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おやじ山の春2022
2022年4月7日(木)晴れ
おやじ山の春2022(山菜山初入山)
 風の小屋から望むと、谷向かいの山菜山の雪融け斜面に黄色いポツポツが目立ち始めた。フキノトウである。
 それで今朝起きてすぐ、今年最初の山菜採りで斜面に取りついた。山菜山斜面にはまだ斑模様に雪が残っていて、雪崩を警戒しながらの初物のフキノトウ収穫だった。この斜面に登ると、「ああ、今年も山菜シーズンが来たのだなあ」と決まってウキウキした気分になる。

 おやじ池ではクロサンショウウオが初回3月19日から6度目の産卵があった。

 今日は地元仲間のSさん、Kさん、Nさん、Yさんらが来て、おやじ小屋の雪囲いを解いたり、小屋回りに落ちた一冬分の大量の杉の枯れ枝葉を片付けてくれたりと、大助かりだった。
2022年4月9日(土)晴れ、気温20度
おやじ山の春2022(ギフチョウ初蝶)
 昨晩(夜中の0時頃?)フクロウの啼き声を聞く。今年も又おやじ山でフクロウが子育てをしてくれていると思うと嬉しい。

 今日も谷向かいの山菜山でフキノトウを採った。今年2度目である。ここ数日気温がどんどん上がり、雪解けが一気に進んで遠目にもフキノトウが盛んに萌え出ている様子が分かる。今回は斜面の天辺まで登ったが、まだ残雪がたっぷり残る急な頂上付近は、やはり怖かった。(慣れているこの斜面で今まで怖いと思ったことなど皆無だったが、今日の経験でやはり俺も歳をとったかと・・・)

 今日の午前中、おやじ小屋の前でギフチョウを見た。今年の初蝶である。カタクリ広場の雪も急速に融けて、最初の雪解け跡からは早くもカタクリが咲き始めた。

 昼、Kさんと娘さんのNちゃんが山に来てくれた。嬉しかった。「Nちゃん、また遊びに来てね~!」


 
山菜山斜面に萌え出たフキノトウ                谷筋にコゴミも出ました

 
カタクリ広場の雪解け進む                 雪解け跡からカタクリ咲く

風の小屋のデッキから夕日に映える山菜山を眺める(この風景を肴に酒を飲む至福の時間) 
2022年4月11日(月)晴れ、気温25度
おやじ山の春2022(Spring has come!あ、今まさに春が来た!)
 昨日、今日と気温が25度まで上がり、おやじ山に春が来た。ずっとずっと昔、英語の時間に習った<Spring has come. >(あ、今まさに春が来た!)である。

 山菜山の残雪も痩せ細り、今までくすんでいた斜面の裸木が俄に緑色を帯び、ギフチョウが昨日は2頭、今日は数頭が頻りに舞い始めた。フクロウが今まで以上に啼き声を交わすのは、抱卵していた卵が孵化しヒナ誕生の証拠である。そしてカタクリ広場のカタクリは、早5分ほどの咲き具合である。

 今までおやじ池にとうとうと注いでいた樋の雪解け水が止まった。谷川からホースで引く水道の開通を急がなくては・・・。

 
山菜山の残雪が痩せ細り、斜面の裸木がほのかに緑色を帯び始めた

 
カタクリ広場のカタクリ群落が5分咲きとなった

風の小屋に差し込む夕日で影絵を楽しむ(チョキ分かる?)
Spring has come!あ、今まさに春が来た!Spring has comに春が来た! 
2022年4月17日(日)快晴
おやじ山の春2022(カタクリ観賞会)
 森林インストラクター神奈川会の仲間達を募ってのカタクリ観賞会が、絶好の春日の中で開催された。コロナの感染が蔓延し始めた一昨年は中止のやむなきに至ったが、既に今年で9年目の恒例行事となった。今年の神奈川からの参加者は11名。そして遠路からの参加者の案内・接待役も兼ねて、地元のKさん、Nさん、Y子さん、K子さんらの山仲間も集まってくれた。

