは例年になく花色濃く美しい)、トキワイカリソウも見頃を迎えた。
 雨が小降りになった間隙をぬって小屋前の斜面を下り、谷川沿いで一握りのコゴミを採る。おひたしにして今晩の酒の肴にする。薄く霧がかかっている山菜山の斜面を見上げると、冬枯れていた裸木にぼんやりと煙ったような薄緑の色がつきはじめて、これも春の到来を実感する風景である。

 
茶色く冬枯れていた山が徐々に薄緑色に・・・
2023年4月9日(日)曇り、朝6時の気温0℃
おやじ山の春2023(春の淡雪、カタクリ観賞会)
 昨晩からの氷雨がミゾレになって、今朝起きたら山菜山の斜面が白く薄化粧していた。今日は地元の仲間達に「カタクリ満開だよ~!」とメールで呼び掛けていたので、Kさん、K子さんがそれぞれお友達を連れて山に来てくれた。Nさんはいつもの通り、今日は文旦の皮を砂糖で甘く煮込んだお菓子とお抹茶の道具一式をリュックに背負ってきてくれて、お陰でNさんが点てたお抹茶をしみじみと啜りながら山での風流な茶会のひとときを過ごすことができた。
2023年4月10日(月)晴れ、朝の気温5.5℃、日中は22℃まで上がる
おやじ山の春2023(三ノ峠山から萱峠ハイキングコース)
 朝5時起床。西の空を仰ぐと、終夜煌々と森を照らしていた満月が、月明かりを溜めたまま凛とした姿で薄明の空に浮かんでいた。
 今日は近々神奈川から来る森林インストラクター仲間を案内する三ノ峠山から萱峠コースの登山道の下見である。

 コスモス広場の登山道入口から、先ずは赤道コースを歩いて三ノ峠山まで登る。ここまでで約60分。途中の山道からは春日を受けた南蛮山が残雪を照り返して白い斑模様の山肌を眩しく浮き立たせていた。
 三ノ峠山の頂上からは緩い下り坂となる。雪溶け直後のぬかるんだ山道の脇ではカタクリが満開で、ギフチョウが頻りに吸蜜していた。
 観鋸台を過ぎると連続した雪道となる。コワ清水の水場まで歩いて広い雪原で小休止する。三ノ峠山からここまで約60分である。そして積雪がかなりある急斜面をストックを使って慎重にトラバースして竹之高地分岐へ、さらに枡形山の中腹萱峠分岐まで行って引き返すことにした。コワ清水からここまでも約60分で、コスモス広場のスタート地点から3時間の行程だった。
 枡形山の山腹は一面ブナの美しい森で、枝には出始めた新葉が薄く靄っているものの、ブナの根元はようやく根開きが始まったばかりで冬と春の境目といった風景だった。
 帰路は2時間でおやじ山に戻った。ああ、草臥れたあ~!
 
写真左から:南蛮山 三ノ峠山山頂 登山道脇のカタクリ群落

 
写真左から:ギフチョウの吸蜜 積雪の萱峠コース 枡形山のブナ林