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おやじ山の春2021 只今連載中
2021年5月1日(土)晴れのち強風、夜雨
テントへの移住と白い花の季節
 今年もコロナ禍が続いているが、昨年は首都圏での蔓延でおやじ山行きを自粛していた孫が、「今年は行きた~い!」と言ってきた。孫が幼い頃から、春の大型連休になると、我が家族と息子家族が揃って長岡入りして、おやじ山で遊ぶのが常になっていた。そして昨年はコロナがあり、孫も高校受験でおやじ山行きが中止となり、今年は「果たしてどうかな?」と危惧していた。単身赴任で名古屋に居る息子も、連休には帰って山に来たいという。

 それで、数日前に麓の市営キャンプ場にテントを張って息子達を迎える準備をした。息子と孫、それに娘の3人で、2日の夜新幹線で長岡入りして、5日の朝には発つという忙しい日程である。

 KさんやSさんに手伝ってもらいながらテント設営も終わり、俺も山を下りてしばしのテント暮らしである。最初は、炊事場の水道の蛇口を捻ったら水がジャーと出て(当然だけど)、「ああ~文明だあ~」と感動してしまった。山では、顔を洗う時にはおやじ池に手を突っ込んでやっていたし(面倒で毎日洗うことはなかった)、歯を磨くにしても貴重なペットボトルの飲み水を節約しながら使っていた。
 さらに街へのアクセスと買い物が便利になって、昨晩などはいつもの日本酒、ビールの他、娘や息子が来た時にと買った焼酎、ワイン、ウィスキーまで「どれどれ・・・?」と味見して(すべてチャンポンで飲んで)殆ど前後不覚、今朝起きた時のダメージったらなかった。

 今日は、午後からは天気が下り坂になるという予報で、辛い身体をおして午前中に山に行く。今頃の季節は、花木の白い花が目立つ。
ウワミズザクラ(6分咲~満開)
アオダモ(満開~散り気味)
ガマズミ(満開~散り気味))
アズキナシ(咲き始め)
タムシバ・オオカメノキ(花期終わり)
以上を、花の咲く順番に表すと、以下の通りとなる。いずれも花は白色である。
タムシバ→オオカメノキ→ガマズミ→アオダモ→ウワズミザクラ→アズキナシ

 風の小屋で棚作りをしていたら、大杉が揺れるほどの強風になった。張ったテントが心配になり、急いで下山する。案の定、キャンプ場のデッキに張ったターフが風に煽られて破れていた。
「あ~あ(泣)」である。


 
2021年5月5日(水)小雨
子ども等と過ごした日
 5月2日(日)15時20分着の新幹線で、先ず娘が長岡入りし、続いて夜7時過ぎの新幹線で息子と孫が長岡駅に降りた。久々の家族対面である。(カミさんは今年も自宅で羽を伸ばしてる?)
 鮮魚スーパー「角上」で買った孫の好物お寿司の大盛りパックを囲んで、キャンプ場に張ったキッチンテントの中で歓迎パーティである。ホスト役の俺が早々と酔っ払ってコテンと寝てしまい、その後、子ども達はスマホで調べた国道沿いの銭湯に行ったという。

 翌5月3日(月)は生憎の雨模様で寒い一日だった。
 遅い朝食の後、皆でキャンプ場から赤道を登っておやじ山に向かった。俺の体力を皆に見せつけようと、先頭に立ってかなり急ピッチで山径を登る。途中で、「どうだ!」と後ろを振り返ったら、孫がすぐ背中に居た。(「あれェ~?」。子ども達は、さすがにずっと遅れていたけど)

 子ども等に自慢の風の小屋を見せて、孫にストーブを焚かせたり、囲炉裏に炭を熾させたりする。外は冷たい雨が降ったり止んだりだったので、午後も小屋の中で横になったりして過ごした。
 早めに下山して、皆で「麻生の湯」に行く。夕食は休憩室の食堂で摂った。

 5月4日(火)、ようやく晴れた。いよいよ子ども達や孫が楽しみにしている山菜採りである。
 今日も遅い朝食の後、赤道ハイキングコースを登って山に向かう。やはり皆の先頭に立って、昨日より更に急ピッチで山径を登る。「どうだ!」(声には出さないけど)と途中で振り返ると、やっぱり孫が背中に居た。
 皆に山菜エプロンを着けさせて、小屋向かいの山菜山に入った。「ほれ、ここに」「あっちにも」と最初は孫に教えていたが、あちこちに立派なウドがいっぱい生えていて、家へのお土産分も含めて十分な量が収穫できた。