 既に前々日の15日には神奈川から第一陣の4人が長岡入りして、おやじ山倶楽部会員のOさんの案内で雪国植物園を見学。昨16日は同じ山仲間のYさんの案内で国立越後丘陵公園を見学。その後、神奈川からの第2陣とこの日の宿「山古志あまやち会館」で合流した。

(宿への途中案内した「越路町の運動公園の桜」と「山古志の棚田」風景)

 そして本番を迎えた今日、8時半に山古志の宿を出発し、おやじ山の麓「長岡東山ファミリーランド」の自然観察林の山径をめいめい写真を撮りながらゆっくり登り、11時半、先に山入していた地元の山仲間達の出迎えを受けておやじ山に着いた。折しも、おやじ小屋前のカスミザクラが満開を迎えていた。

 早速カタクリ広場へ皆さんを案内する。カタクリの咲き具合は・・・、盛期(満開)から2日か3日過ぎた程度か。4日前(4月13日)まで5日間続いた異常気温(20度から25度までの高気温の連日だった)に見舞われなければドンピシャリの見頃だったのに・・・といささか悔しい気持ちだった。

 宿からのおにぎり弁当と山仲間達が用意してくれたけんちん汁で昼食を摂った後、Kさんらの案内でおやじ沢に下りてコゴミ採り。さらにおやじ山で栽培している原木シイタケ採取を楽しんでもらった。

 午後3時。麓の駐車場で皆と手を振って別れ、一人おやじ山に戻る。楽しい3日間が終わり、まさに「歓楽極まりて哀情深し」である。


(以下、忠司さん、健介さんの撮影写真)

                カタクリ広場での集合写真

   カタクリ広場            おやじ沢のコゴミ採り        原木シイタケ採取

      風の小屋前で                      風の小屋前での集合写真

2022年4月20日(水)快晴
おやじ山の春2022(カスミザクラ朝日を受けて)
 黒く眠っていた山々が徐々に白んで、朝が来た。そしておやじ沢の奥から太陽が昇り始め、朝日を浴びた山の斜面が次々に覚醒して、春の歌を唄い出すのである。威風堂々と枝を広げたおやじ小屋前のカスミザクラはまさに満開時期を迎え、今日も朝日を受けて眩しいほどに輝いている。朝起きてからの楽しみは、この一時の桜見物である。

 
おやじ小屋前のカスミザクラ朝日を浴びて        夜桜とピンクムーンを楽しむ
 今日はKさんと友人のHさん、それからYさんご夫婦が山に来てくれた。Hさんは昨年も遠路遙々おやじ山のカタクリやギフチョウ撮影に通って来られたプロ級のカメラマンである。

 以下の写真は、Hさんについてカメラ修行中(?)だというKさん撮影のおやじ山のギフチョウ交尾の貴重なワンショットである。


 健介さん撮影(2022年4月20日 場所:おやじ山カタクリ広場)

2022年4月21日(木)晴れ
おやじ山の春2022(初ゼンマイ採り)
 春の山菜シーズンは、雪解け直後のフキノトウから始まり、続いてコゴミ、そしてゼンマイ、ウド、ウルイ、ワラビと続いてシーズンを終える。その間に木の芽、コシアブラ、タラの芽、シオデ(山アスパラ)、シドケ(モミジガサ)、ミズ(ウワバミソウ)などもあるが、これらは俺にとっては本命の山菜ではなく、まあ「今晩のおかずにチョット・・・」程度の格外品である。

 その本命のゼンマイがそろそろ出ている筈だと気になりだし、今朝は3時半に起きて夜明けを待ち、明けると同時に山菜山に取りついた。
 案の定、出ているではないか!それも極太の一級品のゼンマイである。株を細らせないように丁寧に間引きしながら摘んで、早速大鍋で茹で、蓙にばらまいて干した。

