5月の中旬ともなると、緑が濃くなった山肌の木々に美しい紫色の花が咲く。まるで樹冠に花のレイ が掛けられたようでもある。太い大木に絡まった藤の花が春の風にさわさわと揺れ輝いて、この時と ばかりに春を謳歌しているように思える。 フジが最も愛好されたのは平安時代で「源氏物語」にも藤花の宴が開かれたことが書かれている。ま たフジの花が垂れ下がって咲くことから、稲穂を連想させ豊作のまえぶれとして神聖な木とされた。 このため農作業の始まる前に庭先に飾る風習がある。