 午後は皆でナメコの駒菌400個をコナラの木に打った。既に地元の仲間達が、早春期に伐倒したコナラに1000個ほど打っていたが、まだ打ててない部分や空のホダ木が残っていたからである。
 そしてお土産のウドを発砲スチロールの箱に詰めて、キャンプ場に帰る。
 夕食は、山菜天ぷらのオンパレードだった。ウド、コシアブラ、シイタケ、行者ニンニクと、全て今日摘んだおやじ山産の食材である。そして今夜は、早くも子ども達との最後の晩餐だった。

 5月5日(水)、午前の新幹線で皆が帰る日である。ご飯を炊いて朝食の準備をして皆が起きてくるのを待つ。娘と息子は起きてきたものの、孫がなかなかテントから出て来ない。息子に呼びに行かせてもラチがあかない。仕方なく俺が呼びに行って、ようやくキッチンテントに入って来た。そして椅子に座った途端に、またスマホをいじり始めた。思わず「コラッ!山に来たらおじいちゃんの言うこと聞きなさい!」「イテッ」 孫は飛び上がるようにして頭を押さえた。俺が孫の頭を撲ったのである。孫と会ってこの3日間、何度かスマホの扱いを孫に注意していたからである。
咄嗟に「シマッタ!」と思ったが、後の祭りである。

 朝食後、皆に支度を急がせ、長岡駅に行った。10時に駅に着いて10:42分発の指定券をとる。その間、長岡駅の土産物商店街で子どもや孫は用意してきたメモを見ながらお土産を買っていた。

 例年とは様変わりで、コロナ禍の大型連休終盤のホームはひっそりとしていた。手に一杯の土産を持った孫の身体を抱きしめる。「承太郎、またおじいちゃんの山に来るんだよ」「うん」。「楽しかったか?」「うん、楽しかった」。「身体を鍛えて、そしていい友達を作るんだよ」「うん、おじいちゃん、ありがとう」

 指定券を取るまでもなく、ガラガラの車両がホームに入って来た。手を振って子ども達と別れる。
 午後2時過ぎ、息子からLINEメールが入る。「無事着いたよ。お父さん、ありがとう。お酒飲み過ぎないでね」
2021年5月6日(木)晴れ
猿倉岳トレッキング下見
 絶好の晴れとなった。子ども達が使ったテントから布団を取り出して、キャンプ場に張ったロープに天日干しする。更にキャンプで使った炊事道具や子ども達の食器などをコンテナに詰めてSさん宅に預ける。(こんなガラクタをいつも預かって頂き、本当に申し訳ない)

 午後1時、猿倉緑の森の会の中村代表と太田小中学校のY校長と面会、来る9日に実施予定の「猿倉岳春のトレッキング」の打ち合わせをする。学校の児童生徒(+父兄)で40名、一般市民の参加が40名、合計80名のイベントになるとのこと。
 学校を辞して、中村さんと猿倉岳山頂まで登って下見をする。山頂から萱峠展望台まで足を延ばしたが、残雪輝く守門岳や越後三山が実に美しく、眼下に広がる種苧原の田園風景とマッチして絵に描いたような風景である。

 夕方、長岡在住のM画伯に電話して、今月末にご自宅にお伺いする約束をする。


2021年5月8日(土)曇り
山に帰る
 早朝からテント内の荷物の片付け。おやじ小屋からキャンプ場に下ろしたクーラーや自前の食器類、酒、炭、小型コンロなどを車に積んで見晴らし広場まで荷揚げし、ここからは猫車の往復で小屋に運び入れる。

 9時、Kさんが手伝いに来て、キッチンテントのテーブルや椅子などをSさん家まで運んでくれる。(これもSさん預かりである。感謝、感謝!である)ここまでで身体がヘバって、予定のテントを全て潰して洗浄し、乾かすまでは、スタミナ切れでとてもできなかった。

 しかし、ようやく今日からまた、風の小屋泊まりである。スーパーで夕食用の弁当を買って、囲炉裏に炭を熾して食べる。「やっぱり、いいなあ~!」 小屋の窓から、杉林の間から透けて見える真っ赤な夕日を飽かず眺める。「風の小屋、やっぱり、いいなあ~!」
2021年5月9日(日)曇り時々小雨
猿倉岳春のトレッキングイベント
 昨年はコロナで中止になった猿倉岳春のトレッキングイベントが、今年は対策をとっての開催となった。一般市民の参加者は40名に絞り、(その他太田小中学校の児童生徒は約40人)集落センターでの山菜料理の昼食会は止めて、山頂広場で参加者に弁当を配ることにした。
 登山者のリーダー(案内役)を毎年務めてきたが、今回は神奈川からのインストラクター仲間を助っ人に呼ぶのは止めて、おやじ山倶楽部のKさんに俺のサポート役をお願いした。