 ゼンマイは採った後の処理如何で、品質に大きな差が出る(・・・か、又はダメにする)。茹でるタイミング、干す日の天気、そして揉み加減である。
 おやじは、「沸騰した鍋にゼンマイをぶち込んで、再び鍋の底からフツフツと気泡が上がり、沸騰する直前にぐるりとゼンマイをひっくり返し、それから、イ~チ、ニ~、サ~ン・・・と10数えてから上げるのだよ」と教えてくれた。そして揉みに揉んでできるだけ早くチリチリに乾かすことである。よってプロは、晴れの日が何日か続く時以外はゼンマイを採らない。(この日の夜から雨が降り始め、翌日も雨だった。なかなかどうして・・・難しいのである)

2022年4月23日(土)曇り
おやじ山の春2022(2度目のゼンマイ採り)
 昨日の雨も上がり、再び山菜山に入った。一昨日はゼンマイ採りに夢中になって「何か忘れたことがあったなあ~」と気になっていた。後で考えたら、山菜山から見たおやじ山の風景をゆっくり楽しめなかった、と分かった。

 山に入ると、太くて採り頃のゼンマイがやたら目に入って、またまた山菜採りに夢中になりそうだったが、気を制して少しだけ採って止めた。
 そして斜面に腰を下ろし、向かいのおやじ山の山肌に明るく映えるカスミザクラや、その向こうに広がる長岡の街並みの風景に目を凝らした。今まで何度も何度も繰返し見た同じ風景だが、そのたびに新鮮で至福な今の時間を、とてつもなく贅沢に感じるのである。


 山菜山からカスミザクラ咲くおやじ山を望む

 やっぱりゼンマイに目が行き、採っちゃった
2022年4月24日(日)薄曇り
おやじ山の春2022(水穴に入る)
 水穴は俺がまだガキの頃、おやじに連れて行かれた一番の奥山である。
 当時は長岡駅からバスに乗って栖吉の終点で降りて、鋸山の登山口近くまでの長い距離を歩き、そこから獣道のような渓流沿いの荒れた山径に入る。途中大きな滝を巻き、川の中をジャブジャブと遡行したりしてようやく水穴の裾に辿り着く。昔は田んぼだったと思われる葦や背丈の高い雑草が生い茂る湿地をかき分けながらその何段か登ると、その先に広大なコゴミ畑の斜面が現れる。おやじが「水穴」と呼ぶ山菜の宝庫である。
 この斜面を登りながら春先にはコゴミやゼンマイ、そして山菜の盛期にはワラビを摘み取ってリュック一杯にし、尾根直下まで上り詰めてリュックを下ろして、間近に見える鋸山や風谷山の風景を眺めたものである。今思えば、おやじはよくも幼い俺を、こんな奥山まで連れてきたものだと感心してしまう。

 その水穴に今年初めて入った。コースは前記のルートとは逆の、最初に水穴の頂上に取り着くコースである。白々と夜が明け始めた午前4時50分に小屋を出発し、ブナ平コースに出てから一気に三ノ峠山の頂上を目指す。この途中の尾根に千本ブナと呼ぶ株立ちになったブナの大木がある。ここで小休止。そのブナの1本の幹に、もう25年か30年ほども前になろうか、マタギを真似てナイフで自分の名前を彫った木があった。既に幾星霜の歳月が経って悪さの跡は朧になったが、ここに来ると決まってその痕跡を見つけて、当時を懐かしく振り返り、その後の歳月を反芻するのである。

 東山連峰の夜明け        千本ブナ        マタギを真似た悪さの痕跡
 三ノ峠山の頂上からは萱峠に向かう緩い下りの尾根道となる。その途中から藪漕ぎして水穴の天辺に辿り着くのである。小屋を出てから俺の足でおよそ一時間の行程である。