 8時開会。少し肌寒いちょっと不穏な天候だったが、大勢の市民が参加してくれた。開会式の挨拶でKさんを紹介して、いざ出発である。

 山頂では、天空のブナ林を紹介し、希望者には萱峠展望台まで案内した。そして濃い霧に遮られて眺望のきかない守門岳や越後三山、種苧原の風景などを、6日の下見で撮影したスマホ写真見せながら説明した。

 山頂での昼食は、蓬平のお母さん達が腕に縒りを掛けての山菜天ぷらや豚汁、特上のコシヒカリのおにぎりなどが配られた。

 14時半、無事イベントも終了し、頂いた入浴券で和泉屋さんの温泉に浸かる。お風呂の中で、毎回このイベントに参加している常連さんと会って、親しく会話する。「おやじ山にも是非」と、お誘いした。

(写真は健介さん撮影)
2021年5月11日(火)曇り
おやじ山のフジの花満開
 昨日はキャンプ場に残していた最後のテントを潰し、今日は洗浄場所の下見だけをした。途中、花一杯つけていたウワミズザクラの木に出会って、思わず車を停める。

 日中はそのまま街に出て買い物など。夕食は、おやじ小屋の前のデッキテーブルで満開のフジの花を愛でながら摂った。普段は目立たないクルミの木に絡まったヤマフジだが、今や豪華にその存在感を示している。

 今回の山入から予定していたあれこれも一段落した感じで、少しホッとした気分である。
2021年5月14日(金)
水穴と黄土(今期最後の山菜採り)そして、フクロウ
 山菜採りの指標にしているタニウツギもフジの花も満開となってしまい、既にワラビ採りの時期は過ぎてしまった。(咲き始めがワラビの盛期) 「それでも・・・」と、今期はまだ一度もワラビ採りに行っていないので、水穴に向かった。
 6時前に水穴に入り、猛々しく茂ったコゴミ畑の中を、かき分けかき分けワラビを探ったが、やはり予想通りの貧果だった。しかし、早春からこの時期まで、今年もこの場所で随分楽しませて貰った。今期最後の水穴の風景を惜しみ惜しみ眺めながら、「水穴よ~!今年もありがとね~!!」と心で叫んで別れを告げた。

 こんな収穫量では塩漬けもままならないので、ここ2年ほどご無沙汰している「黄土」に向かった。この山菜場こそが俺の原点で、ガキの頃に、おやじやお袋と一緒に山菜採りをした思い出深い場所なのである。

 登山道から急斜面をトラバースして徐々に下ると、広い草地の斜面に出る。この場所と、谷川越えのコゴミ畑の斜面が、「黄土」と呼んでいる場所である。幸いなことに、今年は誰もここに入った形跡がない。(山菜採りのライバルだったが、人懐っこいAさん、今はどうしてるだろうか?)
 眼下には広い越後平野と市街地のビル群が望まれ、その地平線を西山丘陵が青墨で掃いたように薄く隈取っていた。

 谷川を越えたコゴミ畑ではかなりの収穫があった。これで山菜リュックの8割ほどになった。塩漬けするには十分な量である。コゴミ畑を登り切った高台で休む。おやじと二人でここに座り、こうして長岡の町並みを眺めていた遙か遠い昔を、限りなく懐かしく、そして切なく思い出していた。
 胸で大きく息を吸って叫ぶ。「黄土よ!帰ってくれて、ありがとう~!!」

 重い山菜リュックを背負って小屋に帰る登山道で、これから三の峠山に向かうK子さんに会った。俺の小屋に初めて訪ねて以来、山好きになったようだ。そして帰りには、おやじ山に寄ると言ってくれた。

 今日はおやじ山に、N子さん、Kさん、Yさんと仲間達が偶然集まって、登山帰りのK子さんを皆に紹介する。

 そして、嬉しいことに、巣箱近くで親フクロウが頻りに飛んで、子フクロウの巣立ちを促してした。N子さんが「あ!フクロウ!」と目ざとく見つけたのだが、我がもの顔でおやじ山を歩くアナグマの動画も撮って、これは困ったことである。「俺の山に勝手に入って来るな~!」


(フクロウ写真は紀子さん撮影)
2021年5月15日(土)晴れ、夏日となる
ファーブル少女の来山
 今日は朝早くからバタバタと身の回りのあれこれで時間を費やし、昼頃には「あ~あ、これで終わった」と、ホッとしながら小屋前のデッキで昼飯を食った。ラジオの天気予報は、街の気温が30度まで上がっているという。

 正午少し過ぎた頃、親子が山に入ってきた。学芸員のS子さんと娘のRちゃんである。Rちゃんは10年程前にお母さんにおんぶされて、ここに来たことがあった。その時もS子さんはおやじ山のトケンランを見に来たのだが、赤ちゃんにおっぱいを含ませていたことなどが記憶にある。その時の赤ん坊が、既に小学5年のファーブル少女になっていた。

 山に来て、早速親子は、おやじ池で今日初産卵したばかりのモリアオガエルの卵塊を写真に撮ったり、アズマヒキガエルの卵嚢を興味深げに観察したり、巣箱から顔を出したムササビの子どもを写真におさめたりと、見ていて心からの生き物好きが手に取るように分かった。

 更に、今日も親フクロウが巣箱の近くで雛の巣立ちを促していたが、親子の絶好の被写体だった。
 
 午後3時、S子さん、Rちゃん親子が手を振って山を下りて行った。
2021年5月16日(日)雨(西日本梅雨入り発表)
今時の花々
 春の早い時期に咲く薄紫のユキグニミツバツツジの花が終わり、オレンジ色のヤマツツジと濃いピンクのタニウツギが、新緑の森の中で豪華に満開時期を迎えている。山の緑も、柔らかい色合いから次第にその濃さを増して、少し猛々しい感じにさえなった。季節は春から初夏の雰囲気に移りつつある。

 花木はと見上げれば、今やホオの花が満開である。とりわけ今日のような雨の日には、いい香りが漂ってくる。ヤマボウシも苞が徐々に色づいて、雨の中で白い星屑を散らし始めた。


 ヤマツツジを風の小屋に生ける          ヤマボウシ            ホオの花
2021年5月18日(火)雨
子フクロウの巣立ち
 朝7時、子フクロウが巣箱の穴に止まっていた。学芸員のS子さんとおやじ山倶楽部の仲間に写メールで連絡する。

 今日は街で約束した用事があって朝食後にすぐ下山すると、連絡したS子さんと同僚のT学芸員が既に麓に駆けつけていた。これから早速おやじ山に向かうという。

 昼前に山に戻ると、S子さん、Tさんの他に、Kさん、Yさん、そして午後にN子さんも来たが、俺以外に誰も子フクロウを見た者はいなかった。7時過ぎには巣立ちを終えて、親フクロウの元へ飛び立ったと思われる。
(*この日以来、巣箱近くに親フクロウが現れることもなく、子フクロウが巣箱に止まる姿も見られなくなった。つまり親フクロウを最初に現認した14日から今日までの5日間で、全ての雛が巣立ったのだと思われる)しかし俺にとっては、1羽でも子フクロウに会えたことが嬉しかった。

 今日は、モリアオガエルが頻りに鳴いた。次の産卵が待ち遠しい。
2021年5月23日(日)雨
雨のおやじ山
 朝起きると、窓越しの景色が随分暗い。外は雨である。天気予報は終日雨模様で、こんな日は小屋の中でゆっくり出来ると、かえってホッとする気分である。

 日曜の朝は、NHKラジオの「音楽の泉」を聴く。今朝はベートーベンの交響曲で、熱いコーヒーをすすり、雨に煙る暗い森の風景を窓越しに眺めながら、耳を傾けて聴くシンフォニーの調べは、例えようも無く贅沢な感じがする。

 昨日も雨で、一日中風の小屋で過ごしたが、時間を見つけては少しずつ読み継いできた天野祐吉著「成長から成熟へ(さようなら経済大国)」を読了した。
 そして今日は、一度藤沢の自宅で通読して、2回目は、おやじ山に来てから、所々に棒線を引きながら読んだ斉藤幸平著「人新生(ヒトしんせい)の資本論」を読了した。著書の最終章で「(国民の)3.5%が行動すれば、世の中を変えられる」には、歳甲斐もなく血が騒いでしまった。終日ストーブに火を入れていたので、頭と身体がカッカと火照って、興奮したのかも知れない。
2021年5月24日(月)
野の花館へ(トケンラン咲く)
 朝起きて池を覗くと、モリアオガエルの新しい卵塊が1個増えていた。(5月15日の初産卵から合計3個になった)

 そして今日は、絶滅危惧Ⅰ類Bにランクされているトケンランが一斉に開花した。保護に乗り出してから年々株数が増えて、今や300株は超えていると思われる。毎年外山康雄画伯の「野の花館」に蘭鉢に掘り採った2,3株を届けているが、先日電話で約束して、今日持参することにした。