 リュック一杯のコゴミを採り終えて斜面に腰を下ろす。目の前に広がる広大なコゴミ畑を見下ろし、顔を上げれば目覚めて間もない東山の山々が青く峰を連ねている。おやじと並んでこの斜面に腰を下ろしていた遙か昔が、締め付けられるような懐かしさで思い出されて、泣き出しそうになるのである。

 朝の気配が濃くなり、9時過ぎ小屋に戻る。

    水穴のコゴミ畑            コゴミ畑にカタクリ咲く
 
2022年4月26日(火)曇り夜雨
おやじ山の春2022(Kさん一行来山)
 今日は森林調査の仕事で俺の親分であるKさんが、二人のお友達(OさんとNさん)を連れて山に来てくれた。
 国の事業(林野庁)である森林調査の仕事には、スタート間近の2008年から就いて今年の1月まで、全国42都府県、644カ所の山林を調査した。その間の出張日数は延べ485日に渡る。その半数を遙かに超える日数を、主査であるKさんとご一緒させていただいた。いわばKさんは、仕事上の親分であり、宿の手配から出張中のこもごもまでお世話になり続けた俺の上司だった。

 朝8時過ぎに、麓の東山ファミリーランドで3人をお迎えし、山に案内する。おやじ山では地元の仲間Yさん、Nさん、Kさん、さらにN子さんらが集まってくれて、東京からの客人達を歓待してくれた。

 以下はNさん手作りの歓待料理で、俺もご相伴に預かった。全く、Nさんほど多才、博識な人物は希で(料理、お茶、お花、陶芸、道具作り、植物、生き物、自然界、さらには人間界の機微も・・・)、俺は密かに「越後のレオナルド・ダ・ヴィンチ」と呼んでいるのだが。
(健介さん撮影)

N氏手製一輪挿しと山野草の投入れ   N亭料理に花を添えて          客人とご相伴

                      
おやじ小屋のデッキ椅子にスミレ咲く
 
2022年4月27日(水)雨~曇り
おやじ山の春2022(「童人トマの風」来山)
 昨日のKさん一行に続いて、今日は東京から「童人トマの風」グループのTさんご夫婦とSさんの3名が来山された。今日も地元のKさんと、それにSさんも来て、今日帰るというKさん一行への土産持参で山に来てくれた。

 「童人トマの風」は、昨年秋に、魚沼の大湯温泉街の入口近くにある野草料理店「いろりじねん」に立ち寄った際、「ゼンマイ採りをやりたい人がいるので・・・」と紹介された都岳連加盟山岳会の沢登りのグループである。なるほど今のご時世、どこの山も「山菜採り禁止」の立て札が立ち、都会の人たちが山菜採りを楽しむ場所など無いのかも知れない。

 真夜中に東京を出て関越道を飛ばして早朝に長岡入りしたという3人を市営スキー場のロッジ前でお迎えし、取りあえず風の小屋にご案内したが、生憎の雨である。
 「こんな雨でもゼンマイ採り、ホントにやるんですかあ~?」と地元のKさんも、向かいの山菜山に降りしきる雨をしげしげと眺めながら呟いている。上越国境の沢登りをこなす連中なら雨の山菜山でも平気だろうが、何しろゼンマイ採りは採取後の処理が肝心である。ゼンマイ採り初心者にこの処理を伝授しなければ意味が無い。「さて、どうしたものか・・・?」と思案しながらも風の小屋で談笑しているうちに、雨が止んだ。

 3人を連れて山菜山に突進した。そしてゼンマイを採らせて小屋に戻った時のTさんの感想。「あの山菜山の斜面、夢心地でした」

 その後、大急ぎで後処理の実演をして見せ、午後3時に「トマの風」の皆さん、そしてKさんグループを麓の駐車場で見送った。

(以下、健介さん撮影写真を拝借しました)


 トマの風、山菜山でゼンマイ採り   ゼンマイ茹でを実演       「ね、こうして揉むんです」と説明

 風の小屋で談笑                      トマの風・Kさんグループ合同写真