 おやじ山倶楽部のKさんに同行をお願いして、関越道で野の花館に向かう。
 ニコニコと画伯が出迎えてくれて、館内や山野草の庭園などを案内していただき、しばしの楽しい時間を過ごした。

2021年5月25日(火)雨~曇り時々晴れ
トケンラン満開
 トケンランが満開となった。我が山のトケンランながら、今までで最高な見事な群落になった。大事に、大事に守っていく積もりである。

 Tさん、Oさん、Kさんが来てトケンランの観察と撮影に没頭していた。
2021年5月26日(水)曇り時々晴れ
太田小中学校の子ども達の猿倉岳登山
 今日は、蓬平の太田小中学校の全校生徒(40名)参加の猿倉岳登山の日である。そして猿倉岳頂上の天空のブナ林で、俺が講師役で生徒達を案内し、猿倉緑の森の会の人たちが、手鋸を使った間伐体験の指導をする段取りである。

 10時に森の会のNさんらが待つ猿倉岳の頂上広場に着き、皆さんに挨拶して今日のスケジュールなどを確認する。その間に早くも中学校の健脚児童らが次々に到着する。中学生が全員到着して(30名)、まずはこの生徒らを連れてブナ林の中に入る。「ほら、これがブナの赤ちゃん。大きく育ったとして、何歳まで生きると思う?」「え~!300年も!」賑やかな子ども達の歓声が上がる。
 中学生を間伐体験の森でNさん達に引き継ぎ、今度は広場に戻って小学生(10人)の指導である。時間が押してきて、この森のマザーツリー(樹齢300年近い巨木ブナ)の所までは小学生達を案内出来なかったが、山頂で集合写真を撮ったりして、遠く霞んだ弥彦の山を教えたりした。

 子ども達が下山する時間が近づいてきた。全員でブナの森に囲まれた「森のコンサート会場」広場に整列する。小学生が前列、中学生は後列に並んで、俺は一番右端に立った。
「イチ・ニー・サン!」と号令を掛けて、全員で先ず太田小学校校歌を歌った。

長岡市立太田小学校 校歌

一 若草映ゆる 猿倉や 金倉はるか 仰ぎつつ
  学びの道を はつらつと 希望に燃えて 進みゆく
  おお 夢あり 太田小学校

続いて太田中学校校歌の斉唱である。

長岡市立太田中学校 校歌

一 あした夕に たぐいなき 理想を胸に 抱きつつ
  かざす我らの 校章こそ 明き心の 玉かがみ
  曇りなき世の ともしびと 友よ磨かん いざやいざ

 俺はもう、子ども等の歌声と合わせて口をパクパクするだけだったが、涙がポロポロと出て仕方がなかった。


 無事に終わって、Nさん宅にお呼ばれして、根曲がり竹の筍ご飯と筍汁をご馳走になった。本当においしかった。
 そして帰途、途中で車を返して山古志方向に向かう。4月にお世話になったあまやち会館で風呂に入るためである。支配人のFさんがニコニコ迎えてくれて、大きな湯船でゆっくりと一人風呂を楽しんだ。

2021年5月31日(月)晴れ(真夏日となる)
ギフチョウ幼虫の引っ越し
 昨日、山を下りて街へ出る途中、キャンプ場のトイレを使った。そしてこの直ぐ近くの場所にコシノカンアオイ群生地があり、ギフチョウが毎年ここで卵を産み付けるのを知っていた。コシノカンアオイはギフチョウの幼虫の食草で、ギフチョウ同様、希少種として全国的に知られている。
 トイレを出て、「どれどれ今年もギフチョウは卵を産んでくれたかな」とその場所に行って見ると、何と!一帯の草地が刈払機で刈り取られていた。もちろんカンアオイの群落も無残になぎ倒されている。刈られた葉っぱを1枚1枚拾って裏返して確認すると、卵から孵化したばかりの1齢から3齢程度の幼虫が、まだ何枚かの葉っぱに付いていた(合計20匹ほどか)。

 それで今朝早く、昨日の幼虫救出に再び現地に行った。幼虫の付いてる葉っぱを丁寧に拾って、おやじ山に持ち帰る。そしておやじ山のコシノカンアオイ群生地3カ所に放してやった。さて、無事にギフチョウの子ども達は生き延びるだろうか?

 今日は、猿倉緑の会のNさん、太田小中学校の校長先生と3人で絵本作家のM画伯のご自宅を訪ねた。出版された絵本の原画や、自作のネイチャークラフトなどを見せていただき、楽しい時間を過ごさせていただいた。最後に、「猿倉岳天空のブナ林に是非お越し下さい」とお誘いしてご自宅を辞した。